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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

尾崎豊 近頃の現象[六百九十七] 

私は尾崎豊が嫌いだった。
 
【雑感】もう20年経つのか。あっという間だ。尾崎豊氏の映像は若い20代のまま、私は40を超えて久しい。このまま健康で居られたら、ほどなく50を過ぎ、還暦を迎えるだろう。
 毛色の違う反骨キャラの矢沢永吉氏は老境になると若々しさと渋さを兼ね備えて「矢沢永吉」ブランドはますます輝きを放つが、尾崎豊氏はずっと不安定な思春期の若者のまま歳をとらない。

 名門私立大学に通う20歳を過ぎた息子がいることに不自然な矛盾のような感じを抱く。なにしろ尾崎豊氏は今も思春期の不安定な青年のまま、そんな彼のイメージと大学生の息子がいるのは合点がいかない。本来なら、大きくなった息子を見て、「ああ、彼が居なくなってから随分時間が経ったんだな」と感慨に耽るものなのだが、尾崎豊の場合はそんな気持ちが起きない。まだ、どこかで居ない事に実感が持てないかもしれない。
 
 尾崎豊氏は学年でいえば「同学年」、全くの同世代だ。私が藝大への進学を考え始めた頃、彼は颯爽とシンガーとしてデビューしたような感じに見えた。第一印象は「羨望」だったが、彼の歌を聴くうちに「軽蔑」へと激変していった。尾崎氏への評価が高まるにつれ、思春期の若者たちの「教祖」のように祭り上げられる過程を見て、「軽蔑」からさらに「冷笑」に変わっていった。尾崎ファンには申し訳ないが、私は大嫌いになったのである。
 
 嫉妬や嫉みのようで、もっと異質な感情だった。解りやすく例え話をしよう。
 
 「俺は愛する人のために命を賭ける」という台詞があるとする。
 同じ台詞をジョン・レノン氏が言ったとする。ああ、さすがはジョン・レノン、言う事が違う、と思うだろう。
 同じ台詞を矢沢永吉氏が言ったとする。さすがはプロのミュージシャン、決めポーズ、グッドだね、と思う。
 
 同じ台詞を尾崎豊氏が言ったとする。おまん、そんなこと言うて大丈夫か? 後で首まわらんようになって困らへんか? 言葉はように考えて使えや、と言いたくなる。
  
 彼の歌詞すべてを、そんな思いで聞いていたから、不愉快だった。だから、彼の最期はあまり驚かなかった。むしろ彼らしい最期だと思った。他人様の家の庭に勝手に入り込んで、半裸の状態で泥酔して死ぬ、人の迷惑も考えず愚か者が、という気持ちだった。

 ジョン・レノンは日系人差別に抵抗する集会に参加する直前というタイミングで暗殺された。
 矢沢永吉は、たぶんこのまま格好良い老人のまま天寿を全うし、多くの身内やファンに囲まれながら見送られるだろう。
 ジョージ・ハリスンは肺癌、ポール・マッカートニーは騎士に叙勲され子宝にも恵まれ寂しい老後はありえない。フレディー・マーキュリーはエイズで倒れる。
 ミュージシャンというのは、まことにキャラ通りの人生を歩む。

 そんなに嫌いなら「尾崎豊」を聞かなければエエやないか、とよく突っ込まれるが、当時の尾崎人気は凄まじく、彼の歌を聴く友人知人は結構いたし、テレビCMやミュージック番組で頻繁に取り上げられていたので、嫌でも耳に入った。
 
 「盗んだバイクを走らせて・・」他人のバイク盗むな!ボケ!張り倒すぞ! 自由、自由ってホンマに自由の意味、解って言ってんか? いっぺんビアフラやニカラグアやアパルトヘイトの南アを独りで旅してこい!
 と、万事こんな調子だった。
 
 中国の学生運動を武力鎮圧した88年の天安門事件の特集番組にBGMとして尾崎豊氏の歌が使われた時なんか、「尾崎の歌使うな!ボケ! 国のため人民のために命かける中国学生に対して無礼だ! 彼らと反抗期児童を同列にすな!」とボヤきまくったものだ。
 
 尾崎豊氏が酒豪でウヰスキーをすきっ腹で一晩1本あけてしまう噂を耳にしたときなどは、私は子供の頃、もとい、若い頃から酒や酒文化が好きだったので、そのような蒸留酒を痛飲する飲み方は酒を冒涜するもの以外何者でもなかった。
 仮に私が尾崎氏の「同級生」だったら、喧嘩になっていただろう。「尾崎のクソガキに酒飲ますな!」と。
 
 ご子息は「尾崎豊のファン」で、思春期の頃は尾崎の歌を聞いて育ったらしい。もし、尾崎豊氏が健在だったら、おそらくご子息はジュリアン・レノン氏のように父親を軽蔑したかもしれない。反抗期の時は、父親の外の顔と内の顔との落差で憤懣を抱く事が多いからだ。

 
 いろいろ尾崎豊氏の悪口を書いてしまったが、今は当時ほど悪感情は無い。あるていど人生の制限時間が見え、自分の世渡り下手や能力の無さを省みると、尾崎は尾崎で大変だったのかなぁ、生き急いでいたのかなぁ、世渡りがめっちゃ下手やったんかなぁ、狡猾に上手く立ち回って長生きしている政治家諸君に比べたら、良い奴だったんかなぁ。そんな風に思えるようになった。  
  

 
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[ 2011/04/25 15:22 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(2)
尾崎豊…大嫌いだね。

あんたの言いたいこたぁ何となくわかるぜ。
尾崎ってのはあの時代の人間とは悪い意味でズレてた。

不良ならもっと不良らしいものの言い方はあったし。
だいたいあの時代に自由とか支配とか…ださい!違和感!
背筋がぞぞぞ~っと寒くなったもんだぜ。
言葉の距離感や空気感を無視してくるとこが、何といっても恥ずかしい。

皮肉なもんで今振り返ってみてもあの頃ほど能天気な時代はなかったのにな…

ほとんどのCD・テープを持ってたおれが言うのもなんだがな(笑)
[ 2011/05/07 06:21 ] [ 編集 ]
おお、ハリーよ。よく来た。
 
> ほとんどのCD・テープを持ってたおれが言うのもなんだがな(笑)
 
 お前が尾崎を聞いていたとは、衝撃のカミングアウトだな。サンフランシスコ市民らしく鳥羽一郎を聞いてるんやと思ったちゃ。

> 皮肉なもんで今振り返ってみてもあの頃ほど能天気な時代はなかったのにな…
 
 その点では同じ世代の人間として尾崎の気持ちはよう判る。あの頃の俺はサラリーマンになるのが嫌やった。終身雇用制なんて、一生会社に扱き使われることやないか。自分の一生はレールのように決まっているのも面白くなかった。今は終身雇用制なんか万々歳、30年40年先の人生設計ができるなんて幸せやないか。
 尾崎の反抗も所詮はこのレベルだ。
 
 40過ぎのくたびれた尾崎を見てみたいなぁ。
[ 2011/05/07 08:23 ] [ 編集 ]
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