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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「八重の桜」(1) ツカミはOKか。 TVドラマ評[五十五]

綾瀬はるかが「NHK大河ドラマ」救った… 
八重の桜』で台湾報道


 2013年のNHK大河ドラマ八重の桜』の第1回が6日放送された。主演の綾瀬はるかはアジアでも好感度が高い女優であり、知名度も高い。中華圏各国での反応が気になるところだ。放映翌日に台湾と香港の芸能関係サイトがどうリアクションしているか探ってみた。

  台湾はほとんどの家庭で日本語専用チャンネルが見られるとあって、メディアも今年の大河初回放映の話題をしっかり伝えた。sina新浪新聞・台湾版は在京記者が「綾瀬はるか大河ドラマの救出に成功。初回放送の視聴率はまずまず」との見出しで報道。74分の延長版だったにもかかわらず、東京、名古屋、大阪でいずれも視聴率は20%前後と好調で、大河ドラマは昨年の「平清盛」で失敗したが、「(『八重の桜』初回放送で)息を吹き返した」と好意的に伝えた。(サーチナ)

 
【雑感】つかみはOKと言うべきか。
 
 大河ドラマが舞台にしている時代は圧倒的に戦国時代や安土桃山時代が多い。何故なら視聴率が獲れるからである。実際はドロドロした政治戦などもあったはずだが、ドラマは単純な武将のサクセスストーリーに定め、チャンバラ場面盛り沢山、NHKならではの豪華衣装に豪華キャスト、それでもって娯楽のみに走りがちの民放時代劇と違って格調高く歴史の勉強にもなる巻頭や観光案内の巻末。
 
 ところが戦国時代に次いで取り上げる舞台であるはずの幕末明治維新の視聴率は振るわない。現代の政治状況に直結する時代なので、どうしても話が政治臭くて複雑、戦国時代ほどチャンバラ劇が少ない。現代から遠い戦国時代のようにフィクションを多くは盛り込めないためキャラ設定の制約がある。視聴者も政治的な話が好きな中高年の男子に偏る。
 
 そんな「常識」を嬉しく裏切る現象が近年あった。宮崎あおい氏主演の「篤姫」だ。珍しく女性層の支持を得て幕末モノ大河ドラマ過去最高の視聴率を獲得した。原因はいろいろあるが、宮崎あおい氏の素直な演技と、女性目線での幕末描写を指摘する人が多い。
 本作もこの「篤姫」方式をとったものかもしれない。

 冒頭は八重の少女時代を演じた鈴木梨央ちゃんの殊勲だ。和服に慣れた所作、無邪気な笑顔と血相を変えて青く恐縮する顔など、実に演技達者だ。これで7歳とは恐ろしい。近頃の子役は昔の素人劇と違ってレベルが高い。出演が第一回と第二回の前半だけというのが惜しい。後半の明治期で八重の娘役で出てほしいと一瞬思ったが、残念ながら史実の八重に子供はいない。
 
 第一回と第二回で将来八重の夫となる2人の男性が登場するのも小憎らしい。一人目の夫は、兄覚馬が入門した佐久間象山の塾で出会い意気投合する学友川﨑尚之助、そして同じく象山の塾で猪豚の写生をしていた八重と歳が近い少年新島七五三太(後の新島襄)。八重の第一の理解者であり八重を生涯支援し続けた兄覚馬が、象山の塾で未来の八重の夫となる好男子と出会うのは気持ちのよい伏線である。2人とも生真面目に熱中する志の高い男子であり、平素は腰が低くて優しいところが共通しているのも小気味よい。覚馬の絡み方が楽しみである。
 
 鉄砲をやりたいと願う八重を叱る父権八の描き方も良心的だ。藩の演習に粗相をした八重を厳しく叱り物置に閉じ込め飯抜きにしながら、「肝を冷やした。お情け深い若殿様で命拾いした」と娘のピンチを案ずる姿は共感する。
 徒に当時の社会常識に忠実な頑迷な父親ではなく、言うことを聞かぬ八重を鳥撃ちに同行させ、目の前で鳥を射殺してみせて、鉄砲は殺生の道具である事を知らしめ、危険な道具であるからこそ文武に精進した侍が扱わなければならない事を諭す。
 表向きは親に従う八重が実は隠れて鉄砲を学び、その的確なメモを見て「仕込めばモノになるが、女が鉄砲やったところで活かせるところは無い」と息子覚馬の前で悩む。
 厳しいが手はあげない、頑迷に目したの気持ちを否定しているのではなく、実力を認めながらもそれを発揮する場所が無いゆえ将来を案ずる父親の姿は、後のヒューマンな猛女を育む家庭の象徴でもある。

 
 綾瀬はるか氏は史実の八重とは似ても似つかぬ痩身美女、オダギリジョー氏も容姿は史実の新島襄とは隔たっているが、他の配役は比較的イメージが近い俳優を起用している。まず兄の覚馬役西島秀俊氏だ。私は晩年の覚馬の写真を見たことがあるが、雰囲気はかなり近い。松平容保役の綾野剛氏本人はあまり似ていないが、甲冑に揉烏帽子をつけた史実の松平容保の雰囲気に近づけている。

 画期的なのは吉田松陰役に若い小栗旬氏をもってきた事。多くの時代劇は40代の中年俳優を充ててしまうが、実際の吉田松陰の享年は29歳、第一回・第二回のエピソードでは20代前半の若さである。肖像画が老けているので壮年男性と錯覚されているが、実は非常に若いのである。
 よく誤解されるのは、当時の平均寿命が短いからといって老け方も早いと思い込む人がいるが、そんな馬鹿なことはない。現代と違って乳幼児や壮年以降の死亡率が高いために平均寿命が短いだけである。栄養状態の悪い庶民であれば老化は早かったかもしれないが、吉田松陰のような知識階級は老化を早めるような過酷で不健康な生活はしていない。
 また当時の肖像画は威厳を持たせるために敢えて豊麗線などを強調して老け顔に描く傾向が強い。これに騙されてはいけない。

 ただ、井伊直弼を比較的若い榎木孝明氏が担当するのは良いのだが、彼の容姿は勝海舟に近い。井伊直弼はむしろ近年太ってしまった高嶋政伸氏が似合う。史実の井伊直弼は40代半ばで桜田門外の変で倒れるからだ。
 

 
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