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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「コリン LOVE OF THE DEAD」 孤独を楽しむ時に〔52〕 

コリン LOVE OF THE DEAD」 
制作費6千円?!驚異的低予算秀作!

 

       
【原題】COLIN
【公開年】2008年  【制作国】英吉利  【時間】97分  
【監督】マーク・プライス
【原作】
【音楽】ジャック・エルフィック ダン・ウィークス
【脚本】マーク・プライス
【言語】イングランド語      
【出演】アラステア・カートンコリン)  デイジー・エイトケンス(リンダ(コリンの姉))  リアンヌ・ペイメン(ローラ)  ケイト・オルダマン(-)
   
【成分】悲しい パニック 不気味 恐怖 絶望的 切ない ゾンビ イングランド ロンドンおよび近郊 
 
【特徴】日本円で僅か6千円という驚異的制作費の安さで完成させたゾンビ映画。低予算の要素を省いても作品の完成度はかなり高い。ラストは、観る人によっては驚きと感涙をさそう。
 
 晴雨堂はこれをホラー映画のカテゴリーには入れない。私見だが、ゾンビ映画はもはやホラー映画の中の類別ではなく、ホラーから独立したジャンルだと思っている。かつて若き日本の映画人が下積みをポルノ映画制作で費やしたのと同様に、世界中の若い映画人はゾンビ映画を安い制作費でつくっている。だからDVD化されて日本に入ってくる作品だけでも毎年かなりの本数だ。その中でもこの「コリン」は異彩を放っている。
 私はゾンビ映画の硬派文藝作と思っている。 
    
【効能】深夜に観ると孤独と静けさを楽しめる。家族・恋人・友人知人との絆について再考するきっかけになる。
 
【副作用】いたずらに平板な展開で退屈、睡眠導入剤になる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ゾンビ映画の文藝的傑作。
 
 前評判では、ロメロ監督の流れを汲む正統ゾンビ映画、日本円で僅か6千円弱で制作した映画、とあった。
 前者は理解できる。近頃、知能のあるゾンビや超人的運動能力を誇るゾンビなどが登場するが、もはやそれは動く死体ではなく別の生き物だと私は考える。ロメロ監督も同見解のようで嬉しい。本作はそのロメロ流のゾンビなのだろう。
 ただ後者は納得できない。高校生の頃に友達の8ミリ映画制作(余談1)を手伝った事があるが、1人6千円出資なら解る。総制作費6千円弱は不可能と思った。そして本作を観て完成度の高さにますます疑問をもった。まともに制作したのでは6千円で済ますのは不可能な内容だ。
 
 監督が制作から脚本・撮影・編集・音響と兼任するだけでは足らない。当然、主演俳優以下出演者は無償ボランティアでなければならないし、メイクや衣装も出演者全員各自自前自腹で行わなければならない。問題はエキストラや撮影場所をどうやって確保したかだ。
 考えられるのは、無償を条件にインターネットで呼びかける事か。それでもエキストラや出演者たちはボランティアとは思えない玄人肌の演技を魅せている。6千円弱が事実なら、英国は映画制作に理解のある社会といわざるを得ない。
 この制作システムは今後低予算映画制作のビジネスモデルになるだろうか?

 
 さて、本作にはいわゆるB級以下映画にみられるような稚拙な場面は無い。少なくとも、私には感じられなかった。脚本や物語構成もシッカリしていて、B級以下映画にありがちな拍子抜け場面や陳腐な場面は無かった。6千円弱で撮影したなんて売り込まなくても、立派に作品内容だけで勝負できる充実度を誇っていると私は思う。
 
 冒頭、汗だくの主人公コリンがある家に入る。手には血まみれの金鎚。外では胡麻を炒るような銃撃の音が鳴り響く。余計な前振り無く、いきなりゾンビが支配する世界であることを暗示。コリンは上着を脱いで武器の金鎚や手を洗う。しかし右腕をゾンビに噛まれたのか、傷口は腐敗したように変色しタールのような黒い血が出ていた。
 そこへゾンビ化した友人が襲い掛かる。辛くも倒したが、ゾンビになると生前の記憶の殆どが消えてしまう事がこの格闘で判る。喜怒哀楽が消えて、生物の基礎本能である食欲だけが異常に支配するのだ。
 コリンはその家に潜むが、顔面が青白くなり猛烈な寒さが襲う。やがて彼は無表情になって立ち上がる。顔は蒼白で汗が引いて乾燥している。彼はゾンビになってしまった。

 ゾンビになったコリンはゾンビ発生で騒然となった町を歩く。ゾンビなのでゾンビから襲われることは無い。しかし生きている人間からは襲われる。追剥に着ている物を盗られかける。ゾンビ狩りに狙われる。かつての親族に拉致され拘束される。
 そういった波乱を経て、コリンは一見あても無く彷徨しているようで、何か漠然とした目的を持っていることが次第に明らかになる。そのヒントとなるのが、節目節目に出てくる。道路標識であったり、ウォークマンであったり、ベージュのノースリーブの若い女性であったり。
 ラストでコリンの脳裏に焼きついた生前の記憶が明らかになる。観る人によっては恋人への愛と解釈するかもしれない。しかし、私は単純にゾンビになる直前の強烈な記憶だったから、それがゾンビ化した後も残照として残っているだけと思っている。冷たく突き放すような話で申し訳ないが。

 ラストのコリンの姿は、虚無と孤独だ。
 
 
 過去にゾンビが主人公の映画が無かったわけではない。古くはフランケンシュタインがゾンビ映画の元祖といえなくもないだろう。近年では「ゾンビコップ」「バタリアン」「ラストハザード」などがあるが、いずれも生前の記憶や人格が完璧に残っているので、脚本に工夫を凝らす必要は無く通常通り物語を組み立てれば良かった。
 今回の場合は、ロメロ流ゾンビなので人格は崩壊している。台詞は殆ど無い。町の情景描写はゾンビとなったコリンの視点が中心なので、下手をすれば単調な展開になってしまうし、実際に観る人によっては退屈に思えるだろう。
 コリンの姉が見つけて家族らで協力して確保し、なんとか生前の記憶を呼び覚まそうとするが無駄だった。姉の顔も母親の顔も判らない。家族の台詞は少ないが、ゾンビとなったコリンの目線を介して家族の苦悩がよく描写されていた。見事だ。
 
 
(余談1)15分の短編戦争映画。参加者は私も含め8人、たしか少なくとも一口3千円以上は出資したと思う。総制作費は2万5千から3万くらいだった。
 軍服は高校の制服をアレンジ。私は冷やかし程度の参加だったので、スタッフたちにかなり迷惑をかけたはずだが、助演男優のかなり美味しいポジションをやらせてもらった。
 


晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 

 
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何と総製作費約5800円という低予算ぶりは、スタッフ・キャストを監督自らは当然の事ながら有志によるボランティアで賄った結果。監督、製作、脚本、撮影、編集をマーク・プライス一人で賄っている。世紀末の世界でゾンビと化してしまった青年が恋人のアパートを目指す...
[2012/01/29 22:37] LOVE Cinemas 調布
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