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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「死にゆく妻との旅路」 カップルで考えよう〔8〕 

死にゆく妻との旅路」 
夫婦というものを再確認させる作品。


 
 
【原題】
【公開年】2010年  【制作国】日本国  【時間】113分  
【監督】塙幸成
【原作】清水久典
【音楽】岡本定義
【脚本】山田耕大
【言語】日本語
【出演】三浦友和清水久典)  石田ゆり子(清水ひとみ)  西原亜希(沙織)  掛田誠(-)  近童弐吉(-)  黒沼弘己(-)  でんでん(-)  松浦祐也(-)  十貫寺梅軒(久典の兄)  田島令子(久典の姉)  常田富士男(自転車で旅する老人)
   
【成分】泣ける 悲しい 絶望的 切ない 放浪 ロードムービー 夜逃げ
                           
【特徴】実際にあった事件を元に映画化。舞台となった青いバンで三浦友和石田ゆり子両氏の二人芝居が展開される良い意味での低予算映画である。
    
【効能】家族・夫婦という絆を再確認する事ができる。
 
【副作用】展開と結末に納得がいかず不快感。実際の事件を美化しているように見えて憤りを感じる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
三浦友和石田ゆり子の二人芝居
 
 これは実話をもとにした作品である。多額の借金を抱えた町工場経営者が、手術をしたばかりの病み上がりの妻と一緒に車で夜逃げする話だ。演じている三浦友和石田ゆり子両氏と実際の清水夫妻の逃避行当時の年齢はほぼ同じ、低予算制作なのでロケに用意された車両は青いバン1台だけ、このバンの中だけで事実上の2人芝居で逃避行を描写するからリアリティがある。(余談1)
 特に石田ゆり子氏は撮影と平行して減量しているので、作品の最初と最後では顔つきが若干変わり、身体が次第に弱っていく様がよく表現されている。
 
 常々周囲にも述べていることだが、私は潤沢な予算をつぎ込んだ大作よりも低予算作品が好きである。金をつぎ込めば、そこそこ面白い作品になって当たり前だし、多少の構成や脚本や主演俳優の稚拙さは、ギャラの高い実力派俳優と特殊撮影と大掛かりなロケーションなどで誤魔化せるし、最初から上映は全国展開なので余程の駄作でもない限り興行成績もそこそこ獲れる。
 だが本作では脚本や俳優の演技だけが勝負だ。
 
 映画を見慣れている人には、演じている2人が小奇麗だとか、悲壮感や切迫感が無いとか、淡々としすぎているとか、軽いイメージを持つかもしれない。見慣れていない人には登場人物の背景描写が十分でなく解りづらいとかもしれない。
 しかし私は実際にチャリンコで日本一周を行い、様々な人と出会い、借金取りから逃げてホームレスになった人や夫婦で夜逃げして潜伏している例を知っている。(余談2)だから、映画的に見栄え良くするような演出やメイクをしたら、逆に私は猛烈な不快感を抱いただろう。それを敢えてしなかった本作の英断に好感を抱いている。
 世間の人が陥りやすいのはステレオタイプな表現である。映像で汚れが目立つ状態ともなれば実際の視覚ではかなり汚れてドロドロの状態だ。また逃亡生活が長くなると順応して傍目には悲壮感は出ない。私はチャリ旅行中に善意の市民から食糧を恵んでくれるためにやつれた演技を敢えてしたものだ。

 ただ、あくまでモデルとなった夫妻からエピソードをもらっているので、やはり実際の夫妻にとって表現して欲しくない部分は映画には出していないと思う。そのため、レビュアー諸氏の中には「美化」と感じた方がいるが、そのきらいは心の隅で承知しておくべきだろう。
 良い悪い両方の意味で「純愛」と感じた方もいるが、それも実際の逃避行から原作・映画化へと「事実」がフィルターにかけられ編集された可能性も考慮すべきだ。
 
 私の場合、勤め先の事業縮小で解雇されたとき、連れ合いがいつもと変わらず接してくれて精神的に助けられた。連れ合いの提案で、失職中なのに思い切って登山ツアーに出かけたり、温泉に入ったりして気分を一新させることができた。作中の夫婦と違って借金が無かったのが幸いだった。
 これを「家族愛」「夫婦愛」などと単純に括りたくない。もし独り身だったら、私の性格なら呑気に旅人に戻って新天地へ希望を見ようとするかもしれないが、定職に就けないまま徒に宛てなくダラダラ全国を徘徊してホームレスとなり最期は野垂れ死にというオチが現実的かもしれない。
 しかし、連れ合いや子供がいたら、その存在そのものが「希望を生み出す活力」になる。そんな気持ちを持った方は大勢いると思う。それを「愛」と括られたくない。強いていれば、生きている実感というべきか。

 最後に、今の時代こんな事は何度もある。高度経済成長の時代のように40年先までの人生設計は立てられない。安泰のはずの公務員でさえもはや他人事ではないのだ。  
 
(余談1)「夫婦」の逃避行といえば、真っ先に思い浮かべるのはアメリカン・ニューシネマの「俺たちに明日はない」だ。大恐慌時代の1930年代、人生の展望を失った若いカップルが、小奇麗な背広とドレスに身を包み、ロビン・フッドを気取って銀行強盗を繰り返し、最後はFBIらアメリカ警察力によって蜂の巣にされる実話を映画化したものだ。
 現代日本では、そんな「夫婦」はまだ現実的ではないし、日本人は権力に向かって本気で戦いを挑む体質ではないので、本作の夫婦のほうが説得力がある。
 
 「俺たちに明日はない」の主人公たち。実際の2人を写真で見たことがあるが中高生くらいの少年少女が粋がって背広やドレスを着てマシンガンを片手にポーズとっているようにしか見えない。
 生活はかなり過酷で不衛生、車の中で寝泊りという日々だったらしいが、写真を見る限りでは小奇麗な格好だったし、射殺された直後の遺体写真も綺麗に髭を剃っていたし、髪も乱れていなかった。
 
(余談2)チャリンコ旅行中、他人様の親切に助けられること多々ある。そのため対外的に不潔な印象を与えないよう、衣服はまめに公園の水道などで洗濯し、寒い冬でも濡れタオルで身体を拭き、髪は洗髪が面倒なので坊主頭にした。髭も駅の便所などで3日に1回程度は剃った。その結果、修行僧と間違われたことも何度かあった。
 本作の主人公たちも、夫は就活、妻は病持ちのため、極力身体を身奇麗にしていたはずだし、日本では十分可能である。 

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
晴雨堂関連書籍案内
死にゆく妻との旅路 (新潮文庫) 清水久典


 

 
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