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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「釈迦」 ゴージャス気分を楽しむ時に〔10〕

釈迦」 
当時の邦画エネルギーを感じる超大作。

 
 
 
【原題】
【公開年】1961年  【制作国】日本国  【時間】157分  【監督】三隅研次
【原作】
【音楽】伊福部昭
【脚本】八尋不二
【出演】本郷功次郎(シッダ太子)  チェリト・ソリス(ヤショダラー)  勝新太郎(ダイバ・ダッタ)  川崎敬三(ウパリ)  川口浩(アジヤセ王)  小林勝彦(アナン)  市川雷蔵[8代目](クナラ王子)  山本富士子(ウシヤナ)  中村玉緒(オータミー)  叶順子(マータンガ)  京マチ子(村の女ヤサ)  近藤美恵子(アマン)  藤原礼子(母親)  三田登喜子(サリイ)  市田ひろみ(ナジヤ)  阿井美千子(キリコ)  三田村元(サリーブッタ)  丹羽又三郎(ソーナ)  島田竜三(武将ブタイ)  鶴見丈二(アーラーマ)  大辻伺郎(カルダイ)  北原義郎(コンダンニヤ)  根上淳(マハーツサバ)  中村鴈治郎[2代目](アショカ王)  千葉敏郎(グリハ)  石井竜一(バンダ)  舟木洋一(モツガラーナ)  花布辰男(陶物師の翁)  嵐三右衛門(ラーヤナ)  寺島貢(侍従長)  阿部脩(番人)  丸山修(ジーワカ)  寺島雄作(占者)  荒木忍(行者)  清水元(キツショー)  山田五十鈴(カリティ)  月丘夢路(タクシラー)  北林谷栄(スミイ)  細川ちか子(マーヤー)  杉村春子(イダイケ)  千田是也(スッドーダナ)  東野英治郎(シュラダ)  見明凡太郎(チャンナ)  滝沢修(アシユダ仙人)  市川寿海[3代目](ビンビサーラ)  南部彰三(老門番)  葛木香一(スッパプッダ)  東良之助(ワッパ)  南条新太郎(マハーナーマ)  水原浩一(牢番甲)  浅尾奥山(老人)  市川謹也(チュンダ)  原聖四郎(バッディヤ)  伊達三郎(アッサジ)  金剛麗子(サバ)  橘公子(アミター)  近江輝子(庶民)  藤川準(牢番乙)  玉置一恵(群集乙)  堀北幸夫(番兵A)  横山文彦(群集甲)  菊野昌代士(群集丙)  越川一(群集丁)  丸凡太(油屋の小僧)  沖時男(物見)  浜田雄史(番兵B)
  
【成分】ファンタジー スペクタクル ゴージャス ロマンチック 不思議 パニック 知的 セクシー インド 紀元前5世紀
                   
【特徴】邦画界に君臨した大映社長永田雅一氏の肝煎りで制作された空前の超大作、強いていえば日本版「十戒」にも見える。当時としても現在から見ても邦画界としては破格の予算を投入し、事前にロケ隊をインドに派遣して衣装・食事・建築物を調査し、広大な自衛隊演習場を借りて紀元前5世紀のインドの町を再現した。
 日本発の70ミリ映画としても映画史に刻み込まれ、釈迦がいた時代の衣装を着て出演している当時のスター俳優たちが鮮明なカラー映像で残っているわけだから、貴重中の貴重映像。
 ただし、本作は宗教映画というよりはスペクタクル冒険ロマンが先行していて、一般で認識されている史実を敢えて無視している部分が多々ある。
    
【効能】当時の邦画界の凄さを体感。当時の若手女優がシングル肩だしの艶やかな衣装で演じているので活力がみなぎる。
 
【副作用】釈迦をだしに使った低俗贅沢映画にしか見えない。日本人がインドの衣装を着て日本語で演じているのに違和感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
当時の若手女優たちの艶姿に感動。
 
 2010年の暮れ、たまたまローカルTVをつけたら、なんと伝説の超大作「釈迦」が放送されていた。いるわいるわ、昭和30年代の日本銀幕を華やかに飾った俳優たちが、似合わないインドの衣装をまとって日本語で演技している。
 釈迦を演じるのは当時若手の本郷功次郎氏、私の年代では「特捜最前線」の刑事役で知られている。本作が初の主役だと思う。共演者には勝新太郎氏、市川雷蔵氏、山本富士子氏と絢爛豪華。
 
 一瞬、違和感を感じたが、同時期のハリウッド映画「十戒」や「ベン・ハー」とて中東が舞台なのに英語をしゃべっとるやないか。「クレオパトラ」ではエジプト女王の侍女にどうみてもゲルマン系の金髪美女がいるやないか。中東の人間が観たらやはり違和感だろう。ジョン・ウェイン氏主演の「征服者」なんか、どうみても白人にしかみえん俳優がモンゴル人を演じてたぞ。
 
 この「釈迦」は宗教映画というよりは、釈迦の逸話をベースに創作された超スペクタクル娯楽大作と考えるべきだろう。例えていうなら日本版「十戒」だ。
 これは決して誇張ではない。記憶に間違いが無ければ、当時10億円ほどの制作費を費やしているのだ。今の貨幣価値や人件費に換算したら50億でも足らんだろう。しかも大映一社の力だけで行っている。(もちろん全盛期のハリウッドにはかなわないが)
 エキストラも数千人単位で動員しているし、インドにロケハンを派遣して建物や美術品など釈迦が生きていた2500年前のインドを再現するに必要な資料を集め、広大な自衛隊演習場に巨大なオープンセットを建設。
 映像を観ると「日本」を連想させるようなものは俳優の顔だけだ。時代劇の狭いセットではなく古代インドの都市を本当に日本の草原に建てている。都市の外には緑の草原が広がっているだけ。今ではCGに頼らなければできない映像だ。だから価値がある。当時は本当に造ってしまうのだから。以前に聞いた話だと当時の7千万を使って建設したという。ハリウッドでもおいそれとはできない大技を大映がやってのけたのだ。
 そして邦画史に刻まれている日本初70ミリ天然色作品、「2001年宇宙の旅」と同じ70ミリだ。特撮にしても「十戒」と比べて著しく劣る部分は無い。
 
 いろいろ持ち上げたが、物語について私個人の価値観では観るべきところは無い。釈迦を超人か神のように描いている点自体が気に入らない。(余談1)
 また手塚治虫氏の「ブッダ」の影響からか、ディーバダッタは女性的な美青年のイメージで固定されてしまっているので、勝新太郎氏の髭面ディーバダッタはどうしても違和感がある。
 
 しかし、私はお宝映画にしたい。何故なら、山本富士子氏や中村玉緒氏をはじめ当時の若手美人女優たちが古代インドの衣装をまとっているからだ。和服のイメージや、現在のお婆さんのイメージしかない女優の若き頃、白く輝く若い容姿の映像が、それも白い胸元が開き、白く細い腕や肩や腋が露わの映像が解像度の高いカラー映像(余談2)で萌える事ができるのだ。
 私の目当てはこれだけと言っても過言ではない。

 山本富士子氏については永田雅一社長との対立は映画史に残っている。永田社長は自分に逆らう俳優はたとえスターであっても「五社協定」を使って起用させないなどのパワハラを行う事で有名なのだが、ただ銀幕界に強権を振るう帝王だったからこそ実現できたのが本作である。
 分別のある社長ではこんな大作は創るなんて発想は起きないだろうし、単なるブラック企業のパワハラ社長では制作中に社員の叛乱を招いて頓挫しただろう。そういう意味で永田雅一氏の凄さをも物語る大作だ。
 
(余談1)ハリウッドの「十戒」とて似たようなもの。ハリウッドに劣っているとは全く思っていない。むしろ当時の邦画はハリウッドに比べて制約があったと思うので、製作陣はかなり頑張った。
 
(余談2)残念ながら70ミリを上映できる映画館は当時少なかったので、35ミリ版も作られた。現在のソフトは35ミリから起こしたようである。
 
 釈迦の妻となるヤショーダラ姫を演じたのはフィリピンの女優チェリト・ソリス氏である。顔つきは東洋系だ。なぜ唐突にフィリピン女優を起用したのかは解らない。オールスター日本の中にインドの女優を使ったら浮いてしまうだろうし、ハリウッドから女優を連れてくるのも同様に浮く。ならば同じアジア系なのか? いっそ全員日本人でも良かったのに。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作



 

 
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