ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」 家族と一緒に考えよう〔26〕 

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」 
メリル渾身の演技が輝く!

 


【原題】THE IRON LADY
【公開年】2011年  【制作国】英吉利  【時間】105分  
【監督】フィリダ・ロイド
【原作】
【音楽】トーマス・ニューマン
【脚本】アビ・モーガン
【言語】イングランド語       
【出演】メリル・ストリープ(マーガレット・サッチャー)  ジム・ブロードベント(デニス・サッチャー)  オリヴィア・コールマン(キャロル・サッチャー)  ロジャー・アラム(ゴードン・リース)  スーザン・ブラウン(ジューン)  ニック・ダニング(ジム・プライアー)  ニコラス・ファレル(エアリー・ニーブ)  イアン・グレン(アルフレッド・ロバーツ)  リチャード・E・グラント(マイケル・ヘーゼルタイン)  アンソニー・ヘッド(ジェフリー・ハウ)  ハリー・ロイド(若き日のデニス)  アレクサンドラ・ローチ(若き日のマーガレット)  マイケル・マロニー(-)  ピップ・トレンス(-)  ジュリアン・ワダム(-)  アンガス・ライト(-)
      
【成分】ファンタジー ゴージャス 勇敢 知的 切ない かっこいい イングランド 1940年代~2000年代 
  
【特徴】英国史上初の女性首相にして「鉄の女」と讃えられ国際社会に強い影響力を誇ったマーガレット・サッチャーの伝記映画。
 アメリカ出身アメリカ育ちのメリル・ストリープ氏が英国人女性マーガレット・サッチャーになりきっただけでなく、老いもよく表現している。本作に輝いた栄誉の多くは主演女優メリルに向けられたものだ。
 作品としては、伝記映画になりがちの偉人の人生のダイジェスト版にならないよう構成に工夫が施されている。     
【効能】熟年夫婦で見ると人生を反芻止揚するきっかけになる。
 
【副作用】メリルの演技に頼った平凡な作品で感動できない。労働者や労働党を頑迷な衆愚に描かれて不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
メリルの演技力に頼った作品。
 
 高校時代、ドスの利いた女性の体育教諭がいた。朝礼などでチンタラ・ダラダラやってたら、拡声器を片手に心臓を強打してくるような罵声で怒鳴る50歳前後の女性教諭、しかも決して感情に任せヒステリックに怒鳴っているのではなく顔はいたって冷静、だから余計に怖かった。生徒だけでなく同僚の体育教師も彼女を「サッチャー」と呼んでいた。
 
 マーガレット・サッチャー氏は当時の「強い女性」を代表していた。首相在任期間は11年と長く、当時のサミット参加国で日本をはじめ代表の顔は目まぐるしく変わったが、英国の代表はサッチャーであり続けた。
 他作品のレビューで何度か言ったことがあるが私は強い女性に惹かれてしまう性質である。ところが当時の私は左翼系の思想にかぶれていく傾向にあったので、どちらかといえばサッチャーにあまり良いイメージは抱かなかった。作中で描写されているサッチャーを批難する労働党や怨嗟を浴びせる労働者の側からの視点になっていた。(余談1)

 
 さて、本作の構成は伝記ドラマとしては無難にまとめたという印象を持った。上手いとは思わない、無難である。本作は様々な賞に輝いているが、多くは作品を評価されたというよりは主演女優に向けられた栄誉だ。鑑賞してみてその判断はやはり正しいと思う。
 
 冒頭、首相まで務めたほどの女傑がすっかり年老い、平凡な年金生活者のように頼りない足どりでスーパーから牛乳を買い、食卓で夫に物価高を愚痴る。夫は楽天的で陽気な性格なのか、ややオーバーな表情を見せて「節約せなあかんな」と応える。
 サッチャーが普通の庶民になってる?と思いきや、実はサッチャー独りで食事をとっていて夫はすでに鬼籍に入っている。自宅には女性秘書が侍り、自宅周囲は自動小銃を持った警護が複数守っている。
 
 夫は果たして幽霊なのか、それとも老いて認知症気味のサッチャーがつくりだした幻影か? もちろん周囲は後者と判断して神経質なほどに気を遣っている。
 物語はこの夫の幽霊との掛け合い漫才をやりながら過去の出来事を回想し、伝記映画にありがちな「偉人の半生ダイジェスト」臭さを消そうと工夫されている。
 
 要所要所にサッチャーが直面した苦難はわかり易く象徴的に描写はされていた。議員に初当選したサッチャーが初登院するときの光景、黒いビジネスシューズに囲まれた婦人用ローヒールは、政治が男社会でありサッチャーは孤独な闘いを強いられている事を判り易く描写されている。
 そんなサッチャーを楽天的でひょうきんな夫が常に精神的に支えていたのだろう。
 
 ただ、労働党はただの批判屋、労働者はただの暴徒、IRAは凶暴なテロリストの描写に留まっている。サッチャーの政治家としての正体は掘り下げぬまま、英国における政治的背景や恥部はノータッチだ。
 もっとも作品はあくまでサッチャーの視点として描かれているわけだから、逆にいえば保守政治家サッチャーから見れば、「庶民」たちの存在はステレオタイプのあの程度かもしれない。
 そういう意味では妥当な構成だ。
 
 政治的背景を考慮しないまま鑑賞すると、キャリアウーマンの半生を切なく描写した小さなホームドラマにしか見えないだろう。 
 
(余談1)英国から遠く離れた小さなフォークランド諸島の領有権を守るために艦隊を派遣してドンパチする。これも当時の反戦平和や自然保護団体から激しく批難されていた。

 実際問題、日本はよく中国から「侵略者」だと批難されるが、侵略行為の経験が豊富なのは国連安保理常任理事国たちである。中国もサッチャーの英国もその理事国だ。語弊恐れずあえて野球に例えていえば、常任理事国たちは大リーガー選手、日本はせいぜい甲子園球児だ。

 英国は全世界を侵略してきたのであり、零落れてもまだ侵略者の牙はあるのだと思った。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
【受賞】アカデミー賞(主演女優賞)(2011年) ゴールデン・グローブ(女優賞(ドラマ))(2011年) NY批評家協会賞(女優賞)(2011年)
  

 
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