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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「あずみ2 Death or Love」 突っ込みどころを楽しもう〔7〕

あずみ2 Death or Love
上戸彩栗山千明の共演

 

 
【公開年】2004年  【制作国】日本国  【時間】112分  【監督】金子修介
【原作】小山ゆう
【音楽】川村栄二
【脚色】水島力也 川尻善昭
【出演】上戸彩(あずみ)  石垣佑磨(ながら)  栗山千明(こずえ)  小栗旬(銀角/なち)  北村一輝(井上勘兵衛)  遠藤憲一(金角)  宍戸開(服部半蔵)  坂口拓(土蜘蛛)  謙吾(六波(ろっぱ))  増本庄一郎(三郎太)  伊藤俊(雉丸)  武智健二(喜兵太)  渕野俊太(慎太郎)  野村祐人(侍Z)  前田愛(千代)  根岸季衣(よね)  永澤俊矢(真田幸村)  神山繁(南光坊天海)  高島礼子(空如)  平幹二朗(真田昌幸)  
             
【成分】勇敢 セクシー かっこいい 時代劇 戦国時代 17世紀初頭 日本 
        
【特徴】前作からの続編。あずみは残りのターゲットを狙い、生き残った“ながら”と2人で行動を開始する。前作で刺客選抜試合であずみに殺されたはずの“なち”役小栗旬氏が銀角役で再出演。
    
【効能】時代劇とは思えない冒険活劇にストレス解消。
 
【副作用】アクションが不完全燃焼でストレス急騰。前作の美女丸のような強烈なキャラがいないため盛り下る。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
前作の魅力を全て殺した続編
 
 友人から「2作目は観ん方がええ。おもろない」と言われたが、前作と比べてどこがどう悪くなったのか興味をそそられた。結局、友人の忠告を聞かずに観た訳だが、結論を言うとレビュータイトルの通りである。前作の良い点が全て消され、それに代わる魅力が不十分だった。

 前作レビューでも書いた通り、映画版「あずみ」は時代劇ではない。「赤影」や「変身忍者アラシ」や「風雲ライオン丸」などと同じヒーローアクションである。さらに映画制作の目的は原作の映画化というよりは、女性ヒーローを演じる上戸彩氏の殺陣を如何に魅せるかであって、多少の時代考証無視も不自然な物語展開もありだ。
 この映画シリーズは上戸彩氏の殺陣を魅せるために組まれた物語であり、舞台設定であり、撮影スタッフであり、キャスティングである。仮に映画制作のテーマが「上戸彩氏の魅せる殺陣」ではなく、「リアルな戦国時代」とか「戦乱の無情」とか「愛と平和」といった高度なものなら、作品そのものの存在意義は無い。何故なら物語も時代考証も人物設定も台詞も正視に堪えられないヒドイ駄作としか言い様がないからだ。
 
 そういう意味で、この続編を担当した監督は制作意義を誤解したか、忘れてしまったか、どちらかだろう。まず、肝心の殺陣だが、上戸彩氏の美少年的キャラにはスピーディーさが不可欠だと思うが、前作に比べてスローな描写である。カメラワークの視点を上戸彩氏の表情重視にしたためか「あずみ」の俊敏さが殺された。さらに強敵を登場させ過ぎて、一対一の凝った殺陣を並べる事に力点を置き過ぎたのもスピーディーさを失う要因になった。
 クライマックスで上戸彩氏が大勢の敵に向かって斬り込んでいく場面でも、前作は大人数の描写が活きていて迫力があったが、今回はエキストラの使い方がイマイチで画面が歯抜けのようになっていた。そもそも天下に挑もうとする戦国武将の軍勢にしてはあまりにショボイ。これはエキストラの数というよりもカメラワークや演出が悪いためである。
 上戸彩氏の白く細い四肢が舞うたびに無骨な男たちが血飛沫あげて倒れ、涼しい顔のまま返り血を殆ど浴びず敵を倒し続けるのが魅力だったが・・。
 
 今回の作品も魅力あるキャラが盛り沢山であり俳優たちもよく演じていた。しかし逆に盛り沢山すぎて個々のキャラの魅力が十分に引き出せていなかった。平幹二朗氏・北村一輝氏・高島礼子氏・栗山千明氏、いずれも怪演ができる俳優たちだが、「あずみ」では強敵を登場し過ぎたために魅せ場があまりにも少ない。(余談1)
 この作品は文藝大作でもなければスペクタクル巨編でもない。単純明解なヒーロー物であって、それ以上でもそれ以下でもない。そのことを制作者側は勘違いして、テーマにそぐわない豪華規模の人件費を使っている。良質のヒーロー物は、物語展開はできるだけ単純に、登場人物も解りやすく必要最低限にするべきである。登場人物を整理しなければ、折角の山場や俳優の怪演も相殺しあって似たような場面が延々繰り返される羽目になる。
 この作品は前作の魅力も出演する俳優の魅力も殺してしまった。
  

(余談1)栗山千明の使い方を間違っている!
 
 「キルビル」ではタランティーノ監督の適切なキャスティングで栗山千明氏というキャラの魅力が存分に発揮された。地雷原のごとく危うそうな女子高生に棘付き鉄球、演じている本人は気に入らないかもしれないが狂気の現役女子高生殺し屋はハマリ役だった。
 この「キルビル」の後だけに、「あずみ2」でも上戸彩氏との鬼気迫る殺陣を期待したファンは多かったと思う。残念ながら見事に裏切られた。確かに敵役として上戸彩氏と鍔迫り合いを繰り広げたが、あまりに呆気なかった。こんな中途半端な描き方をするくらいなら、いっそ栗山千明氏を純情可憐なお姫様役にして、上戸彩氏が護衛するシチュエーションのほうがマシだ。

 前述したように、「あずみ2」の制作者たちはヒーローアクションというジャンルを理解していなかったため、前作で良かった部分が全て殺された。
 前作で良かった点は、上戸彩氏の美少年的魅力を引き立たせる軽快な殺陣であり、そんな上戸彩氏とは真逆の生臭い体臭が漂いそうな北村一輝氏・竹中直人氏・オダギリジョー氏ら敵役である。特にヒーローアクションでは善玉と悪玉との明確かつ強烈な対立が「命」である。
 ところが、「あずみ2」では軽快な殺陣がなりをひそめた。敵役とチャンバラ場面が多すぎて、平幹二朗氏ら敵役の存在感が薄まり、善玉悪玉のコントラストがぼやけてしまった。特に高島礼子氏と栗山千明氏は相殺し合って勿体無い。

 なぜ監督は敵役を栗山千明氏に一本化しなかったのだろうか? 好みもあるかもしれないが画面では栗山氏の妖艶さは高島氏に負けていない。特に栗山氏の風貌は良くいえばクレオパトラ的、悪くいえば女狐的なので、老いた殿様をたぶらかせて操る役どころにうってつけである。それに熟女の範疇に入る高島氏が老人をそそのかしても当たり前すぎる。栗山氏のような小娘がたぶらかすほうがインパクトが強い。

 高島氏は上戸彩氏との決闘で「世間も男も知らぬ女が!」という趣旨の台詞で罵る。単純に敵と格闘して勝つだけの日々を過ごした一介の刺客と、斜陽の忍者集団を束ねていかなければならなかった女棟梁の対比を表す場面なのだが、大人の高島氏が小娘の上戸氏に向かって罵るのは当たり前すぎるし、それどころか大人が小娘に罵っては貫禄が無くなってしまい、せっかくの存在感が軽くなってしまう。
 やはり同い歳くらいの栗山氏のほうがインパクトがあるだろう。同じ小娘でありながら、ひたすら無邪気に人を殺すだけの人生と、人を殺すだけでなく配下を養うために殿様に取り入り妾になるなど権謀術も使わなければならなかった人生の対比の方が映える。

 クライマックスでは、高島氏は最期に平幹二朗氏へ「天下をとって・・」と言い残し、平氏は愛妾の仇をとるため上戸彩氏に戦いを挑む。これもあまりに平凡すぎるし正気すぎる。狂気をウリにしている役柄が愛に生きる純粋な老人ではつまらない。
 やはり、上戸彩氏たった1人の急襲で軍勢が総崩れになるのを目の当たりにして恐れおののき小便を漏らすほうがインパクトがある。幾多の戦に勝利し関が原の戦いでは中仙道を西進する徳川勢3万を撃退した智将が、情けない醜態を晒すほうが絵としては面白いのだ。
 歴史を知らぬ人でも、ベテランの平幹二朗氏が情けなくうろたえ小便をたらしながら子泣き爺のように栗山氏の背中に隠れた方が強烈だし滑稽だ。

 そして、栗山千明氏が小便を漏らす殿様を尻目に立ち上がる。服装は大名の奥方風に小袖に金刺繍の豪華打掛がいいだろう。自分の野望を同い歳の一介の刺客に阻まれた悔しさから、妖艶の女狐顔から鬼夜叉の顔になり手にしていた蝙蝠扇子を叩きつけるや、打掛と小袖を脱ぎ捨て、白い腕や太腿があらわの袖無し短丈の肌襦袢一枚になって仁王立ちになる。そこへ小姓たちがそそくさと武具を携えて集まり、黒革製の胸当てに板金の篭手と脛当てを栗山氏に付け、ひざまずく武者が両手で差し出す特製薙刀を受け取るや、ブルース・リーのような怪鳥音を発して「キルビル」を上回る迫力で上戸彩氏に襲い掛かる。

 とにかく私が言いたいのは、栗山千明氏の魅力を引き出せなかった監督と制作者と栗山氏の所属事務所に憤懣なのである。

 強いて良かった点は「あずみ」たちの座り方だ。天海の御前で上戸彩氏も栗山千明氏も胡座をかいていた。(途中で正座に座りなおすが)
 何気ない場面だが、これは時代考証として正しい。正座が普及したのは江戸幕府が正式な座り方に定めた17世紀中頃、一般に広まるのは畳が庶民にも普及した18世紀頃からである。日本古来の座り方と思われがちだが、日本の長い歴史の中では極めて最近である。それ以前は男も女も胡座か立膝座りである。
  
晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆ 駄作

 
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