ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「怪物團」 自分に喝を入れたい時に〔32〕 

怪物團」 
伝説の「サスペンスホラー」。

 


【原題】FREAKS
【公開年】1932年  【制作国】亜米利加  【時間】65分  
【監督】トッド・ブラウニング
【原作】トッド・ロビンス
【音楽】
【脚本】 ウィリス・ゴールドベック レオン・ゴードン エドガー・アラン・ウールフ アル・ボースバーグ
【出演】ウォーレス・フォード(-)  オルガ・バクラノヴァ(-)  ロスコー・エイツ(-)  レイラ・ハイアムズ(-)  ハリー・アールズ(-)  ジョニー・エック(-)  ヘンリー・ヴィクター(-)  デイジー・アールズ(-)  ローズ・ディオン(-)  デイジー・ヒルトン(-)  ヴァイオレット・ヒルトン(-)  アンジェロ・ロシット(-)
  
【成分】不気味 恐怖 切ない サスペンス 愛憎劇 身体障害者 サーカスねた 白黒
                   
【特徴】「魔人ドラキュラ」の監督として名高いトッド・ブラウニング監督が放つ問題作。

 かつて、五体不満足で生まれてきた身体障害者の中にはサーカス団の見世物小屋で生計を立てている者がいた。現在は人権上の懸念で世界的に禁止傾向にあるが、本作はまだ彼ら彼女ら奇形芸人が活躍していたサーカス団を舞台にしている。
 出演している大勢の奇形異型の芸人たちは実際にそれを本職としている人々だ。公開時は当時のアメリカ市民の「良心」「良識」の逆鱗に触れ、各地で上映禁止の憂き目にあい、ブラウニング監督は映画界から締め出される事になる。
 テーマはシンプルで「ありふれた勧善懲悪」と「人は見かけではない」を極端に構成したものだが、ブラウニング監督は私たち現代人の「人権」や「良心」に潜む偽善を看破しているような気がしてならない。
    
【効能】自らの偽善に気づかされ、自分自身を省みるきっかけになる。
 
【副作用】障害者人権を侵害している映画に見え、不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
監督生命を縮めた伝説の名作。
  
 トッド・ブラウニング監督、1920年代から30年代にかけて活躍した映画人でベラ・ルゴシ氏主演「魔人ドラキュラ」を撮った映画監督として名高い。私はホラー映画・B級映画の開祖と思っている。
 本来ならホラー映画の巨匠として長く活躍しても良いはずの映画監督なのだが、ある作品がきっかけで監督生命を縮めてしまう。彼の人生は82年だが映画監督として活躍したのは40歳からおよそ20年程度、それ以降は隠遁生活のような状態だった。
 
 彼の映画人生を縮めた作品が本作である。私は「怪物團」というタイトルが馴染みあるが、若い映画ファンたちには「フリークス」のほうが通りが良いだろう。
 内容自体は日本の土曜ワイド劇場で取り上げそうな他愛ない愛憎サスペンスなのだが、その魅せ方が当時の良識の逆鱗に触れたのだ。そしてたぶん現代社会で発表しても短兵急なクレームで制作上映できないかもしれない。古典的名作として認知されているからソフト化されて鑑賞できるのだ。
 
 何故なら、見世物小屋で働く本物の奇形者・障害者を出演させているからだ。身障者への福祉や人権が定着するようになったのはごく最近で、つい数十年前までは自らを「怪物」として見世物小屋でショーを行う事が多々あった。また奇形者にとって制約のある社会ではそれが生活手段でもあった。
 ブラウニング監督の青年時代はサーカス団に身を寄せていたので、当時のサーカスにはセットになっていた見世物を舞台にする事を思い付いたのだろう。
 
 物語は見世物に出演する人気小人芸人ハンスが婚約者がいる身でありながら美しい空中ブランコ乗りの美女クレオパトラに恋をする。そのクレオパトラはハンスの財産を目当てに近寄る。ハンスの身を案じる健気で純粋な婚約者。やがて結婚に成功したクレオパトラはハンス毒殺をはかる。ところが失敗、今度はクレオパトラがハンスたちに復讐され醜い女性に変えられてしまう。
 
 社会的に醜いとされている人たちが善玉で、美しい女性が悪玉という逆転の演出。しかも特殊メイクでも特撮でもない本物の奇形芸人が演じる。ラストは美女が醜くなるというショッキングなオチ。
 奇形芸人の出演と美女が醜くなる、これが世間を敵に回してしまい、ブラウニング監督はほされるようになり、40年代半ばからは映画界からも社会からも追放状態となって隠遁する。
 
 いろんな解釈が成り立つと思う。表現の自由を標榜する私は、人の心に免罪符を与えない辛辣な踏み絵に見える。
 美女が悪者という展開、本物のフリークスは美女であり結末はいわば美女の真の姿が露呈するというのがベースだが、監督はサーカス時代に奇形芸人たちと誼を通じ仲間意識があるので社会の差別意識や固定観念を効果的に問題提起する狙いがあったようにも見える。本当に醜いのは誰なのか? またハンスも心配する婚約者を棄てようとした訳だからクレオパトラに騙されたとはいえ10割善玉という訳ではない。
 どの人間にも邪な心はある。綺麗な人だからといって、あるいは障害者だからといって、善人と思い込むうちはまだ差別者だ。むしろ「お前も邪な心を持った俺と同じ人間」と思えるようになって初めて対等ではないか。
 
 現代の人権感覚から観れば、見世物小屋は障害者虐待の象徴である。実際その通りなのだが、一方で自分の特技を活かして収入を得る事に誇りを持つ者もいる。作中の奇形芸人たちがそれだ。しかも彼らは奇形芸人役ではなく芸人が本職なのである。自分の美貌を武器に女優・男優・モデルになるのと理論的には変わり無い。
 30年ほど前から日本でも障害者を見世物にする行為を禁じるようになったが、芸人として誇りを持っている人たちからは、平等や福祉の名の下に自分たちの特技を一方的に悪と決め付けられ否定された事になる。
 
 監督は、現代人に対しても問題提起をしている。「お前は似非ヒューマニストではないのか」「似非良識を偉そうに並べてないか」「お前の鼻の奥の鼻糞は丸見えやぞ」と。(余談1)
 
(余談1)漫画規制条例にも関連する問題である。表現規制についてはもっと慎重になるべきだ。
 問題の本質は表現云々ではない。
 
 また、表現に対してクレームが頻発する昨今、私は「怪物團」を観て熟考する機会にすべきと考える。もっとも、思い込んでいる人は一種の「真理教信者」状態になっているので、別の可能性を考慮する心の余裕が無いかもしれない。規制派から見れば私も「自由真理教」だろうし。 
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔



 

 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
184位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
78位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク