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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「アイアン・スカイ」 社会を冷笑したい時に〔39〕 

アイアン・スカイ」 
月面ナチスが地球侵略!

 


【原題】IRON SKY
【公開年】2012年  【制作国】芬蘭土 独逸 濠太剌利  【時間】93分  
【監督】ティモ・ヴオレンソラ
【原作】
【音楽】ライバッハ
【脚本】マイケル・カレスニコ ティモ・ヴオレンソラ
【言語】イングランド語 ドイツ語       
【出演】ユリア・ディーツェ(レナーテ・リヒター)  ゲッツ・オットー(クラウス・アドラー)  クリストファー・カービイ(ジェームズ・ワシントン)  ペータ・サージェント(ヴィヴィアン・ワグナー)  ステファニー・ポール(アメリカ合衆国大統領)  ティロ・プリュックナー(リヒター博士)  マイケル・カレン(-)  ウド・キア(ウォルフガング・コーツフライシュ総統)
      
【成分】笑える 楽しい スペクタクル 不思議 パニック セクシー かっこいい コミカル SF 宇宙戦争 ナチスドイツ 都市伝説
  
【特徴】ナチスドイツの残党が月に逃れて地球侵略の機会を覗っていた! そんな荒唐無稽な仰天設定の映画企画がヨーロッパで反響を呼び作品化されたドタバタB級映画である。

 ナチスの残党が月の裏側に巨大都市や巨大宇宙戦艦を建造していたトンデモ映像もさることながら、カルト的集団が月面都市という閉鎖された空間でガラパゴス的発展をしている様も興味深いが、主題はむしろ世界に強い影響を与えているアメリカ保守勢力をとことん茶化す風刺である。
 
 作中には随所に過去の世界的名作のパロディが織り込まれている。晴雨堂が映画館で笑ったのは、アメリカ大統領の選挙参謀が自分のオフィスで部下を叱責する様が「ヒトラー 最期の12日間」のパロディであった事。 
    
【効能】ヨーロッパ人が抱くアメリカの印象がよく判る。現代国際社会の滑稽さが学べる。
 
【副作用】ステレオタイプ的描写に当事者意識を持つ者は不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
女総統を期待してたのに・・残念。
 
 ナチスドイツの残党が月に逃れ70年後に宇宙艦隊を組織して地球侵略を展開する、荒唐無稽ぶっ飛び設定の映画企画がヨーロッパで大評判、私も日本公開をずっと待ち望んでいた。(余談1)
 
 今年に入ってチラシを入手、襟をセクシーに開けた黒の変形ナチ制服を着こなし不敵なサド趣味微笑を浮かべて偉そうに中央で立つ金髪美女を見て、これはきっと女総統が月面ナチ軍を率いて地球へ侵攻するのだと思った。
 傍らで宇宙服を着たアフリカ系アメリカ人と思われる男性が女総統と同じポーズで幸せそうに笑っている。これはきっとアメリカの宇宙飛行士が月面ナチ軍の捕虜となり、女総統の美貌に魅せられ、女総統自らの拷問でマゾ趣味に目覚め忠実な下僕になる。
 私は少しエッチなドタバタ痛快コメディ宇宙戦争を想像し期待していたのだが・・。

 そろそろ結論を言うと、私の中年スケベな期待は裏切られた。「女総統」と思った金髪美女は意外にもマトモな純情ヒロインだった。ただ、アフリカ系アメリカ人と恋仲になってしまうのは当たらずとも遠からずか。
 たしかにドタバタコメディの戦争スペクタクルではあったが、ヨーロッパ映画らしい国際社会への風刺が盛り沢山で、大笑いはしなかったが全体に楽しく鑑賞できた。この笑いのセンスは、ハリウッドには無い。ヨーロッパの立場だからこそ描ける現代社会への皮肉と冷笑だ。

 月面ナチスと戦うのはアメリカを中心とする国際社会だが、そのアメリカを率いるのは如何にも保守の共和党的女大統領。物語中盤でナチ思想に純粋培養されているヒロインが大統領と面会しナチ主張を披露する場面があるが、アメリカの保守と価値観にさほど差は無く、女大統領は反発どころか共鳴する。(余談2)
 また彼女の選挙参謀は野性味溢れる攻撃的女性で、自社に戻れば独裁者の如く部下を叱責、癇癪を爆発させる様が完全にブルーノ・ガンツ主演「ヒトラー 最期の12日間」のパロディ。

 ラストのオチはサラッと済ませているので判りづらく思う人もいるかもしれないが、月面ナチスを滅ぼしてハッピーエンド、という形にはならない。ナチスは一応滅びるが。簡単にいうと、アメリカをからかいまくった内容で私は制作陣に共感した。
 しかしながら、サド趣味のセクシー女総統の活躍、観たかった・・。

レナーテ 攻撃バージョン

 アメリカ合衆国大統領の前でナチスの理想を情熱的に述べるヒロイン。攻撃的な表情、白いブラウスのボタンを思いっきりはずして白い胸元を魅せつけるセクシースタイル。まさにサド趣味の女総統に見えて萌えだ。
 私はてっきり最初からこのスタイルでフリッツ・ヘルメットのドイツ軍団を率いて地球に上陸し、瞬く間にアメリカを占領、ホワイトハウスを接収し捕虜となった米大統領を前にナチス論理を強弁する様を想像していた。

レナーテ 教師バージョン

 一方、こちらはヒットラーユーゲント姿の子供たちを前に教壇に立つヒロイン。実は上記の攻撃的サド趣味のような金髪女性と同一人物である。作品冒頭ではこの生真面目スタイル。なぜ服装や化粧の仕方が激変したのかは観てのお楽しみ。
 襟には武装親衛隊中級指導者の階級章をつけている。普通の軍隊に例えたら大佐か准将に相当するので、このヒロインは若いのにけっこう偉いさんだ。

(余談1)しかし、月面ナチスの格好やアナログテクノロジーなど、首を傾げる場面多々あるが野暮は言うまい。アポロやソユーズも基本はナチスドイツの技術に毛の生えたレベルだからだ。
 それでも気になるのは、月の重力は地球の6分の1程度、そんな環境で70年だから年長者でさえも乳幼児の頃から月での生活になっている。ましてやヒロインたちは月で生まれ育った。地球に上陸したら骨格とか筋肉が耐えられないのでは?

(余談2)月面ナチは一種のカルト教団のようなもの。月で70年も生き続け独自発展した訳だから、ヒロインは純粋培養された貴種。あんな簡単に転向するだろうか? その点は「地球人」を研究する学者という設定で取り繕っているが、単に認識が改まるだけでなく、価値観が激変するのだからかなりの苦痛と葛藤を抱える。


 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作



 

 
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コレ映画秘宝の別冊で紹介記事読んだときからめっちゃ見たかったんですが、残念ながら徳島ではやんないんですよ。

やはりシネコン一軒の映画過疎地ではホントに見たいものにはなかなか当たりませんね・・・
[ 2012/10/04 21:16 ] [ 編集 ]
しろくろshow氏へ

 徳島は高知より都会だと思っていましたが、それでもシネコン一軒だけなんですね。
 
 高知はさらに映画過疎地で、有志の市民サークルが美術館や公民館を借りて上映会をやっています。が、この手のマニアックな映画はなかなか。

 私のブログへアクセスしてくる人は東京在住者が最も多い。その東京は至る所に映画館です。シネコンだけでなく、老舗の映画館やマニアックなミニシアターの類がたくさん。
 大金持ちだったら、採算度外視で郷里に30席くらいのB級専門のミニシアターを創りたいものです。 

> コレ映画秘宝の別冊で紹介記事読んだときからめっちゃ見たかったんですが、残念ながら徳島ではやんないんですよ。
>
> やはりシネコン一軒の映画過疎地ではホントに見たいものにはなかなか当たりませんね・・・
[ 2012/10/05 19:47 ] [ 編集 ]
こんばんは、先日は「アイアンスカイ」の上映情報教えていただいてありがとうございました。さきほど拙ブログにも書きましたが同行者を説得して(^_^;)無事(?)見て参りました。

良い所も悪い所も含めていろいろと楽しめる映画だったなという気がしています。ミカエルさんも書いておられますが、僕も総統はあのお姉ちゃんだとずっと思ってましたよ(ーー;)

※トラックバック打たせていただきました。今回は最高のタイミングでの告知感謝してます_(._.)_
[ 2012/10/29 20:49 ] [ 編集 ]
しろくろShow氏へ

> 良い所も悪い所も含めていろいろと楽しめる映画だったなという気がしています。ミカエルさんも書いておられますが、僕も総統はあのお姉ちゃんだとずっと思ってましたよ(ーー;)

 あの金髪姉ちゃん、今後も注目ですな。
 私の希望としては、武装親衛隊の制帽に黒のレザーのマイクロビキニに黒の乗馬ブーツ姿で、「月に代わってお仕置きよ」とアフリカ系宇宙飛行士をビシビシ鞭でしばいてほしかった。
 私の感覚ではまとも過ぎる風刺映画でした。

>
> ※トラックバック打たせていただきました。今回は最高のタイミングでの告知感謝してます_(._.)_
[ 2012/10/31 12:53 ] [ 編集 ]
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制作のための予算確保に苦労していた所、ファンからの寄付が1億円も集まったと言う曰くつきの作品。 ナチの残党が、第二次大戦終了時に南米に逃げたという設定の映画に『ブラジルか...
[2012/10/01 22:32] 勝手に映画評
FC2ブログ仲間の晴雨堂ミカエルさんより教えていただいたTOHOシネマズ高知での「アイアンスカイ」上映(四国ではここと愛媛の大街道だけで公開中)の情報はなんとタイムリーなことに
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