FC2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」 アジア民族意識高揚作品〔1〕 

イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」 
ジョン・ローン氏が主人公だ。

 

 
【原題】YEAR OF THE DRAGON
【公開年】1985年  【制作国】亜米利加  【時間】134分  
【監督】マイケル・チミノ
【原作】ロバート・デイリー
【音楽】デヴィッド・マンスフィールド
【脚本】オリヴァー・ストーン マイケル・チミノ
【言語】イングランド語 中国語
【出演】ミッキー・ローク(スタンレイ・ホワイト警部)  ジョン・ローン(ジョン・タイ)  アリアーヌ(トレーシー)  ヴィクター・ウォン(ハリー・ヤン)  レナード・テルモ(アンジェロ・リッツォ)  レイ・バリー(ルイス・ビューコウスキ)  キャロライン・カヴァ(コニー・ホワイト)  エディ・ジョーンズ(ウィリアム・マッケンナ)  トニー・リップ(-)  デニス・ダン(-)  
             
【成分】・ゴージャス パニック 勇敢 切ない ギャング 中国系 80年代
            
【特徴】チャイニーズマフィアに焦点をあてた問題作。在米華僑を中心に「民族差別」との批判がでた。
 ゴージャスなジョン・ローン氏と野卑なミッキー・ローク氏が織りなすハードボイルドアクション。敵役のジョン・ローン氏は本作で「ラストエンペラー」主演の座を掴む。
 
【効能】ジョン・ローンを主役に、ミッキー・ロークを悪役と解釈して観ればもっと楽しめる。
 
【副作用】アジア民族意識の強い人が観たら、ミッキー・ロークに対して激しい不快感と怒りを感じるかもしれない。(私がそうだった)
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
主人公スタンレイ・ホワイト警部が
どうしても天下の極悪人に見えてしまう。


 公開当時、たしか在米華僑団体が「民族差別映画だ」と抗議していたと思う。私も最初の印象は非常に悪いものだった。人権派の知人にいたっては、マイケル・チミノ監督をアメリカ人特有の差別主義者だと某雑誌で扱き下ろし、チミノ監督に抗議文を郵送していた。(余談1)
 
 公開から十数年が経過したとき、ビデオだったかTVだったか、再び観る機会があったが、面白いことに印象がガラリと変わっていた。どんな事象も自分の価値観や志向が変化することによって色合いが違って見える。
 この映画は娯楽作に社会背景を少し渋めスパイスとして加味した佳作といえよう。あくまでチミノ監督の「趣味」であって、政治的意図は無いと思ったほうがよさそうだ。
 
 不快感は相変わらず抱くのだが、少し冷静な気持ちで見れたせいかキャラ設定を観察することができ、実によくできた映画であることが判ったからだ。存在感のある悪役であり新興マフィアの若きボス役に相応しい俳優といえば、当時のハリウッドで評価急上昇の新進俳優ジョン・ローン氏であり、彼の魅力を引き出すに相応しい役柄である。やはり日本の芸能界と違ってハリウッドは悪役の地位が高くスターへのステップになるため、演技力の見せ所だ。
 一方、精神的に危うそうなキャラがよく似合うミッキー・ローク氏に相応しい役柄となれば、社会人として精神的にドロップアウトしたお騒がせ迷惑人間であり、キャラとしては悪役的なのだが物語では一応善玉の主人公をはる、つまり本作では新興マフィアに対して精神的疾患を背負った軍・警察関係者が該当し、当時はベトナム帰還兵が代名詞だ。(余談2)
 単純明快のステレオタイプであるが、よく計算され適切なキャスティングと演出だったのではないかと思う。
  
 ミッキー・ローク氏は見ていて非常にムカつく自己中心的で独善的で大勢の人を災難に巻き込んでいるのに自分の過失責任は認めず全て敵役ジョン・ローン氏のせいにする嫌な奴(余談3)を演じていた。新興マフィア総帥のジョン・ローン氏の冷徹かつ計算高そうな表情の裏に、意外にも東アジアならではの脆弱な基盤が滲む描写は見事ではあった。中国語台詞を用いたことも好感が持てる。
 しかし、アジア人である私の目には些か不公平な描写が気になった。如何にマフィアの若きボスでも、かりにも幾つもの組織を傘下に置く大親分だ。ミッキー・ローク氏ごときゴロツキ刑事に鼻を折られるわけが無い。お庭番の如く四方からボディーガードがやってきてつまみ出されるはずだ。
 私が監督なら、ラストは満身創痍のミッキー・ローク氏と涼しい顔のジョン・ローン氏の対決にする。
  
(余談1)やはり、アジア人を悪玉・アメリカ人を善玉に描き、しかもベトナム人民を殺した「加害者」をさも暗い過去を背負った「被害者」であるかのように描いているところが、知人のジャーナリストには腹にすえかねる事だった。

(余談2)ミッキー・ローク氏扮する白髪の刑事の役職は「キャプテン」、字幕では「署長」になっていた。アメリカの警察組織はよく知らないのだが、普通「キャプテン」は「警部」だったはずだ。→(【追記】へ)

(余談3)いかにも悪い意味でアメリカ人的性格だ。もしこのキャラをアメリカ人には「良い人」に見てしまうのであれば、恐いな。アメリカが世界中から憧れると同時に嫌われる象徴みたいなキャラだ。ブッシュが大統領になるのは無理からぬことだろう。

【追記】2015年12月22日追記。巡査部長はサージェント、警部補はルタナン、警部はキャプテンといった具合に対応しているのは間違いではないが、日本の警察組織における階級とその役割とアメリカのそれとはかなり違うようだ。またアメリカは州によっても異なる。
 日本では一般の市町村の警察署では巡査部長に主任か係長、警部補には係長、警部には課長をやらせ、署長には警部よりも上席の警視か警視正が務めるが、アメリカではかなり様子が違って、警部補や警部の役割は日本の警部補や警部よりもはるかに重い。そのため、確かに主人公の階級名はそのまま日本語に訳すと警部になるのだが、警察署長を務める階級でもあるようだ。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
晴雨堂関連作品案内
ラストエンペラー [DVD] ベルナルド・ベルトルッチ
モダーンズ [DVD] アラン・ルドルフ
チャイナ・シャドー [VHS] 柳町光男
 
晴雨堂関連処方箋案内
社会を冷笑したい時に 9 「キングコング」
美術鑑賞映画 3 「ラストエンペラー」




 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL
http://seiudomichael.blog103.fc2.com/tb.php/206-651b1c62

今や復活を遂げたミッキー・ロークの、若かりし頃の代表作。同時に共演の ジョン・ローンの出世作でもあります。 ミッキーはこの映画の次にあの、ソフトなSM映画として話題になった「ナイン ハーフ」...
[2011/01/11 20:19] 部下Aより愛をこめて
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
107位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
51位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク