晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋
 晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。  体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。

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晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 映画好き・猫好き・ドイツビール好きです。よく晴れた爽やかな日はマウンテンバイクでサイクリングをしながら風景や野良猫を撮影します。
 リタイア後は田舎に帰り、晴天は畑仕事や庭いじり、雨天は読書や映画鑑賞の文字通り耕晴雨読の日々をおくるのが夢です。
 お金があれば郷里に「晴雨堂オタク記念館」を設立して地元の文化交流の発信基地にしたい、連れ合いは怒るだろうが。館長に任命してやるといったら言下に断られた。
 
 ブログを始めたのは2007年5月から、本格的に参考書に目を通しながら運営を始めたのは同年11月から、操作方法で度々ミスがあると思いますがご容赦のほど願います。
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2007年10月29日設置

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「スターリングラード」-
【2008/04/07 19:26】 映画・・独りで考え事をしたい気分に
元祖「スターリングラード」


 

 ジュード=ロウ氏主演の「スターリングラード」の陰にすっかり隠れてしまった感のある作品だが、これは邦題のせいである。(余談1)実はこの作品こそ原題も邦題も「スターリングラード」であり、ジュード=ロウ氏の作品より7年前に公開された大作である。
 
 この作品は東西ドイツが統一した直後に制作された記念すべき戦争映画であり、ドイツ人にとって大きなトラウマでもあるスターリングラードの激戦を描いている。主演は「戦場のピアニスト」「キング・コング」などで活躍めざましいハリウッド俳優のトーマス=クレッチマン氏。彼にとっては初めて手がける大作である。政治的には東ドイツの水泳選手だったクレッチマン氏を主役に起用することは東西ドイツ統一の象徴ともいえるだろう。
 
 作品内容は、ジュード=ロウ氏の「スターリングラード」はハリウッド仕様で使用言語は英語、明確なヒーローと敵役があり、ヒロインとのラブロマンスあり、最後は観客が納得できるハッピーエンドだ。もちろん、この作品をけなすつもりは無く社会派的要素と娯楽要素のバランスが取れた秀作だと思う。
 一方、この「スターリングラード」には娯楽性は乏しい。戦争映画の秀作は多くが群集劇として優れているが、この作品も主人公はいるが強いヒーローは存在しておらず優れた群集劇だ。スターリングラードでの市街戦をリアルに描写しており、ハリウッド映画にありがちな勝ってメデタシの内容ではない。明らかな反戦映画である。
 
 クレッチマン氏は主人公フォン=ウィッツラント少尉に扮する。当時は既に30歳になっていたと思うが、現在のような渋い貫禄は無く、髭の剃りあとが目立たない白面の学生のような顔だった。役柄もそれに相応しく、騎士道精神溢れるユンカー出の坊ちゃんで新米少尉だった。(余談2)
 新米少尉とはいえ、エリート風を吹かすキャラではなく、生真面目な将校を演じていた。勇敢な戦い方と臨機応変の判断力と部下思いの姿勢に部下たちも信頼を寄せるようになる。しかしあまりに部下思いだったのが仇となり、野戦病院で医者を脅迫したことで懲罰部隊に送られた辺りから転落の人生となる。
 一面白い雪原の極寒でジリ貧となる部隊、少尉にとっては堪えがたい残虐行為の連続に、ついに友人同然の信頼関係になった部下らと脱走を決意する。ラストは何の希望も無い重苦しいものであった。これは死闘を切り抜けて無事に母港に帰り着いた潜水艦が連合軍の空襲で沈没し艦長たちが死んでいく「Uボート」に共通するパターンある。
 好戦的で戦争を楽観的に描写しがちなハリウッドでは制作できない作品であろう。DVD化されていないのが残念である。ビデオでは出ているので、老舗レンタル屋か中古ビデオショップにあるかもしれない。
 
 冒頭はロシアの厳しい極寒での戦いを暗示するかのように、イタリアの暑い海水浴場で兵士たちが休暇を楽しむ光景から始まる。オーソドックスな演出だが説得力は抜群である。
  
(余談1)何故ならジュード=ロウ氏の「スターリングラード」の原題は「ENEMY AT THE GATES(門の敵)」であり、邦題的に表現すれば「前門の狙撃兵」か。
 
(余談2)ユンカーの事は詳しく知らないが、下級貴族で近代ドイツでは官僚や将校の担い手である。「八甲田山」でも見られるように、明治時代の日本でも士族は平民より優遇されていた。同様の構図を連想されたほうが良いだろう。ただし日本よりヨーロッパの身分格差は激しい。
 ナチスの良い点は身分の垣根を崩したことにあるが、凶暴なナチスの躍進に便乗してナチス的に行動する平民出の将校も少なくなく、その象徴が主人公と対立する野卑な上官(たぶん少佐)や、主人公の足を引っ張ったり、少佐?に取り入って昇進する下劣な若い兵士である。
 ときおり、少佐?から「もう特別扱いはしないぞ」という台詞が出てくるが、これは平民出の少佐がユンカー出身の少尉への妬みと対抗心を表しているのだろう。
 主人公が反抗行為をしたために懲罰部隊に落とされ、再び少尉に復帰するときに司令官(将軍)が親しげに没収した少尉肩章をわざわざ肩に付けてやる場面がある。他の兵には渡すだけなのに少尉には付けてやるのは、同じユンカー出の一種の仲間意識か。
 主人公の面倒を見る直属の上官(大尉)は若い頃の津川雅彦氏に似ている。

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

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