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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「にがい米」 カップルで考えよう〔12〕 

にがい米」 
イタリアの稲作女子。

 

    
【原題】RISO AMARO
【公開年】1948年  【制作国】伊太利  【時間】109分  
【監督】ジュゼッペ・デ・サンティス
【原案】ジュゼッペ・デ・サンティス カルロ・リッツァーニ ジャンニ・プッチーニ
【音楽】アルマンド・トロヴァヨーリ ゴッフレード・ペトラッシ
【脚本】コッラード・アルヴァーロ ジュゼッペ・デ・サンティス カルロ・リッツァーニ カルロ・ムッソ イヴォ・ペリッリ ジャンニ・プッチーニ
【言語】イタリア語      
【出演】ヴィットリオ・ガスマン(ウォルター)  ラフ・ヴァローネ(マルコ)  シルヴァーナ・マンガーノ(シルヴァーナ)  ドリス・ダウリング(フランチェスカ)
   
【成分】楽しい 悲しい 切ない セクシー 農村 水田 イタリア 1940年代 イタリア語

【特徴】イタリアの貧しい農村で繰り広げられる社会の底辺を這う若い男女の悲劇。
 社会派ドラマと評価されているが、1940年代のイタリア農村地帯の風俗が記録された貴重映像でもある。特に東アジア人にとってヨーロッパの女性たちが水田で稲作をする光景は一種のカルチャーショックだ。
 イタリアではポー川流域の平野部で水田耕作が行われており女性たちが田植えに従事していたが、日本と同じく70年代に農薬の普及と機械化で映画のような生活は廃れる。 
    
【効能】水田に不釣合いなナイスボディの美女がいるので、良い意味のカルチャーショックを起こして萌え。
 
【副作用】とにかく映像も話も暗いので気持ちが沈む。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
当時の風俗を伝える一級資料。
 
 古い映画である。1948年公開というから、まだ第二次大戦が終わって間が無い。イタリア映画史に残る名作なので、デジタルリマスター版も出ているかもしれないが、私が観たのは学生の頃なのでデジタル技術の黎明期、だから画質が劣化した白黒映画を見た。(余談1)
 話自体もイタリア社会の底辺が舞台であり、ヒロインは悲劇に突き進むので、ただでさえ暗い白黒画面がより暗くなる。

 冒頭はドキュメンタリー風、田植えに向かう女性たちの行列をニュース映像のように描写、アナウンサーらしき背広の男性が「米作りといえば中国を連想しますが、実はわがイタリアでもポー川流域で行われており・・」といった実況を伝える。
 たしかに水田が広がっている。そこで農作業をしているのが、白人女性というのが妙に違和感を抱いたのを覚えている。彼女たち稲作女子は年輩の人や瑞々しい若さのギャルもいて、年齢層はバラバラ。その中にひときわグラマーでナイスボディーのヒロインがいる。シルヴァーナ・マンガーノ氏演じるヒロインだ。

にがい米.jpg
ううむ・・、田植えに不釣合いなキャラ。

 この作品は彼女の存在感でもっているといっても過言ではない。彼女がいなければ、本作は過酷な農作業を行う女性たちのドキュメント映像、むかしNHKが放送していた「明るい農村」か、岩波が大昔に出していた写真冊子「新風土記」みたいに終わってしまう。(余談2)

 彼女の存在をどう例えたらいいだろう? 同時代の邦画に黒澤明監督の「わが青春に悔なし」がある。その作品で清楚なイメージの原節子氏が汗と泥にまみれて畑仕事をする場面があるが、まったく違和感を感じなかった。もともと原節子氏は骨太安産型の日本美女だったから。
 ところがシルヴァーナ・マンガーノ氏の強烈加減は、強いて例えれば農家のお婆さんたちが田植えをしている中に混じって、叶姉妹や青田典子や杉本彩ら諸氏がバストがピチピチのTシャツに美尻くっきりのショートパンツで汗と泥にまみれて農作業しているような感じである。

にがい米2.jpg
日本では強い紫外線を避けるためと寄生虫の予防から肌の露出は避けるのだが・・。
しかし明治以前の日本も半裸状態で稲作やってたから、こんなもんかな。


 お尋ね者のギャングのカップルが、田植え女子の行列に紛れて身を隠す。情婦は農村の青年に乗り換えて更生の道へ、ところがヒロインはギャングの男の危険な香りに惹かれて転落する。そんな物語だったと思う。
 新東宝などのポルノ映画がよく題材にしていた展開だ。社会派との評価が高い本作なのだが、私は逆に日本ポルノの水準の高さを感じてしまう。

 おっと、誤解を招く言い方をしたが、本作はいたって真面目な社会派映画だ。

(余談1)私が学生時代をおくった80年代は、作成されて半世紀を迎えようとする書類やフィルムの劣化がけっこう社会問題になっていた。
 たとえば公文書の類は酸性紙を使っているので、通常の保管方法では紫外線にあたらないようにしても紙がボロボロになる。アメリカでは早くからマイクロフィルムにコピーして文書資産のバックアップが進められているが、日本では殆ど手付かずという話がニュースで流れていた。

 映画にしても、保管状況や使用頻度などでフィルムの表面皮膜に傷がついたり剥離したり。「戦艦ポチョムキン」なども今では鮮明でシャープな映像で甦っているが、当時の私が観たのは恐ろしく傷んで古い画像だった。
 21世紀の映画ファンのほうが、綺麗な古典を見ていると思う。

(余談2)岩波の「新風土記」は主に1950年代の日本全国各地の町や農村の風景や風俗などを描写した写真集である。80年代末に復刻版が出て、漫画家を目指す友人が当時の具体的な生活資料として購入していた。
 本作と関連ある記事に、農村に嫁いだ若い女性の写真があって、嫁いだばかりの綺麗な手と、農家の嫁として経験を積んだゴツイ手を並列して掲載してあった。
 
 NHKの「明るい農村」は、日本各地の農村を取材したドキュメント番組で、60年代から80年代まで続いた。

 「にがい米」の場合も、ありふれた転落ストーリーの背景には、実際に過酷な農村の女性たちの境遇がある。田植え仕事は女性の仕事とされていて、水田の周辺から掻き集められた女性たちが納屋のようなところで泊まりこみで仕事をする。もちろん低賃金だ。
 彼女たちを仕切るのはカポラール(伍長)と称する男性で、横柄な人もいた。そんな厳しい環境の中で、明るく農作業の歌を歌ったり、祭りの日には陽気にダンスをしたり。映画のヒロインのように、そんな閉塞3Kの外の世界を見たがる若い女性がいたり。

 日本と同じく1970年前後に農薬と機械化の普及で、映画のような田植え女子の群集は姿を消していく。
 そういう意味で「にがい米」は当時の風俗を伝える一級資料でもある。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 

 
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