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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「戦場のピアニスト」 絶望から脱出しよう〔16〕  

戦場のピアニスト
平凡なピアニストを主人公にした
ホロコースト物の傑作

 

 
【原題】THE PIANIST
【公開年】2002年  【制作国】仏蘭西 独逸 波蘭 英吉利  【時間】148分  【監督】ロマン・ポランスキー
【原作】ウワディスワフ・シュピルマン
【音楽】ヴォイチェフ・キラール
【脚本】ロナルド・ハーウッド ロマン・ポランスキー
【言語】イングランド語 ドイツ語 ロシア語
【出演】エイドリアン・ブロディウワディスワフ・シュピルマン)  トーマス・クレッチマン(ヴィルム・ホーゼンフェルト大尉)  エミリア・フォックス(ドロタ)  ミハウ・ジェブロフスキー(ユーレク)  エド・ストッパード(ヘンリク)  モーリン・リップマン(母)  フランク・フィンレイ(父)  ジェシカ・ケイト・マイヤー(ハリーナ)  ジュリア・レイナー(レギーナ)  ワーニャ・ミュエス(ナチス親衛隊将校)  トーマス・ラヴィンスキー(保安警察)  ヨアヒム・パウル・アスベック(保安警察)  ポペック(ルービンシュタイン)  ルース・プラット(ヤニナ)  ロナン・ヴィバート(ヤニナの夫)  ヴァレンタイン・ペルカ(ドロタの夫) 
  
【成分】悲しい パニック 不気味 恐怖 絶望的 切ない ユダヤ人虐殺 第二次大戦 1940年代 ポーランド
  
【特徴】平凡なユダヤ系ポーランド人の青年ピアニストが第二次大戦中に経験した恐怖の日々。ピアノを弾く以外に取り得の無い青年がいかにナチスから逃れ生き延びたのかをリアルに描く。
 トーマス・クレッチマン氏がドイツ軍大尉役で出演、この作品で本格的にハリウッド進出を行う。
 
【効能】絶体絶命の危機に陥っても、希望の一筋の光を失わない。
 
【副作用】活劇を求めている人には、主人公がただ逃げ回っている情けない男に見えて不愉快。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。
映画史に残る傑作なのだが・・。

 原作の小説も映画の原題も「THE PIANIST」(余談1)だが、私は邦題のほうが内容に合致していて風情のあるタイトルだと思う。
 中高生の頃だったか、同種テーマで「ホロコースト」というTVドラマが日本でも放送されていた。ドイツに住むユダヤ人一家がナチの迫害を受け、次々に殺されていき最後に弟1人だけが生き残る。戦争前の笑顔で映る家族の集合写真を思い浮かべると強烈に戦争と差別の惨たらしさが伝わる。当時は戦争娯楽映画のドイツ軍しか知らなかったので、片っ端からユダヤ人を殺していくナチスの行動が一種のモンスターに思えた。
 90年代に入って、娯楽大作監督スピルバーグ氏が「シンドラーのリスト」を発表した。スピルバーグ監督がユダヤ系であるのは有名なことで、彼がついに自分のルーツの問題と向き合った作品としても注目された。リーアム・ニーソン氏扮するシンドラーがハリウッド仕様のキャラになって演説をぶつヒーローになってしまったのが残念だったが、重厚なつくりになっていた。
 
 そしてロマン・ポランスキー監督である。彼もユダヤ系であるのは有名であり、ついに彼も手掛けたわけだが、当時の私の印象は些か冷ややかなものだった。というのも、イスラエルではユダヤ人がかつてのナチスと同様の迫害をパレスチナ人に対して行っている事が国際世論の非難を浴び、日本でもメジャーなメディアで報道されるようになっていたからだ(余談2)
 だから、イスラエルへの非難が高まっている時期に、ユダヤ人迫害モノを制作するというタイミングが、私には気に入らなかった。
 
 しかし、作品内容はさすがポランスキー監督だった。ピアノを弾くことぐらいしか能の無い主人公が、綱渡りで生き延びていく様は臨場感がある。彼の人柄や縁故やピアノの演奏技術が、様々な局面で彼の命を救う。
 通常のハリウッド映画では勇敢なヒーローが武器を取って地下水道に潜りレジスタンス活動をするものだが、主人公はそのような勇ましいことはしないしできない。ただただ、泣いたりうろたえたりしながら戦火の中を逃げ惑い、辛うじて生き延びていく。その姿が凡人で臆病な私には説得力がある。
 最後に彼の命を救うのは、敵であるドイツ軍の将校(余談3)であり、たまたま彼も音楽好きだったために屋根裏に匿われる。
 
 ポランスキー監督もまたナチスの迫害で両親を失い、ゲットー(余談4)を体験しているが、現在のパレスチナ問題をどのように捉えているのだろうか? とはいえ、政治的問題はさておいて、様々な民族が観ても評価できる傑作に仕上がっているとは思う。 
  
(余談1)もともとは原作者の自伝小説「ある都市の死」で終戦直後に刊行された。だが、スターリンが支配するソ連の衛星国ポーランドの政治的事情で一時発禁処分に近い形で絶版になり、20世紀も終わりに近い1999年に英・仏・独語で復刊、そのときのタイトルが「THE PIANIST」である。
 
(余談2)20年ほど前に、手塚治虫氏の「アドルフに告ぐ」にもラストでイスラエルとパレスチナの関係が描かれている。
 ナチの被害者だったパン屋のカミルは、イスラエル軍の将校となりパレスチナ人虐殺を指揮した。かつてヒトラーユーゲントとしてカミルの父親を殺し、ゲシュタポ将校としてカミルの妻を強姦したカウフマンは戦後パレスチナ解放機構に拾われパレスチナ人のために闘う。手塚氏らしい皮肉なコントラストだ。
 
(余談3)ホーゼンフェルト大尉役をトーマス・クレッチマン氏が扮した。彼はこれで世界的メジャーな俳優の地位を確立する。
 
(余談4)塀で封鎖されたユダヤ人居住地区。ナチスが行ったユダヤ人政策。残念ながら、経緯は若干違えどユダヤ人もパレスチナ人地区を塀で封鎖している。パレスチナ自治区はイスラエル国内各地に幾つも分散しており、地区ごとの往来は規制されているため、一種のゲットー状態だ。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(主演男優賞)(2002年) カンヌ国際映画祭(パルム・ドール)(2002年)
 
晴雨堂関連作品案内
戦場のピアニスト オリジナル・サウンドトラック
ホロコースト 救出された子供たち〈特別版〉 [DVD] マーク・ジョナサン・ハリス
シンドラーのリスト スペシャル・エディション [DVD] スティーヴン・スピルバーグ
アンネの日記 スタジオ・クラシック・シリーズ [DVD] ジョージ・スティーブンス
ホロコースト 戦争と家族~第1部 [VHS] マービン・J.チョムスキー
ホロコースト 戦争と家族~第2部 [VHS] マービン・J.チョムスキー
ホロコースト 戦争と家族~第3部 [VHS] マービン・J.チョムスキー
 
晴雨堂関連書籍案内
戦場のピアニスト ウワディスワフ・シュピルマン
ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書) 芝健介
 
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戦禍にまみれても、音をうしなわない。奇跡的に生きのびた天才ピアニストのドキュメント。
[2009/08/22 22:46] 陽出る処の書紀
戦場のピアニスト 実在のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンが戦火をいかに生き残ったかという映画。 特別に物語がどうとか、役者の演技がどうとか、はなかったなあ。 ドラマ的な盛り上がりを排除したトーンで最後までいく。 ラスト近くのドイツ人将校の前..
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