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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「コクリコ坂から」 青春回帰〔48〕 

コクリコ坂から」 
宮崎吾朗監督作第2弾。




【原題】
【公開年】2011年  【制作国】日本国  【時間】95分  
【監督】宮崎吾朗
【原作】高橋千鶴 佐山哲郎
【音楽】武部聡志
【脚本】宮崎駿 丹羽圭子
【言語】日本語       
【出演】長澤まさみ(松崎海)  岡田准一(風間俊)  竹下景子(松崎花)  石田ゆり子(北斗美樹)  風吹ジュン(松崎良子)  内藤剛志(小野寺善雄)  風間俊介(水沼史郎)  大森南朋(風間明雄)  香川照之(徳丸理事長)

【成分】泣ける ロマンチック 切ない 1963年 日本 横浜

【特徴】「ゲド戦記」以来の宮崎吾朗監督作品。ファンタジー路線だったジブリ作品には珍しく現実舞台の青春ドラマ、高度経済成長期の昭和30年代後半、横浜を舞台に高校生の淡い恋愛と友情を描く。

 原作は1980年発表の少女漫画、当時の少女漫画界の流行を反映してか、コクリコ(ひなげし)やメル(フランス語の海をあらわすラ・メールから)など、おフランス用語が並ぶ? 因みに本作で登場するカルチャラタンの本来の意味はパリの学生街。
 原作漫画では主に1970年代後半が舞台となっているようだが、本作では時代設定を10年以上前にずらしている。また原作は制服廃止運動が軸になっているが、本作は学内施設カルチェラタンの保存運動へとすり替わっている。 

【効能】青春時代の淡いトキメキガ甦る。

【副作用】現実離れした青春物語に違和感。上を向いて歩く気になれない。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
吾朗君、よく頑張った。作品はイマイチだ。

 レビュータイトルで宮崎吾朗監督を君付けしたのは、別に監督が私より歳下だからではなく、また上から目線で言ったのでもない。ほぼ同世代の人間として漫画アニメに親しみ、子供の頃から宮崎駿監督が手掛けた作品を観てきた者としての共感と敬意を込めたエールだ。

 私が吾朗監督の立場なら、誰がなんと言おうと絶対に親の後は継がない。自分はアニメ作家ではなく建築設計士が本業だと言い張る。作品制作の現場には断固として足を踏み入れん。ところが吾朗監督は敢えて親の七光りと揶揄される茨の道を進んだ、その勇気は讃えよう。
 また、父駿氏やベテラン作監のサポートを受けたとはいえ、2作目でこの水準のアニメ映画なら、アニメ作家として無能ではない。見渡せばもっとヒドイ作家や作品は多い、酷評をよく聞くがそれは錯覚と偏見からくる不当評価だろう。

 さて、作品評価だが、あくまで私の好みでいえば気に入らない。物語自体は好きな部類である。私は昭和41年生まれだが、幼児期に残る記憶と共通する部分があるし、ヒロインと同世代である吉永小百合氏の映画もよく観たから、不快感は無かった。
 また学生運動の要素があるとの前評判から、ステレオタイプにするなよ、と警戒したが杞憂だった。単に古い施設の取り壊し問題で生徒が異議をあげている程度のもの、あの程度のことは学生運動の残り火すら消えた80年代前半の高校生である私も目撃した。

 だからこそだが、カルチェラタンを舞台にした物語に思い切って改編しても良かった。どうせ原作どおりに映画化はできないのだから。
 タイトルも「コクリコ坂から」ではなく「カルチェラタンの窓から」で良いような気がする。学園内にある梁山泊のような存在、そこに集う一芸に秀でた個性的生徒たち。そこを舞台に、生徒と理事長との緊張感溢れる駆け引きを上手く表現した物語なら、私は絶賛した。
 青春モノというと、日本ではスポ根とか恋愛、さもなくば喧嘩や暴走族などに偏り気味で、生徒が団結して教師と交渉する絵が無さ過ぎる。そんな物語は左翼的などと眉を顰める方々も多いが、それをいったら喧嘩やスポ根なんて右翼や暴力団に通ずるものという解釈が成り立ってしまうではないか。

 原作はパラパラとめくった程度で大昔のこと、事実上原作のことは知らない。「コクリコ」とかヒロインの愛称「メル」にどんな意味合いがあるのかも知らないし、物語上で重要な位置を占めているとは思えない。フランス語由来でコクリコは雛罌粟、メルは「海」からきた名前、当時の少女漫画はおフランスを意識したモノが多いので、ただのお洒落だろう。

 街並みの風景は、地元の人には違和感があるかもしれないが私は満足している。当時の生活風景もさり気なく出て良かった。まだ少女のヒロインが当たり前のように割烹着を着て炊事をする場面は懐かしい。(余談1)
 また微かに戦争の匂いが漂うのも正解である。私の父は戦後補償の事業で外地へ単身赴任し、長い間家を留守にしていたため父の顔を忘れたほどだった。「コクリコ・・」の雰囲気は悪くない。

 制作の楽屋裏を取材したNHKの番組で、吾朗監督は陰気で無表情のヒロインしか描けず、駿氏はクレームを付け叱咤していた。結局、吾朗監督は何かにこだわり続けたようだ。
 しかし陰気な主人公しか描けないようでは、「人間失格」に傾倒し始める中高生の文学少年レベルではないのか? 世間というものを狭く認識しているような気がする。

 それからファンタジー路線は当分やらないと自ら発言した吾朗監督、しかし本作のヒロインは特異な存在である。海外渡航自由化直前の時期なので、外地に行った母を持つヒロインは世間一般の平均的女子高生とはかけ離れている。
 本当に発言通りなら、もっと平凡な人間を主役にすべきだ。当時であれば、高校に行かず就職した者も少なくなかった。現に私にはヒロインと同世代で中卒の身内がいる。そんな人たちを何故主役にできないのだ? ファンタジーではないが、主人公への感情移入を妨げる要素だ。

(余談1)子供の頃、私は郷里に住んでいた。そこは都会より20年ずれたようなところなので、都会の団塊世代と幼児体験が共通する部分もある。
 今では1人で和服を着れない者が殆どだろうが、当時は気楽に当たり前に着ていた。割烹着姿のご婦人や少女も普通にいた。女の子は小学校高学年ぐらいになると、炊事の手伝いは当たり前だった。男は仕事から帰ると窮屈な洋服を脱いで丹前に兵児帯に着替えたものだ。
 また、都会では魚は最初から切身で売るか魚屋が捌いてくれるが、当時の郷里は良い意味で不親切、だから父も母も魚は自分で捌ける。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作


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コクリコ坂から (単行本コミックス) 高橋千鶴
ジ・アート・オブ コクリコ坂から(ジ・アート) スタジオジブリ


 
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[ 2012/02/18 13:21 ] 映画・・青春回帰 | TB(0) | CM(0)
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