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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

新生「サイボーグ009」をみて思う。 昨今の差別問題や言葉狩りに配慮か? 近頃の現象[九百二] 

実写映画化したら・・、
というコンセプトのキャラデザイン。

 
新生009SN3V0087.jpg
 
【雑感】作品はけっこう見応えのある質に仕上がっている。もともと原作もヨーロッパのスパイ映画を髣髴させる内容であったし、神山健治監督は海外仕様を意識したのではないかと思った。

 レビュアー仲間には尺が短いのでメンバー全員の活躍が見れなかったと不満を漏らしていたが、これは仕方が無いだろう。
 私はしばしば5人枠持論をレビューついでに述べている。物語の登場人物は主人公や悪役も含めて5人から7人が適当で、それ以上になると制作者がどんなに巧く構成しても鑑賞者は登場人物が覚えきれず感情移入できない。

 様々な小説や漫画をご覧になれば判るように、殆どが5人から7人枠で収めている。「ゴレンジャー」や「ガッチャマン」は典型例。長寿時代劇「水戸黄門」も黄門様・助さん・格さん・うっかり八兵衛・風車の矢七と初期メンバーは5人、後にメンバーが増えるが7人に抑えている。
 ガンダムやヤマトなど登場人物が多い作品でも、1つの事件やエピソードで登場するのは5人枠法則に収まっている。全編を通じての主人公が後ろに下がって、脇役が主役になったりとスピンオフ化させているものだ。
 今回の「009」もアフリカ系のピュンマの出番が少なかったが、今後の作品に期待する。


 さて、今作品からキャラデザインが大幅に変更された。島村ジョーとフランソワの2人は大きな変化は無いが、他は全員イケメンにドレスアップ。
 ピュンマはハリウッド映画に登場しそうなアフリカ系、グレートはパンクロックのUKバンドにいそうなニヒルでナルシストなキャラ、ジェットは70年代ハードロックのボーカリスト風、ハインリヒはスパイ映画「007」に出演しそうな雰囲気、ジェロニモはわざとらしいモヒカンから長髪になり、イワンは乳幼児らしくない男の子になり、チャンチャンコは最初見たときチャンチャンコとは気づかなかったくらい原版からかけ離れたイメージになった。

 神山健治監督は、「もし実写映画化したらどんな感じの俳優が演じるのか、と想像してデザインした」という趣旨の発言をされた。たしかにナルホドと思う。
 
 しかしなぜ大幅なキャラデザイン変更をしてしまったのか? 初期の原作では手塚治虫氏の漫画に登場するキャラと酷似していたので、小学生当時の私は手塚作品だと思い込んでいた。特にグレートは手塚キャラのアセチレンランプを坊主頭にした感じにしか見えなかった。
 後に石ノ森章太郎氏のタッチが写実化していき手塚治虫風から変わっていったが、それでもキャラデザインそのものは変えなかった。
 
 神山監督も石ノ森キャラをそのまま使いたかったようであるが、海外市場を睨んで変更に踏み切ったようである。
 海外市場を視野に入れるからといってなぜ変えるのか、その具体的理由は聞いていない。が、私自身が原作を読んで思ったことがある。

 「サイボーグ009」は国際色豊かな9人のサイボーグ戦士の物語である。また表題が示すように当時ブレイクしたスパイ映画「007」にあやかったもので、内容も第二次大戦の悲劇やそれに続く米ソ対立の冷戦が背景になった子供向け漫画とは思えない政治色的緊張感があった。(因みに「007」に敬意を表しているのか、サイボーグ007も英国出身グレート・ブリテンである)
 これはぜったい海外でも高く評価される作品と子供心に思ったものだが、キャラデザインで「ちょっとまずいかな」と感じた。個人的には気に入っているが、海外世論はどう感じてしまうのかが気になった。

 後に革新系の友人と交友していくにつれて、キャラデザインへの危惧は大きくなっていく。なにしろ主人公で日本人の島村ジョーとヒロインのフランス人フランソワ以外は、全員ステレオタイプな滑稽デフォルメデザインだからだ。
 アメリカ人やイギリス人は苦笑いしながら看過してくれるかもしれないが、アフリカ人やネイティブアメリカ人や中国人はカチンとくるかもしれない。あるいは差別撤廃に熱心な市民運動家はハッキリと「石ノ森はアジア・アフリカを蔑視している」と断定して糾弾するかもしれない。
 実際に革新系の友人とそんな議論になった。「じゃあ、島村ジョーもみんなに合わせてメガネに出っ歯のジャップにしたらどうだろう」なんて冗談を言ったものだ。ホントにそんな事をしたら、ヒーロー漫画にはならない。

 では石ノ森章太郎氏は差別者か? といえば違うと思う。それどころか差別問題や民族問題について平均的な日本人よりもはるかに正確に把握していた。
 原作にあるエピソードで、ピュンマが瀕死の重傷を負いギルモア博士が治療修理するのだが、顔や手など服から出る部分以外は全身金の鱗にしてしまった。ピュンマはショックを受け、メンバー全員はギルモア博士を一斉に非難した。このときギルモア博士の釈明が「黒より金のほうが良いと思ったから・・」

 アフリカ系らしさを捥ぎ取られたピュンマの痛み、黒い肌よりも金が良いと思ってしまったギルモア博士、ギルモア博士は9人のサイボーグ戦士を統括する善玉科学者として作品に登場するが、そのギルモアでさえも人種的偏見の呪縛にあった事を雄弁に示したエピソードだ。
 数十年前、実際にある日本人ジャーナリストが取材先で欧米人から「まあアジア人に見えない」といわれた。もちろんその欧米人は社交辞令のつもりで言ったのだ。つまりアジア人に向かってアジア人に見えないというのは褒め言葉と思い込んでいる、アジア人的特長は一種の醜い奇形と思っている、という偏見が滲んでいるのだ。
 
 日本人をデフォルメした海外の漫画や風刺絵を観ると、首をひねったりする事が多々あり「ああ、日本人はこんな風に見られているのか」と思うのだが、同じような事が「009」にも言えるだろう。原画をそのまま海外市場に出してしまうと、せっかく作品内容が良いのに民族問題に厳しい昨今の国際世論ではマイナスに評価されるおそれがある。




 
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[ 2012/11/24 10:13 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(2)
こんにちは☆

009は、昔、テレビで観ました。懐かしいです。

人物は、5~7人が、守備範囲でしょうね...

たくさん出ても、前列7人まで、と言う感じになるのは
神7にも、通じるものなのでしょうか.....

ではでは(*^_^*)
[ 2012/11/24 19:29 ] [ 編集 ]
yutake☆イヴ氏へ
 
 神7も同じだと思いますよ。それ以外は「その他大勢」ですから、どうしてもバラエティや歌番組には胸に名札を付けざるを得ません。
 
 同じようなJKファッションで大勢出てグループのブランド名を高める意味はありますけど。

> こんにちは☆
>
> 009は、昔、テレビで観ました。懐かしいです。
>
> 人物は、5~7人が、守備範囲でしょうね...
>
> たくさん出ても、前列7人まで、と言う感じになるのは
> 神7にも、通じるものなのでしょうか.....
>
> ではでは(*^_^*)
[ 2012/11/24 19:40 ] [ 編集 ]
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