FC2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

ロバート・キャパ 「崩れ落ちる兵士」の真相 近頃の現象[九百十四] 

沢木耕太郎 推理ドキュメント
運命の一枚
~"戦場"写真 最大の謎に挑む~


 これは、作家沢木耕太郎さんの取材と思索を軸に、テレビ60年にふさわしい映像表現・分析手法を駆使して、現代史の謎に迫るドキュメンタリーである。
 戦争報道の歴史の中で、最大の謎と言われる一枚の写真がある。「最も偉大な戦場カメラマン」と称されるロバート・キャパ(1913-54)が、スペイン内戦のさなかに撮った「崩れ落ちる兵士」である。銃弾によって身体を撃ち抜かれた兵士の「死の瞬間」を捉えたとされるこの写真は、フォトジャーナリズムの歴史を変えた傑作とされ、それまで無名だったキャパを時代の寵児に押し上げた。だが、この「奇跡の一枚」は、真贋論争が絶えない「謎の一枚」でもあった。(NHK)


【雑感】ロバート・キャパを知ったのは高校一年生のときだった。現国(現代国語)の授業で国語教師が唐突にキャパの有名な頬杖微笑写真を取り出して思い出話を始めた。
 「学生時代は部屋の壁にこのキャパの写真を貼って毎朝『おい、今日は元気か』なんて話しかけたものだ」などと授業そっちのけで延々。
 何か授業に関連のある話題だったかもしれないが、当時の私には「このゲジゲジ眉のオッサンがどないしたっちゅうねん?」という印象しか記憶に残っていない。この国語教師はたびたび教科書から脱線して反戦授業をやっていたから例の「崩れ落ちる兵士」の写真を見せたと思うが、全く記憶に無い。

ロバート・キャパ.jpg
ルース・オーキン撮影の有名な頬杖写真。1951年頃撮影。
よれよれワイシャツに緩めのネクタイ、くたびれサラリーマン風だが、
よく見るとダブルカフスのお洒落。


 それから2年後、藝大進学を控えていた頃だったと思うが、NHKでキャパの特集番組をたまたま観た。「あっ、先生が言ってたゲジゲジ眉だ」と思っていたら、なんとキャパの若い頃を話す岡本太郎氏のインタビュー映像が出てきた。
 「アイツはいつも爽やかで元気があって、さあ!朝だ!外へ出よう!こんな感じ・・」そんな内容の話をしていた。キャパの恋人で写真仲間のゲルダ・タロの「タロ」は岡本太郎の名前からとったとか、スペイン戦争の取材でゲルダは戦車に轢かれてしまったとか、そんなエピソードを知ると急速にキャパへの興味が強くなっていく。
 キャパと岡本太郎氏は顔見知りというより友人だった事で親近感を抱き、スペイン戦争のエピソードは昔みて涙を流した映画「誰が為に鐘が鳴る」を連想した事でキャパの生き方に強い関心を抱いた。イングリット・バーグマンとゲーリー・クーパー主演の「誰が為に鐘は鳴る」を連想した時はまだキャパと原作者ヘミングウェイとの関係は知らなかったが、後にヘミングウェイと友人だった事や映画にも多少関っていた事を知り衝撃的感動を覚えた。

 こうして藝大に進学する頃にはすっかりキャパのファンとなり、タイミング良くカメラマン志望の女友達の影響もあって自分自身も写真をやるようになった。中古屋で一眼レフを買い、基礎的な撮影術と白黒フィルムの現像と焼付方法を女友達から教えてもらい、チャリンコ旅行の時はいつも一眼レフ2台と交換レンズ4本と長巻フィルム1巻を携行した。
 なんだかまるで報道写真家か戦場カメラマンになっていくような雰囲気だったが、結局いまの私は平凡な旋盤工である。一眼レフは重たくてしんどいので、もっぱら携帯電話内臓のカメラで撮るだけだ。なぜわざわざ他愛ない昔話を長々としたのか、それだけキャパに心酔した時期があり、今回のNHKの番組は衝撃だった事を言いたいのだ。


 スペイン戦争時に撮影され一躍キャパの名を轟かした「崩れ落ちる兵士」、これはヤラセではないかという噂は学生の頃から聞いていたが、私は奇蹟の一枚を信じていた派である。

崩れ落ちる兵士.jpg
遮蔽物から突撃しかけた瞬間に狙撃され、倒れる瞬間を捉えた写真といわれている。
頭頂部に何かが噴出しているような黒い影があり、頭を狙撃されたのだと素直に思った。
白いワイシャツにスラックス姿で装備をつけているようだが、当時の共和国側兵士の多くは着の身着のままの
感じで、フランコ将軍率いる反乱軍側のほうがまとまった軍服を着ている。

 沢木耕太郎氏らの分析は非常に説得力があった。まず、写真に写っている地形からコンピューター技術によって正確な撮影場所と時期が割り出され、その頃はまだ戦闘が無かった事実が浮かび上がった。さらに同じ日に写された他の兵士たちは銃を構えたり突撃する様子ではあるが、銃が射撃できる状態になっていなかった。銃器に詳しい人が見たら判る画像のようだ。即ち撃たれる心配の無い演習を取材した写真であるとのこと。「崩れ落ちる兵士」は頭を撃ち抜かれておらず、たまたま足をとられて転倒した瞬間を撮った様である。

 さらに撮影者はキャパではなく、同僚であり恋人のゲルダが撮った可能性が極めて高いという。当時、キャバとゲルダは2人で「演習風景」を取材、キャパは35ミリフィルムのライカを使い、ゲルダは二眼レフで撮影していたので、ネガサイズを見れば撮影者は容易に特定できたらしい。ライカはフィルム世代にはお馴染みの長方形、二眼レフは正方形。ところが問題の「崩れ落ちる兵士」にはネガが紛失。しかしネガに近いとされるプリントのサイズを調べたところ、ライカ判では僅かに上辺がはまりきれない。
 奇蹟の一枚は、キャパとゲルダが仕掛けたヤラセだった・・。

 この結論は長らく奇蹟の一枚を信じていた私にとってショックだったが、沢木耕太郎氏はキャパの「嘘」を批難せず、キャパとゲルダを取り巻く時代背景を考慮して弁護した。
 ヒトラーの圧力がヨーロッパを席巻する時代、ユダヤ系であるアンドレ(キャパの本名)とゲルダはフランスに逃れ、写真で意気投合し、可能性を求め2人でスペイン戦争の取材に出かける。無名だった2人の写真を高く売るために架空のアメリカ人写真家ロバート・キャパを作り出し、「崩れ落ちる兵士」が生まれた。
 やがて、ゲルダは「ゲルダ・タロー」名義で単独取材に出るようになり、アンドレはロバート・キャパを自分の筆名にして取材活動を展開するようになる。「崩れ落ちる兵士」は反ファシストのシンボルとして一人歩きし、ゲルダは戦闘取材中に命を落とす。
 一種の秘密の十字架を背負ったようなキャパは、危険なノルマンディー上陸作戦の先頭に従軍し、今度は正真正銘の銃弾飛び交う戦場写真の傑作を撮って一応の決着をつけ、54年にインドシナ戦争取材中に地雷を踏む。


 ところで、このNHKスペシャルは時期的に横浜美術館で現在催されている「ロバート・キャパゲルダ・タロー 二人の写真家」(本年3月24日迄)に呼応したものではないかと思う。
 ゲルタ・タロはこれまでキャパの恋人という扱いでしかなかったが、今回は写真家ゲルタとしてまとまった形の写真展になっているので必見である。
 詳しくは下記をクリック。↓

 「ロバート・キャパ/ゲルタ・タロー 2人の写真家」 横浜美術館 

晴雨堂関連作品案内
『ロバート・キャパ 魂の記録』宝塚歌劇団宙組 [DVD] 宝塚歌劇団がなんとキャパの生涯を舞台化!
主演は凰稀かなめ氏、2012年上演。



 まだ未観だが、どうやって舞台表現するんだろう?


 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト
[ 2013/02/09 14:05 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
158位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
81位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク