「レッド・バロン」 「赤い彗星」のモデル 
レッド・バロン [DVD]
【原題】VON RICHTHOFEN AND BROWN/THE RED BARON
【公開年】1971年
【制作国】亜米利加
【時間】99分
【監督】ロジャー・コーマン 【音楽】ヒューゴ・フリードホーファー
【脚本】ジョイス・H・コリントン ジョン・ウィリアム・コリントン
【出演】ジョン・フィリップ・ロー(バロン・
マンフレッド・フォン・リヒトホーフェン) バリー・プリマス(ヘルマン・ゲーリング) ドン・ストラウド(ロイ・ブラウン) カレン・ヒューストン(イルゼ) コリン・レッドグレーヴ(ホーカー少佐) トム・アダムス(オーウェン) ハード・ハットフィールド(アンソニー・フォッカー)
【成分】スペクタクル 勇敢 知的 切ない かっこいい ドイツ空軍 第一次大戦 1910年代
【特徴】監督はB級映画の帝王
ロジャー・コーマン。低予算の特撮SFやホラーばかりを撮っている監督と思われがちだが、本作のような「正統派戦争映画」を撮る事もある。
第一次世界大戦時、ドイツ空軍で活躍した高潔な空の騎士
レッド・バロンの栄光の日々から最期の戦いまでを描く。ラストの田園地帯上空でのドッグファイトは圧巻、もちろん当時はCGは無い。
常に
レッド・バロンと対立し、野卑で卑怯な戦いをするヘルマン・ゲーリングが、
レッド・バロン亡き後のドイツ空軍を担う場面がラストで描写され、後のナチス台頭を暗示させる。
【効能】理想と現実の狭間で苦悩していた頃の自分を思い出させる。あくまで自分の戦いを貫いてきた
レッド・バロンの高潔な姿に畏敬を抱き、上司や部下と対立する世渡下手に親近感を抱く。
【副作用】主役が少し老けているのでレッド・バロンらしくない。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
アメリカ人ロジャー・コーマンが描く
レッド・バロン像 どちらかというと、第二次大戦モノの方が大量に製作されていて、第一次大戦モノはその影に隠れてしまっている印象を受ける。やはり19世紀的な時代劇雰囲気を色濃く残しているので、第二次大戦のほうが現代史に直結していて馴染みがあり、軍服やメカなども現代戦の基本形なのか格好良く感じるのだろうか? ゼロ戦やスピットファイヤーのファンは大勢いるが、
ソッピースキャメルのファンは周囲には居ない。(余談1)
しかし意外なところで、現代の日本アニメに影響を与えている。第一次大戦時のドイツ軍エースパイロット、
レッド・バロンだ。直訳すると「赤い男爵」となる。本名の
マンフレッド・フォン・リヒトホーフェンが示すように貴族を示す「フォン」が付いている。(余談2)彼が搭乗する戦闘機には全面赤い塗装がほどこされているので、付いた呼び名が「
レッド・バロン」だ。ここまで話すと、「ガンダム」に登場する赤い彗星シャアのモデルであるのが判るだろう。(余談3)
レッド・バロンを演じた
ジョン・フィリップ・ロー氏も面長で白面の上品な顔立ちをしており、真面目で騎士道精神溢れる空の貴公子になりきっていた。これが若き日の野卑なゲーリング(余談4)と対照的で、作品として良い構図となった。
既に負け戦を自覚して保身に走る軍上層部との対立、育ちの良さと若さから闘い方に理想を追求しようとする
レッド・バロン。
基本的な戦術は未だナポレオン時代と変わらないスローな展開、これは空中戦でも同じで、それも巧く表現されていた。アメリカ映画だがアメリカ臭さは感じられず、アメリカにおける
レッド・バロンの思い入れが伝わる作品だ。
ただ、出演時のフィリップ・ロー氏は33歳頃。実際のレッド・バロンは24歳である。地上にいると若々しくても、戦闘機に乗って飛行帽をかぶると側面の肉が前に移動して些か不細工な顔に見えた。
ドイツでは年齢の近い俳優がレッド・バロンを演じる映画が最近公開されているようだ。日本でも上映してほしいものである。(余談5)
(余談1)
ソッピースキャメルはイギリス軍の戦闘機。この時代の戦闘機は複葉機。レッド・バロンの愛機フォッカーは三葉機。
初めて知ったのは、子供のころよく読んだ英語日本語併記の漫画「スヌーピー」。「
スヌーピーの撃墜王」で主人公スヌーピーが自分の犬小屋の屋根の上をコクピットに見立てて第一次大戦の撃墜王になり切る。レッド・バロンの名を知ったのもこの漫画から。
(余談2)「平民」も将校を長年務めれば「フォン」を付けることがあるそうだ。93年の「スターリングラード」でドイツ軍の青年将校を演じたクレッチマン氏の役名も「フォン」が付いていたが、代々将校を務めた家系で爵位は無いかもしれない。因みにレッド・バロンは渾名の通り男爵の爵位をもっている。
(余談3)アニメのシャア大佐は弱冠二十歳の若造なので、「大佐」がどれだけ偉い地位か知っている人は「ありえねー」と思うだろう。ところがモデルとなったレッド・バロンは二十歳代前半で大尉の大隊長だった。シャアも初登場は少佐、ガンダムの製作者はかなり意識していたか。
実際のレッド・バロンの顔は、「Uボート最後の決断」の艦長役・「キングアーサー」のサクソン人王子役のティル・シュヴァイガー氏に感じが似ている。
(余談4)後のナチスドイツの国家元帥でドイツ空軍最高司令官。地味なファッションを貫いた菜食主義のヒトラーと違い、でっぷりと太った身体を華美な空軍元帥用の軍服で包み美食と道楽に励んだイメージがある。映画でも野卑なキャラで描かれることが多い。
第一次大戦時は戦闘機パイロット。作中でもレッド・バロンと対立する。
(余談5)よく映画化されたものだ。マンフレッドの3歳歳下の従弟はヒトラー政権下で空軍参謀としてスペイン内戦に参加、ピカソの絵で有名なゲルニカの空襲を指導した。第二次大戦時ではなんと40代で元帥に昇格しているところから、ナチ政権への貢献ぶりがうかがわれる。つまり、輝かしい空の英雄を輩出したリヒトホーフェン家にはマイナスイメージもあるのだ。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作 晴雨堂関連作品案内晴雨堂関連書籍案内撃墜王 リヒトホーフェン
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アメリカ人ロジャー・コーマンが描く
レッド・バロン像 どちらかというと、第二次大戦モノの方が大量に製作されていて、第一次大戦モノはその影に隠れてしまっている印象を受ける。やはり19世紀的な時代劇雰囲気を色濃く残しているので、第二次大戦のほうが現代史に直結していて馴染みがあり、軍服やメカなども現代戦の基本形なのか格好良く感じるのだろうか? ゼロ戦やスピットファイヤーのファンは大勢いるが、
ソッピースキャメルのファンは周囲には居ない。(余談1)
しかし意外なところで、現代の日本アニメに影響を与えている。第一次大戦時のドイツ軍エースパイロット、
レッド・バロンだ。直訳すると「赤い男爵」となる。本名の
マンフレッド・フォン・リヒトホーフェンが示すように貴族を示す「フォン」が付いている。(余談2)彼が搭乗する戦闘機には全面赤い塗装がほどこされているので、付いた呼び名が「
レッド・バロン」だ。ここまで話すと、「ガンダム」に登場する赤い彗星シャアのモデルであるのが判るだろう。(余談3)
レッド・バロンを演じた
ジョン・フィリップ・ロー氏も面長で白面の上品な顔立ちをしており、真面目で騎士道精神溢れる空の貴公子になりきっていた。これが若き日の野卑なゲーリング(余談4)と対照的で、作品として良い構図となった。
既に負け戦を自覚して保身に走る軍上層部との対立、育ちの良さと若さから闘い方に理想を追求しようとする
レッド・バロン。
基本的な戦術は未だナポレオン時代と変わらないスローな展開、これは空中戦でも同じで、それも巧く表現されていた。アメリカ映画だがアメリカ臭さは感じられず、アメリカにおける
レッド・バロンの思い入れが伝わる作品だ。
ただ、出演時のフィリップ・ロー氏は33歳頃。実際のレッド・バロンは24歳である。地上にいると若々しくても、戦闘機に乗って飛行帽をかぶると側面の肉が前に移動して些か不細工な顔に見えた。
ドイツでは年齢の近い俳優がレッド・バロンを演じる映画が最近公開されているようだ。日本でも上映してほしいものである。(余談5)
(余談1)
ソッピースキャメルはイギリス軍の戦闘機。この時代の戦闘機は複葉機。レッド・バロンの愛機フォッカーは三葉機。
初めて知ったのは、子供のころよく読んだ英語日本語併記の漫画「スヌーピー」。「
スヌーピーの撃墜王」で主人公スヌーピーが自分の犬小屋の屋根の上をコクピットに見立てて第一次大戦の撃墜王になり切る。レッド・バロンの名を知ったのもこの漫画から。
(余談2)「平民」も将校を長年務めれば「フォン」を付けることがあるそうだ。93年の「スターリングラード」でドイツ軍の青年将校を演じたクレッチマン氏の役名も「フォン」が付いていたが、代々将校を務めた家系で爵位は無いかもしれない。因みにレッド・バロンは渾名の通り男爵の爵位をもっている。
(余談3)アニメのシャア大佐は弱冠二十歳の若造なので、「大佐」がどれだけ偉い地位か知っている人は「ありえねー」と思うだろう。ところがモデルとなったレッド・バロンは二十歳代前半で大尉の大隊長だった。シャアも初登場は少佐、ガンダムの製作者はかなり意識していたか。
実際のレッド・バロンの顔は、「Uボート最後の決断」の艦長役・「キングアーサー」のサクソン人王子役のティル・シュヴァイガー氏に感じが似ている。
(余談4)後のナチスドイツの国家元帥でドイツ空軍最高司令官。地味なファッションを貫いた菜食主義のヒトラーと違い、でっぷりと太った身体を華美な空軍元帥用の軍服で包み美食と道楽に励んだイメージがある。映画でも野卑なキャラで描かれることが多い。
第一次大戦時は戦闘機パイロット。作中でもレッド・バロンと対立する。
(余談5)よく映画化されたものだ。マンフレッドの3歳歳下の従弟はヒトラー政権下で空軍参謀としてスペイン内戦に参加、ピカソの絵で有名なゲルニカの空襲を指導した。第二次大戦時ではなんと40代で元帥に昇格しているところから、ナチ政権への貢献ぶりがうかがわれる。つまり、輝かしい空の英雄を輩出したリヒトホーフェン家にはマイナスイメージもあるのだ。
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