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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

寂しさをまぎらわす時に 8 「日本沈没」 

日本沈没」 
CGをふんだんに使った美しい映像。

 

 
【公開年】2006年  【制作国】日本  【時間】135分  【監督】樋口真嗣
【原作】小松左京
【音楽】岩代太郎
【脚本】加藤正人
【出演】草剛(小野寺俊夫)  柴咲コウ(阿部玲子レスキュー隊員)  豊川悦司(田所雄介博士)  大地真央(鷹森沙織文部科学兼危機管理担当大臣)  及川光博(結城慎司)  福田麻由子(倉木美咲)  吉田日出子(田野倉珠江)  柄本明(福原教授)  國村隼(野崎亨介内閣官房長官)  石坂浩二(山本尚之総理大臣)  和久井映見(小野寺俊夫の姉)  長山藍子(小野寺俊夫の母)  松尾貴史(篠原学内閣参事官)  ピエール瀧(自衛隊指揮官)  佐藤江梨子(結城の妻)  加藤武(山城教授)  安野モヨコ(山城教授の娘)  福井晴敏(小野寺の実家の従業員)  富野由悠季(京都の高僧)  丹波哲郎(阿部玲子の祖父)  
             
【成分】悲しい スペクタクル パニック 勇敢 災害 ヒューマン
        
【特徴】CGが美しい。前作では技術的な問題で描写できなかった光景を伸び伸びと描写している感じだ。深夜の寂しさを紛らわすにはちょうど良い映像だ。
 前作からの時代の変化を象徴する改編に、お嬢様キャラだったヒロインの阿部玲子がレスキュー隊員として現場で行動する。さらに災害対策の所轄官庁指揮者が田所博士の元妻で女性大臣鷹森沙織という新キャラが登場する。その他、樋口真嗣監督の人脈を象徴するようなカメオ出演が多数ある。
 
【効能】深夜の寂寞を紛らわし賑やかにする。
 
【副作用】ラブロマンス中心で、災害の緊迫感はまるでなく、CG映像の美しさだけが印象に残る。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。


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大掛かりな作品だったが、とりえはCGだけ。
 
 悪い意味でアイドル映画との評価が多いようだ。残念ながら私も同感といわざるを得ない。
 子供の頃、前作映画とTVドラマ両方を観た。今のようなCGは無いし特撮技術も稚拙だが、物語展開は丁寧で計算されていて、ジワジワと破滅に向かっていく日本の描写がよくできていた。また、俳優たちの名演技によって滅亡へと向かう緊迫感と絶望感と悲愴感が伝わってきたものだ。
 中高生になって原作を読んだが、これは映画やドラマ以上に迫力のあるものだった。ハードSFファンの友人によると、当時の日本のSF小説の中で唯一ハードSFといえる作品で、海外の評価が高いそうである。(余談1)
 
 さて、今回の作品だが、どういう訳か緊迫感が伝わってこない。本来、映像にリアリテイーを与えるためにCGを使うのだが、派手さは感じても災害描写に臨場感を与えるものにはなっていない。
 理由は物語構成と俳優の演技である。前作では日本がジワジワ沈んでいく様を丁寧に描写していたが、今回は唐突すぎる。だから派手なCGしか印象に残らない。次に俳優の演技である。よくハリウッド製のパニック映画で、原版だと俳優の緊迫感溢れる演技によって騒然とした空気がよく描写されているのに、日本語吹替えの声優の演技で台無しになる事が多々ある。工場や工事現場で事故が起こって騒然とした場面を見たり経験すれば、あんな下手糞な発声にはならないと思うのだが。それと同じ現象が日本沈没にも見られる。
  
 なぜ俳優はパニックや緊迫感を勉強しないのか? なぜ監督たちは指導しないのか? みんな工場や工事現場で働いた事はないのか? 役作りのために見学などしないのか? 観ていて首をかしげる場面ばかりである。
 草剛氏や柴咲コウ氏は勤勉な俳優と評判で私も好きなのだが、構成がよくないのかもしれない。
 日本沈没というテーマは、「ヤマト」などと同じく気合いが入るテーマ、気合いを入れるべきテーマであるはずだ。それが全く伝わってこない。ハリウッド並の完成度と期待を抱くのはコクとの意見があるようだが、日本映画の技量を考えれば十分ハリウッド以上の完成度を期待しても良いと思うし、何より前作より劣るのは感心できない。
 この映画を観ながら、小松左京氏のもう1つの失敗作「さよならジュピター」を思い出した。
 
 最後に、いずれ起こる関東東海地震の警鐘というのが本作のコンセプトだったと聞いている。この内容で警鐘として機能するだろうか?
 もう一つだけ良い点をあげると、前作は世界経済の問題を敢えて割愛して世界各国が救援に尽力するヒューマンな内容だったが、今回は経済問題も意識してシビアに描いている。
  
(余談1)発表当時の科学常識で科学考証に忠実なSFであることが条件。例えば「ガンダム」や「ヤマト」はSFかもしれないが科学考証は全く無視しているのでハードSFではない。
 欧米ではSF小説の地位は高く、SF小説家にとって権威あるヒューゴ賞を受賞することは、文壇にとってもノーベル文学賞なみに評価される。日本のSFは残念ながら漫画・アニメと同じく不当に地位が低い。
 「日本沈没」は地学の修士論文並のレベルらしい。ハードSFの大家アーサー・C・クラーク氏が静止衛生の理論を考えた有能な科学者・技術者であるように、ハードSFには確かな科学知識が不可欠である。
 日本沈没の2作目が駄作になった遠因に、日本のSF蔑視があるのではないか。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆ 駄作

 
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こんにちは。

比較的、甘い評価の私ですが、この作品には、悪いけど、
”沈没”しました.....。
拝読して、緊迫感が薄かったというのも一因だったかな、と思いました。
[ 2008/03/03 21:05 ] [ 編集 ]
こんばんは、晴雨堂です。

 いつもコメントありがとう。
 
 邦画はどういう訳か伝統的にパニック映画が不得手のようですね。役者の発声が変な力みがあってどうもおかしい。出演者は医療現場や災害救援の現場を見学するなり記録映像を観るなりして勉強するべきだと思います。
[ 2008/03/05 21:34 ] [ 編集 ]
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2006/07/15公開の作品。 むかーーし、テレビ版はかすかに記憶にぃーーー。 (年がばれるぅ) 結末とか覚えてないし・・パニックものだし・・ 新たな気持ちで見る事に・・・。
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