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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「マイケル・コリンズ」 自分に喝を入れたい時に〔7〕

マイケル・コリンズ」 IRA創始者の短い一生。



【原題】MICHAEL COLLINS
【公開年】1996年  【制作国】英吉利 愛蘭 亜米利加  【時間】133分  
【監督】ニール・ジョーダン
【音楽】エリオット・ゴールデンサール
【脚本】ニール・ジョーダン
【言語】イングランド語
【出演】リーアム・ニーソンマイケル・コリンズ)  エイダン・クイン(ハリー・ボランド)  アラン・リックマン(エイモン・デ・ヴァレラ)  ジュリア・ロバーツ(キティ・キールナン)  スティーヴン・レイ(ネッド・ブロイ)  チャールズ・ダンス(ソームズ)  イアン・ハート(ジョー・オレイリー)  ショーン・マッギンレイ(スミス)  ジョン・ケニー(パトリック・ピアース)  ジョナサン・リス=マイヤーズ(暗殺者)  ジョン・オリアリー(-)  ブレンダン・グリーソン(リアム・トビン)  ジェラルド・マクソーリー(カハル・ブルハ)

【成分】泣ける 悲しい スペクタクル パニック 勇敢 絶望的 切ない かっこいい テロ 独立戦争 革命 1910年代~20年代 アイルランド   

【特徴】20世紀初頭、若くしてアイルランド独立運動の指導者となったマイケル・コリンズの短い一生を描いた大作。前半は独立運動時を描写、集金能力に異能を発揮し、積極的かつ大胆な戦術で大英帝国を苦しめる果敢な突撃隊長であり、後半はアイルランド自治政府の事実上トップとなって、内乱の収拾に苦慮するゼネラリストを表現。
 事実のマイケル・コリンズは20代半ばから30そこそこの青年なので、主演のリーアム・ニーソン氏は少し老けていて貫禄がありすぎた。

【効能】身体をはって家族や仕事を守っているのに、無理解者から心無い批難を受けている働き盛りの企業戦士たちにとって精神的援護になる。

【副作用】ラストで志半ばに主人公が暗殺されるため、喪失感と無力感に襲われる。政治を志している、または政治家にとっては身につまされる。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
リーアム・ニーソン、老けすぎ貫禄ありすぎ。

 アイルランド史やIRAなど、大半の日本人には馴染みも無く関心の対象でも無い。(余談1)本来はマニアックなレンタル屋にしか置かないだろうし置いていない部類の映画である。さすがアメリカ大手映画会社が参画し、「シンドラーのリスト」で名をはせたリーアム・ニーソン氏が主演したことで、日本でも容易に観れるようになった。
 アイルランド独立戦争を別の角度で描写した「麦の穂をゆらす風」も近年公開されている。これも合わせてご覧になると良いだろう。(余談2)

 アイルランド史に関心が持てない人には、些か解りづらく退屈な作品かもしれないが、リーアム・ニーソン氏の熱演とアラン・リックマン氏の怪演が観られるので、それだけでも価値がある。(余談3)
 予算に余裕が無かったにも関わらず、当時の記録フィルムと違わない光景が再現できていて良い。

 ただ、実際のコリンズは金融畑のビジネスマンだった経験を生かして、資金調達や組織管理など実務面で手腕を発揮し若くして頭角をあらわした現実主義者でもあるが、作中ではあまり描写されず、過激なテロリストの側面ばかりが強調されていた。そのため、史実では英国からの屈辱的条件に妥協して自治政府レベルの独立条約に甘んじるコリンズの路線変更が唐突に感じられて観客は呆気にとられるかもしれない。
 同じような理由で、一見すると現実的で穏健風なデ・ヴァレラがなぜ後半で急に過激な言動に転じてコリンズたちの足を引っ張るようになったのかも、描写不足の感がある。
 私としては、観客への迎合はやむを得ないだろうが、やはり内部抗争の部分を丁寧に描いてほしかった。人々の足並みを揃える難しさ、様々な思惑に振り回され神経をすり減らす若きリーダーの悲哀を精細に描写してほしかった。

 ラストは史実を知っていても泣かせる場面である。アイルランド民謡風の物悲しい女性の歌声(余談4)をBGMに、コリンズたちは待ち伏せを受けて殺される。殺され方もあっけなく、まるでエキストラが撃たれて倒れたかのような描写だった。

(余談1)私も二十歳代の頃は、U2の故郷、ビートルズのルーツの国という程度の認識しかなかった。今でも、アイルランドといえばエンヤかウイスキーかギネスが浮かんでしまう。重たいイメージは無い。

(余談2)他に「アイルランド・ライジング」も手に入りやすい。ジェームズ・ダーシー氏(「エクソシスト・ビギニンズ」)が主演。

(余談3)アラン・リックマン氏はコリンズのライバルになるデ・ヴァレラを演じているが、歳・背格好・風貌とも実物に酷似している。
 対してリーアム・ニーソン氏も実際のコリンズに面影が似てはいるが、二十歳代で独立戦争に参加し31歳で殺される青年革命家には見えず、44歳のリーアム・ニーソン氏はどう見ても壮年だ。しかも貫禄と安定感があるので、ニーソン氏のような風貌なら分裂は起きなかったかもしれない。
 作中で「引退したい」と弱気を吐く場面があるが、若者のクチから発すれば過酷な内戦時代を仕切る羽目となったリーダーの悲劇を反映できるのに、壮年のクチでは当たり前すぎてインパクトが薄い。
 もしニーソン氏が10歳若かったら、デ・ヴァレラの狡猾さと頑迷さとコリンズへの嫉妬心が観客に判り易く伝わったかもしれない。

 映画を観て気になったのは、コリンズを主人公に史実を脚色して製作された映画なのでやむを得ないと思うが、デ・ヴァレラを悪役に描きすぎている感がある。しかも彼は歴史上の人物と化したコリンズと違い、つい30年前まで存命していたのだ。アイルランドで賛否分かれた論議が巻き起こったと思うが。

(余談4)アイルランド民謡「She moved through the fair」、歌詞の内容も物悲しい。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作


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