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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「処刑山 -デッド・スノウ-」 おバカになって愉快になろう〔31〕 

処刑山 -デッド・スノウ-」 
明るい雪山版「死霊のはらわた」


 

【原題】DEAD SNOW
【公開年】2007年  【制作国】諾威  【時間】91分  
【監督】トミー・ウィルコラ
【原作】
【音楽】クリスティアン・ヴィーベ
【脚本】スティッグ・フローデ・ヘンリクセン トミー・ウィルコラ
【出演】ヴェガール・ホール(マルティン)  ラッシー・ヴァルダル(-)  ヤップ・ベック・ラウセン(-)  スティッグ・フローデ・ヘンリクセン(ロイ)  ヤニ・スカヴラン(クリス)  シャーロット・フログナー(ハンナ)

【成分】笑える 不思議 パニック 不気味 勇敢 絶望的 コミカル ナチス ゾンビ ホラー スプラッタ コメディ 北欧 ノルウェー

【特徴】ノルウェー産のゾンビ映画。雪山を舞台にナチスゾンビ軍団と8人の学生の死闘を描く。シチュエーションや展開はサム・ライミ監督「死霊のはらわた」に似ている。

【効能】真夏の熱帯夜に観ると涼を得られるかもしれない。

【副作用】コメディなのかホラーなのか戸惑い気分が悪くなる。冷蔵庫の中にうっかり放置してしまった消費期限を過ぎた魚や肉が怖くなる。「死霊のはらわた」のパクリに見える。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
ゾンビ映画の新しいパターン。

 今朝(2011年2月11日)から大阪では雪が降った。目が覚めて窓の外を見てみると久しぶりの雪化粧。しかも薄化粧ではなく5cmくらい積雪がある。雪国の人から見ればその程度で積雪なんか笑止だろうが、降水量が少なくて温暖化が進む大阪では積雪は年に1回有るか無いかだ。
 たぶん深夜から降っていたのだろう。午前中は降雪衰えることなく、昼の2時頃になってようやく止んだ。半日は降り続いたかもしれない。今日は一日中曇天なので雪は溶けずに残っている。こんな日は何年ぶりだろうか?

 銀世界を見ていると思い出す映画がある。原田知世氏の「私をスキーに連れてって」ではない。(余談1)本作「処刑山」、ナチスゾンビが登場するゾンビ映画である。
 監督はかなりのホラーマニアらしく、作中の部分部分を見れば既に過去のゾンビ映画やホラー映画で使用された場面を巧くパッチワークしている。そのため、使い古された場面や展開なのに、全体で観ると新機軸である。

 作中では、登場人物の1人がホラーマニアで、サム・ライミ監督「死霊のはらわた」が話題に出る。その後の大まかな展開やシチュエーションからいって、「死霊のはらわた」雪山版コメディホラーと評すべきか。禁断の小さな宝箱を開けた途端に主人公たちはナチスゾンビに命を狙われる。
 冒頭こそ、夜の雪山で何者かに追われて逃げる美女や、夜中にロッジがゾンビたちに急襲されるなどホラーチックだが、ラストは明るい銀世界でゾンビ軍団VS医学生の血沸き肉踊る白兵線が繰り広げられる。ゾンビの赤黒い血に染まった医学生たちの顔のほうが恐い。

 ラストの戦いでは主人公たちの掛け合い漫才が気が利いている。ゾンビに噛まれるとゾンビになる説を信じて、腕を噛まれた医学生がチェーンソーで腕を切り、焚き火で傷口を焼いて止血するのだが、せっかくの思い切った治療も、足元の雪に潜って潜んでいたソンビ兵士が飛び足して股間を噛まれ無駄になってしまう。
 医学生の相棒は「ユダヤ人血筋のお前なんか仲間にしないよ。止めとけ止めとけ」と慰める。

 さて今回のゾンビは、ノルウェーの発音なのか「ゾムビ」と称されている。ゾンビをどのようなキャラにするか、この手の映画の楽しみでもあるのだが、本作のゾンビは基本的に人間臭い。何らかの呪いで生きているのか、雪原を走ると息が荒くなるし、口から白い息も出る。顔は冷凍死体のように頭髪が抜けて変色してやや乾燥している程度で鮮度は良い。内臓は原形を留めているし、血液も赤黒くなっているが固まっていない。

 何より指揮系統が確立されている。大佐ゾンビがジェスチャーで命令すると機敏に配置についたり突撃したり。ゾンビ全員が武装親衛隊の制服をキチンと着こなしている。大佐ゾンビも双眼鏡で主人公たちの動向を観察している。噛み付くだけでなく、殴ったり頭突きしたり、軍用ナイフを使ったり、動く死体ではなく魔術か呪術で死ねない身体になっていると解釈したほうが良いだろう。何しろ、大佐は言葉も発することができ、呪文のような掛け声で部下を甦らせるのだから。
 真っ白い雪の中から無数の黒いナチスゾンビ兵士たちがボコボコ出現する絵は面白い。

 最後に、ゾンビと闘う医学生たち男女8人、学生にしては少し老けていた。ヨーロッパでは30代40代の学生も珍しくないから、アリかな。

(余談1)私の世代では「私をスキーに連れてって」は思い出の青春映画だ。バブル景気が盛り上がろうとする華やかな社会を反映しているので、懐かしいというよりある種の切なさを抱いている友人がチラホラいる。

 私はというと、この「処刑山」を観るまではU2の「New Year's Day」のPVだった。一面銀世界の森の中をU2の4名が戦国時代の足軽みたいに白旗を背中に取り付けて完全防寒姿で馬を駆る。白旗掲げている割には勇ましい歌だった。
 雪原でアンプも無いのに演奏を始める滑稽な場面があるのだが、エッジが指切軍手でギターを演奏しているのが妙にリアリティーだった。
 今にして思えば、このPVは「処刑山」のイメージにも通ずる。というのも、時おり第二次大戦中の冬の戦場を撮影した記録フィルムが挿入されたり、U2メンバーも黒っぽい冬の姿、特にボーカルのボノは黒いトレンチコートを首元まで留めていた。さらにロケはノルウェーの東隣スウェーデンで氷点下のもとで撮影された。  

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作



 
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