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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「写楽」 カップルで考えよう〔10〕 

写楽」 
謎の絵師写楽

 

  
【原題】
【公開年】1995年  【制作国】日本国  【時間】138分
【企画】フランキー堺  
【監督】篠田正浩
【原作】皆川博子
【音楽】武満徹
【脚本】皆川博子 堺正俊 片倉美登 篠田正浩
【言語】日本語  
【出演】真田広之(とんぼ(齋藤十郎兵衛東洲齋寫樂))  フランキー堺(蔦屋重三郎)  岩下志麻(おかん)  葉月里緒菜(花里)  佐野史郎(喜多川歌麿)  坂東八十助[5代目](松平定信)  中村富士郎(市川團十郎)  加藤治子(おふじ)  新橋耐子(おさと)  中村芝雀[7代目](岩井半四郎)  市川團蔵[9代目](市川男女蔵)  宮崎ますみ(玉衣)  竹中直人(太田南畝)  河原崎長一郎(山東京伝)  津村鷹志(大番頭与兵衛)  篠井英介(瀬川富三郎)  有川博(鶴屋喜右衛門)  土屋久美子(年増女郎)  富沢亜古(番頭新造)  大川浩樹(左吉)  千葉哲也(権助)  浜村純(老人客)  余貴美子(とんぼの母親)  六平直政(俵蔵(鶴屋南北))  高場隆義(倉蔵(瀧澤馬琴))
   
【成分】悲しい ファンタジー ゴージャス 切ない 時代劇 浮世絵 写楽 寛政 1790年代 江戸時代 江戸
                             
【特徴】近年、写楽の正体は能楽師齋藤十郎兵衛であることがほぼ確実視されているが、本作は役名こそ十郎兵衛を用いているが、アクション俳優時代の真田広之氏を主役に据えているためか軽業師あがりとしている。
 写楽ファンのフランキー堺氏の肝煎り企画であり、自らも写楽をサポートした版元蔦屋重三郎に扮する。しかし残念ながら主演の真田広之氏と葉月里緒菜氏のスキャンダルのほうが有名になってしまった。 
    
【効能】江戸の鮮やかな色彩美に心が豊かになる。
 
【副作用】チャンバラの無い時代劇でパッとしない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
内容より主演俳優たちのスキャンダルが有名。
  
 こないだ、NHKスペシャル「浮世絵ミステリー 写楽〜天才絵師の正体を追う」を観た。近年、ギリシアで発見された写楽の肉筆扇絵によって、筆の使いの癖や当時上演されていた歌舞伎演目資料や写楽が江戸に住んでいた頃の町割り図など様々なデータから、能役者斎藤十郎兵衛にほぼ間違いないという見解だった。(余談1)
 
 この番組を観ながら本作を思い出した。制作された当時はまだギリシアの扇絵は発見されていない。斎藤十郎兵衛説は明確に文献に残っていて江戸時代後期からあるが、能役者で侍があんなに上手く描けない、という思い込みから、版元の蔦屋が描いていたのか、あるいは同時代に活躍した歌麿か、といった具合に諸説乱れた。
 結局は素直に斎藤十郎兵衛説が確実視されつつあるが、本作はいずれの説もとっていない。

 本作の主人公写楽は本名を「十郎兵衛」と名乗っているので、斎藤十郎兵衛説をとっていると勘違いする友人がいたが、あくまで文献に敬意を表して「十郎兵衛」の名前だけ借用し、他は完全に制作人たちのフィクション世界だ。実際の斎藤十郎兵衛は帯刀した侍だが、本作のは役者崩れの大道芸人である。
 謎の人物である事を良いことに「写楽こと十郎兵衛」というキャラを制作人たちの「趣味」で作り上げた限りなく架空に近い人物に仕立て上げている。写楽を研究し空想を織り交ぜ「正体に迫る歴史ドラマ」にしたのではなく、真っ赤なフィクションである。
 
 真っ赤なフィクションに異議は無いのだが、しかし物語の展開が気に入らない。何が気に入らないのかというと、現代人が思い描く典型的な江戸時代なので白けるからだ。歴史ドラマという限りは、カーク・ダグラスの「炎の人ゴッホ」やチャールトン・ヘストンの「華麗なる激情」(余談2)のような迫力が欲しいのだが、全体にショボイ。チャンバラの無いただの豪華時代劇だ。途中の愛憎劇も観る前から予測できるので腹が立つ。
 
 篠田正浩監督の「鑓の権三」や「少年時代」は好きなのだが、この「写楽」と「スパイ・ゾルゲ」は何をしたかったのか解らない。登場人物に愛情が感じられない、単に爛熟の寛政年間やモダンな昭和初年の風景を描きたかっただけではないのか?
 監督の趣味に付き合わされたようで不愉快だった。重要な蔦屋を演じたフランキー堺氏は写楽研究家でもある。本当にこれで良かったのか?
 
(余談1)浮世絵と縁の深い歌舞伎業界から役者の中村獅童氏がナレーションを担当した他、番組中の挿入再現劇では斎藤十郎兵衛に扮し、同じ役者として感じられる斎藤十郎兵衛の心理を分析されていた。
 能の厳しい社会で生涯を日陰の役割しか与えられない十郎兵衛は、浮世絵に表現の道を切り開こうと、身分や素性を隠し「写楽」として画壇に登場した、という。
 
 この番組でも解説されていたが、能は侍の伝統文化ゆえ役者は士分である。十郎兵衛に名字があるのはそのためだ。
 侍というのは士農工商の上位である「士」の権威を守らなければならないので、建前上「副業」は持てない。特に浮世絵師は下衆な大衆文化の担い手と思われ、しばしば幕府が打ち出す倹約令や風紀取締の標的に利用され不当な弾圧を受けてきた。したがって法度に抵触する関係から写楽は謎の絵師ということにしておかなければならなかった。
 
 現代に例えれば、副業を原則持てない公務員が隠れて商売をする行為に該当する。具体的に顰蹙度合いが近いのをいえば、役所の青少年企画課職員が副業でポルノ写真家やAV監督をするようなもの。
 
(余談2)「華麗なる激情」はミケランジェロの物語。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作

 

 
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