「卒業 」 サイモンとガーファンクルの楽曲が美しい、 思春期のための恋愛物語。 【原題】 THE GRADUATE
【公開年】 1967年
【制作国】 亜米利加
【時間】 107分
【監督】 マイク・ニコルズ 【原作】 チャールズ・ウェッブ 【音楽】 ポール・サイモン デイヴ・グルーシン
【脚本】 バック・ヘンリー カルダー・ウィリンガム
【言語】 イングランド語
【出演】 ダスティン・ホフマン (ベン・ブラドック)
キャサリン・ロス (エレイン・ロビンソン) アン・バンクロフト(ミセス・ロビンソン) マーレイ・ハミルトン(ミスター・ロビンソン) ウィリアム・ダニエルズ(ミスター・ブラドック) エリザベス・ウィルソン(ミセス・ブラドック) バック・ヘンリー(-) エドラ・ゲイル(-) ウォルター・ブルック(-) ノーマン・フェル(-) アリス・ゴーストリー(-) ブライアン・エイヴリー(-) マリオン・ローン(-) リチャード・ドレイファス(-) マイク・ファレル(-) エリザベス・フレイザー(-) ベン・マーフィ(-) ケヴィン・タイ(-) ハリー・ホルカム(-) ドナルド・F・グラット(-)
【成分】 パニック 切ない セクシー かわいい 愛憎劇 60年代末
【特徴】 ダスティン・ホフマン 氏の出世作。当時30歳のホフマン氏が20歳そこそこの多感な青年を演じる。
最初は両親の知人の人妻と関係を持ち、その後で人妻の娘であるヒロインと恋に落ちる。人妻との関係がばれてヒロインは主人公を拒絶、主人公がストーカーまがいの行為をする場面で流れるサイモンとガーファンクルの名曲「スカボローフェアー」は恋に押し潰されそうな未練たらしい男性の行動と巧くマッチしている。
またラストで他の男と結婚するヒロインに主人公が教会に乱入し吠えるように名前を連呼し、強奪するようにヒロインを連れて逃亡する場面は後々語り継がれる名場面で、後世の作品でもしばしばオマージュもしくはパロディにされている。
【効能】 思春期の鑑賞者は恋愛に夢を持つ。大人は思春期の情熱がよみがえる。
【副作用】 思春期の鑑賞者は恋愛に幻想を持つ。大人の鑑賞者はかつての過ちを反省する。恋煩いの大人には鎮静効果がある?
下の【続きを読む】 をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。 記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
思春期の思い出。 これも日本のどこかで時々上映される不朽の名作である。私が小中学生の頃はしばしばTVでも放送されていた。今でもローカル局の深夜枠で放映されているだろう。
初めて観たのは中学生になって間もない頃だったと思う。まだ12歳か13歳だった。当時のTVは60年代に流行った音楽や映画をよく流していて、作中の主題歌や挿入歌を担当したサイモンとガーファンクルの楽曲もCMに使われていたような記憶がある。現在(2011年)は80年代に流行った歌がCMのBGMに採用される事が多いが、それと似たような現象だろう。(余談1)
この作品、もし大人になってから観たら、あるいはすっかり中年になってから観たら、たぶん作品に感情移入することはあまりなく、演じる
ダスティン・ホフマン 氏の学生にしては少し老けた顔(余談2)を観ながら「こいつ、母娘2人とも食うつもりか。ええのう」なんて下卑たる印象を持つだろう。
または、ベンがエレンの結婚式に乱入して強引に駆け落ちしてバスに乗り込むラストの2人を観ながら、あの幸せそうなベンの父親たちはこの後どんな制裁が待ち受けているのだろう? お馬鹿な息子を持ったために、せっかくの円満な家庭が無茶苦茶、気の毒に。そんな事を思う。
あるいは、激化するベトナム戦争と反戦運動の学生たちの存在など、作中の台詞や風景から社会背景を考察したかもしれない。
思春期の頃にこの作品に出会えて良かった。素直に主人公へ感情移入できた。歳上の女性ロビンソン夫人への憧れ、夢のような熟女との「親交」。最初は親の勧めから義務で夫人の娘エレンとデート、歳上の女性と付き合っていたためただの女の子にしか見えなかったエレンの瞳から涙が、それを見て急速に彼女がいとおしくなるベン。
母親との関係が発覚して遠ざかるエレン、それを追いかけるベン。そういえばあの頃の私も偶然を装って好きだった女の子の後を追いかけた。下校する時間を合わせたり、信号待ちのところで遭うように調整したり。
ラストの有名な教会の場面(余談3)、お互いの名前を絶叫しあうベンとエレン、汗だくのベンは結婚式に乱入するや花嫁衣裳のエレンをさらい、新郎やエレンの親族たちをなぎ倒し、玄関ドアを十字架で閂して走り去る。
2人は笑顔で疾走しバスに乗り込み後部座席で並んで座る。呼吸が落ち着くにしたがい笑顔が消えていき放心状態へ、そして暗い無表情へ。ハッピーエンドのようでハッピーエンドとは言い難い終わり方に、観ている中学生の私も途方にくれてしまった。
(余談1)今は80年代に青春を過ごした人がディレクターとしてCM制作をしている事が多いが、当時は60年代に青春を過ごした人が中核になっていた。
なんのCMか忘れたが「Scarborough Fair」のメロディを少しアレンジしたBGMのCMがあった。ヨーロッパの古い民謡か賛美歌のような音色が頭から離れなくなった。「
卒業 」を観たとき、あの歌や!と何か探していたものが何年ぶりかで見つかったような感動だった。
物語の中盤、ベンがエレンに懸想して追い掛け回す場面に使われていた。切ない雰囲気と歌がよくマッチしている。「She once was a true love of mine.」「Then she'll be a true love of mine.」の歌詞が妙に物悲しく思春期の私の心に響いた。
結局、小遣を貯めてサントラ版LPを買ってしまった。レコードジャケットは、ストッキングを履いたロビンソン夫人の脹脛を手前に主人公が物憂げに立っている場面が使われている。今もCDで売られているかな?
「Scarborough Fair」はもともと吟遊詩人の民謡みたいなもので、女にすてられた男の未練がましい歌のようだが、サイモンとガーファンクルの詠唱バージョンは、まるで死地へ旅たつ兵士が恋人への伝言を善意の第三者に伝えているような響きがある。この点は、まさにベトナム戦争の時代を象徴している。
(余談2)この時、
ダスティン・ホフマン 氏は30歳だったと思う。
(余談3)CMやドラマでさんざんパロディにされているシーンである。私が印象に残っているのは「うる星やつら」、記憶を失ったラムが面堂に軟禁され、あたるが奪還するべく面堂家私設軍隊と闘う場面で「
卒業 」のラストをバロっている。
晴雨堂スタンダード評価 ☆☆☆☆ 優 晴雨堂マニアック評価 ☆☆☆☆☆ 金字塔 【受賞】 アカデミー賞(監督賞)(1968年) ゴールデン・グローブ(作品賞(コメディ/ミュージカル))(1967年) NY批評家協会賞(監督賞)(1967年)
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思春期の思い出。 これも日本のどこかで時々上映される不朽の名作である。私が小中学生の頃はしばしばTVでも放送されていた。今でもローカル局の深夜枠で放映されているだろう。
初めて観たのは中学生になって間もない頃だったと思う。まだ12歳か13歳だった。当時のTVは60年代に流行った音楽や映画をよく流していて、作中の主題歌や挿入歌を担当したサイモンとガーファンクルの楽曲もCMに使われていたような記憶がある。現在(2011年)は80年代に流行った歌がCMのBGMに採用される事が多いが、それと似たような現象だろう。(余談1)
この作品、もし大人になってから観たら、あるいはすっかり中年になってから観たら、たぶん作品に感情移入することはあまりなく、演じる
ダスティン・ホフマン 氏の学生にしては少し老けた顔(余談2)を観ながら「こいつ、母娘2人とも食うつもりか。ええのう」なんて下卑たる印象を持つだろう。
または、ベンがエレンの結婚式に乱入して強引に駆け落ちしてバスに乗り込むラストの2人を観ながら、あの幸せそうなベンの父親たちはこの後どんな制裁が待ち受けているのだろう? お馬鹿な息子を持ったために、せっかくの円満な家庭が無茶苦茶、気の毒に。そんな事を思う。
あるいは、激化するベトナム戦争と反戦運動の学生たちの存在など、作中の台詞や風景から社会背景を考察したかもしれない。
思春期の頃にこの作品に出会えて良かった。素直に主人公へ感情移入できた。歳上の女性ロビンソン夫人への憧れ、夢のような熟女との「親交」。最初は親の勧めから義務で夫人の娘エレンとデート、歳上の女性と付き合っていたためただの女の子にしか見えなかったエレンの瞳から涙が、それを見て急速に彼女がいとおしくなるベン。
母親との関係が発覚して遠ざかるエレン、それを追いかけるベン。そういえばあの頃の私も偶然を装って好きだった女の子の後を追いかけた。下校する時間を合わせたり、信号待ちのところで遭うように調整したり。
ラストの有名な教会の場面(余談3)、お互いの名前を絶叫しあうベンとエレン、汗だくのベンは結婚式に乱入するや花嫁衣裳のエレンをさらい、新郎やエレンの親族たちをなぎ倒し、玄関ドアを十字架で閂して走り去る。
2人は笑顔で疾走しバスに乗り込み後部座席で並んで座る。呼吸が落ち着くにしたがい笑顔が消えていき放心状態へ、そして暗い無表情へ。ハッピーエンドのようでハッピーエンドとは言い難い終わり方に、観ている中学生の私も途方にくれてしまった。
(余談1)今は80年代に青春を過ごした人がディレクターとしてCM制作をしている事が多いが、当時は60年代に青春を過ごした人が中核になっていた。
なんのCMか忘れたが「Scarborough Fair」のメロディを少しアレンジしたBGMのCMがあった。ヨーロッパの古い民謡か賛美歌のような音色が頭から離れなくなった。「
卒業 」を観たとき、あの歌や!と何か探していたものが何年ぶりかで見つかったような感動だった。
物語の中盤、ベンがエレンに懸想して追い掛け回す場面に使われていた。切ない雰囲気と歌がよくマッチしている。「She once was a true love of mine.」「Then she'll be a true love of mine.」の歌詞が妙に物悲しく思春期の私の心に響いた。
結局、小遣を貯めてサントラ版LPを買ってしまった。レコードジャケットは、ストッキングを履いたロビンソン夫人の脹脛を手前に主人公が物憂げに立っている場面が使われている。今もCDで売られているかな?
「Scarborough Fair」はもともと吟遊詩人の民謡みたいなもので、女にすてられた男の未練がましい歌のようだが、サイモンとガーファンクルの詠唱バージョンは、まるで死地へ旅たつ兵士が恋人への伝言を善意の第三者に伝えているような響きがある。この点は、まさにベトナム戦争の時代を象徴している。
(余談2)この時、
ダスティン・ホフマン 氏は30歳だったと思う。
(余談3)CMやドラマでさんざんパロディにされているシーンである。私が印象に残っているのは「うる星やつら」、記憶を失ったラムが面堂に軟禁され、あたるが奪還するべく面堂家私設軍隊と闘う場面で「
卒業 」のラストをバロっている。
晴雨堂スタンダード評価 ☆☆☆☆ 優 晴雨堂マニアック評価 ☆☆☆☆☆ 金字塔 【受賞】 アカデミー賞(監督賞)(1968年) ゴールデン・グローブ(作品賞(コメディ/ミュージカル))(1967年) NY批評家協会賞(監督賞)(1967年)
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