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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ズール戦争」 ストレス解消活劇〔15〕 

ズール戦争」 大英帝国讃歌の「秀作」
  

 
【原題】ZULU
【公開年】1963年  【制作国】英吉利  【時間】138分  
【監督】サイ・エンドフィールド
【音楽】ジョン・バリー
【脚本】ジョン・プレビル サイ・エンドフィールド
【言語】イングランド語 一部ズールー語
【出演】スタンリー・ベイカー(ジョン・チャード中尉)  ジャック・ホーキンス(ウィット神父)  マイケル・ケイン(ブロムヘッド中尉)  ウーラ・ヤコブソン(マーガレタ・ウィット)  ジェームズ・ブース(フック)  ナイジェル・グリーン(ボーン軍曹)
          
【成分】スペクタクル パニック 不気味 恐怖 勇敢 絶望的 切ない かっこいい ズール族 イギリス軍 戦争映画 南ア 1870年代 
      
【特徴】一見すると英軍対野蛮人の英国讃歌の映画だが、当時としては随所に英軍とズール族の戦いをイーブンで描こうと努力していたあとがある。監督は赤狩りでハリウッドを追い出されたサイ・エンドフィールド氏。
 イギリスでは今でも名作の一つに数えられている映画で、根強い人気がある。
 
【効能】英軍とズール族の戦いは、ちょうど信長軍団と武田騎馬軍団の戦いを連想する。双方ともよく訓練され整然とした動きで戦う戦争美に爽やかさを感じる。まるでシューティングゲームのような興奮を覚える。
 新石器時代の装備でイギリスの近代的軍隊に戦いを挑むズール族に畏怖を覚える。一方的にやられながらも果敢に攻撃するズール族の姿に、反ヨーロッパ的アジア民族主義に目覚める。
 
【副作用】ズール族の描写が不十分、一方的にズール族を虐殺するイギリス軍に不快感、さらにそれを美談として未だに扱うイギリス人たちに嫌悪。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ズール族の攻撃描写はさすが。

 子供の頃に観たときは、アメリカの戦争映画のような派手さは無いにも関わらず妙に心に迫る説得力を感じたものである。史実を映画化したらしく、実在の人物が登場する。
 一概には言えないが、ハリウッドの戦争映画はとにかく派手に鉄砲や大砲を撃つ。そして敵国がアメリカ軍より装備も数も優れていても、一方的にアメリカ軍の銃火で倒れていく。いかにも撃たれるために突撃したり、撃たれるために馬鹿みたいにボーリングのピンみたいに立っていたり、不自然きわまりない場面の羅列である。
 この映画にも、英軍の銃火器によって一方的に撃たれ倒れるアフリカ先住民ズール族の軍勢が描写されるが、ハリウッドのような意図的な不公平描写ではない。というのも、ズール族側に感情移入しても納得のいく戦術であり、ズール族の戦力を冷静に考えれば、英軍に勝つ戦術はこれが妥当だろうと思う。(余談1)
 
 舞台は南アフリカ。英国の植民地支配がすすむ1870年代。ズール族が周辺部族を併呑して大英帝国に対し蜂起するが、当然のこと?ながらイギリス製作のこの作品にそんな背景描写は無い。
 作中では唐突にズール族が敵に豹変して連隊規模(千数百名)の英軍部隊を壊滅させ、別の砦に立て篭もる主人公ら英軍僅か百名がズール族の攻囲に勇敢な戦いをして守りきる。(余談2)意外にもズール族への露骨な蔑視描写は無い。これはアフリカへの配慮か。
 したがって、観客はほぼ英軍の視点からではあるが純粋にズール族との戦闘描写のみを鑑賞する事になる。子供の頃は英軍側に感情移入して観ていたので、ズール族が不気味な軍勢に思えたものだ。ところが面白いもので、社会問題への関心が強くなった学生の頃に観るとズール族視点に変わっていた。
 
 砦の守備隊を守る英軍百名の指揮官は性格が全く異なる2人の中尉で、最初のころは指揮系統に不協和音が生じる。スタンリー・ベイカー氏扮する中尉は野性味溢れる風貌の工兵隊指揮官。場数を踏んでいそうな物腰で的確に指揮をとるのでズール族との戦闘指揮を執ることになるが、傲慢とも思えるほどクセ者。マイケル・ケイン氏扮する中尉は金髪碧眼の白面、いつも身なり正しい上品な紳士で、もともとの戦闘部隊指揮官。エリート風吹かすと思いきや意外に部下想いで兵達の人望が非常に厚い。
 全く個性が違う2人の指揮官に加えて、アフリカをキリスト教で染めるためにやってきた牧師が砦に駆け込んで、兵士らの指揮を削ぐ説教をしたりと、砦は不安材料を抱える。
 
 対してズール族は大軍であるにも関わらず最初から統制がとれていて、最初は姿を見せずに足音だけで威嚇する。姿を現したら整然とした威嚇ダンスで砦の将兵を心理的に圧迫する。囮部隊に攻撃を仕掛けさせて砦に銃撃をさせて兵力を見切り、英軍から奪った銃で丘の上から砦を射撃させ、本隊は戦闘陣形を組んで巧みに波状攻撃をかける。(余談3)攻撃をかけながら威嚇の歌を合唱する。
 これがアメリカ映画なら、おそらくズール族を数に任せてゾンビみたいに突撃させ、勇気ある英軍将兵が銃弾を雨あられと撃ちまくる場面に終始しただろう。
 
 結局、英軍の獅子奮迅の戦いぶりで砦を守り抜き、大英帝国の面目を守ることでハッピーエンドとなる。ズール族は負けを認め潔く去っていく。イギリスでは溜飲下げる名作だろう。当時の映画としては、先住民と白人をイーブンで描こうとした努力のあとがある。(余談4)
 いま同じテーマで映画を製作したら、たぶん双方の視点で描かなければ世界的世論が納得しない。
 
 是非、南アとイギリス合作で、ズール族視点に比重を置いてリメイクしてほしい。
  
(余談1)記録によれば、砦に篭城する英軍は一個中隊規模百名ほど、軍服は鮮やかな紅色で武器は一発装填式小銃のみ、基本的にナポレオン時代と変わらない。ズール族は数千人、武器は新石器時代から続く伝統的な木製の盾と槍のみ。
 
(余談2)正確には教会の周りにバリケードを築いた簡単な陣地。
 このズール族は別の戦場で英軍との大規模な戦闘を展開、見事な用兵術で勝利し、英軍は師団規模の増派と機関銃を導入して辛勝、これが英国にとってトラウマとなり、後のアパルトヘイト制導入につながったのではないかとも言われている。
 つまり、大英帝国を局地的であれ最初に打ち負かしたのは、中国やインドでもなく、国民国家になりつつある日本でもなく、木製の槍と盾しかもたない部族ズールである。
  
(余談3)ズール族は、中央の部隊が敵主力の注意を引きつけている間に、両翼の部隊が側面へ回り込み攻囲して打撃、さらに後方の予備隊を中央に投入して殲滅。鶴翼の陣に似ている。
 
(余談4)監督のサイ・エンドフィールド氏はチャップリンと同じくアメリカのレッドパージで追われた人物、だからハリウッドの娯楽西部劇とは違って敵味方をイーブンで描いたのか。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作



 

 
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