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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

夫婦別姓の是非 別姓より通名と諱(いみな)の復活を! 近頃の現象[九百十五]

夫婦別姓、賛否が拮抗 
容認論は減少傾向―内閣府調査

 
 内閣府は16日、昨年12月に実施した「家族の法制に関する世論調査」の結果を発表した。それによると、選択的夫婦別姓制度の導入について、「法律を改正しても構わない」と容認する意見が35.5%、「改正の必要はない」との反対意見が36.4%で拮抗(きっこう)。容認論は2006年の前回、今回と2回続けて減少し、導入への機運が高まっていない現状が示された。(時事通信)
 
【雑感】現行の戸籍制度のまま夫婦別姓にしたら必ず紛争になる。結局のところ、夫婦別姓の意図は個人の尊重というよりは、核家族化によって生じた地縁や郷土愛の廃れを制度として追認・固定・促進する事であり、「家族制度」「家族文化」「郷土文化」の否定が目的にある。個人の尊重はむしろ万人の支持を得やすくするために盛り込んだ大義だ。

 我々保守派が家族がバラバラになる事を懸念するのに対して、推進派はよく「夫婦同姓に頼ってしか家族の絆が維持されないのはもはや愛の無い家族、バラバラになっても仕方が無い」とくる。
 そもそも人間は堕落するし暴走するからこそ、三権分立があったり、政府をコントロールする憲法があったり、政府を監視するジャーナリズムがあるのではないのか。同じ主張を社会に当てはめれば、国家や憲法の力を頼らなければ秩序が保たれない人間社会など滅んでも仕方が無いという極論に行き着く。 
 
 夫婦別姓論者の多くは「欧米では当たり前」を口癖のごとく主張するが、欧米にはミドルネームの習慣があるのを無視している。これは無知なのかワザとなのか? 第三の名前を活用して別姓で生じる対立を緩和している点を何故みないのか不思議だ。
 一番判り易い例では、ジョン・レノンの息子で自動車の宣伝でお馴染みであるショーン・レノン氏。彼のフルネームをいうとショーン・太郎・小野・レノンだ。彼は母方の姓だけでなく「小野太郎」という日本名も正式名に入れ、父と母双方の文化的ルーツを名前でも共有している。(余談1)ところが日本の現行法では「家族名」と「個人名」の二種類の名前しか正式にできないので、ミドルネームを用いて双方の文化ルーツを子供の世代に引き継がせられない。日本のフェミニストたちが中心となって展開している夫婦別姓運動はそういった文化的ルーツへの配慮が無いというより無視か否定している。
 
 日本でもミドルネームではないが第三第四の名前があった。以前にも何度か紹介したが、我郷里の英雄坂本龍馬、この「坂本龍馬」は実は本名ではなく通名である。本名は「直柔」、龍馬が大政奉還直前に後藤象二郎へ宛てた書翰には「坂本直柔」と署名している。さらに、龍馬がもし維新後も健在で朝廷に出仕する機会があったら「紀直柔」または「紀朝臣直柔」と名乗ったかもしれない。「坂本」は家族名(ファミリーネーム)の通名であって本姓は「紀氏」である。これは徳川や足利が朝廷で源氏を名乗るのと同じである。
 
 この通名と本名を使い分ける習慣は日本や中国など主に漢字文化圏特有の「実名敬避俗」である。本名を呼ぶのは失礼で憚れるので代わりに通名で呼ぶ。本名で呼べるのは親などの目上の人間。したがって龍馬の親は「直柔」と呼んでいた。
 ところが明治に入って徴兵対象者人口を速やかに掌握するべく戸籍制度の整備を急いだ際、江戸時代のように個人が幾つも名前を持つのは事務処理の効率が悪いので、合理化されて現在のように「家族名」と「個人名」の二つだけになった。また夫婦同姓が法制化されたのもこの頃だ。それ以前は事実婚が主流で、嫁は実家の姓を名乗ることが珍しくなかったのを同姓に組み込んだ。

 夫婦別姓をするよりも、明治以降廃れ法的にも締め出された通名といみな=本名)の習慣を復活させたほうが夫婦別姓で予想される次世代への両性利害対立を回避することができる。事務処理が煩雑になるという批判があるが、それこそ英語圏でミドルネームによる深刻な問題が発生したとは聞いたことが無い。
 インターネットの普及で、多くの人は本名である「戸籍名」とは別にハンドルネームを使用することに慣れている。またネット社会ではセキュリティーの意味合いでいきなり本名は名乗らずハンドルネームを使用し、先方への信用度が確認されてから段階的に本名を開示していく習慣が定着しつつある。これは明治以前の通名とを使い分けるのと同様の習慣が復活してきたのだ。
 
 それでなくても、既に芸能人や文筆業者や相撲取りなどは本名以外に仕事で使う名前を当たり前のように使い、本名と同等の効力をもたせている。通名・併用を復活させたところで問題は無い。少なくとも現行の戸籍法で夫婦別姓を強行することのほうが弊害がある。
 そういう意味では、夫婦別姓を安易に強行しようとした民主党政権が倒れて良かった。また、フェミニストたちにとっても家制度の尾骶骨である姓にこだわるよりは、自分自身の与り知らぬ時に付けられた名前の他に、「戸籍名」と同格の効力をもつ真に自分のアイデンティティーを表す名前を自分で付ける権利を法制化するほうが建設的ではないか。

(余談1)ジョン・レノンの盟友だったポール・マッカートニーのフルネームは、サー・ジェームズ・ポール・マッカートニー・MBE・Hon RAM・FRCM。騎士に叙勲されたので、名前の前に「サー=Sir」が付く。後半のアルファベット記号は勲章などの肩書。
 マッカートニー家では代々長男のファーストネームはジェームズとなっていた。同じ名前を持つ父親と区別するためミドルネームの「ポール」を通名にしている。
  

 
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