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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「八重の桜」(6) TVドラマ評[六十一] 

ごろつき世良修蔵
 
【雑感】いよいよ会津戦争の戦端が開かれた。そして斉藤一は後に妻となる時尾と初めての出会う。

 幕末明治維新の時代劇で、会津戦争編となれば必ず登場するといってもいい傲慢不遜の世良修蔵。この「八重の桜」は会津側視点で展開するので、ただでさえ偉そうに描かれる世良修蔵が今回はもはやゴロツキ・チンピラの類に描かれている。
 
 江戸城明け渡しに成功した新政府軍は、いよいよ会津をはじめとする東北地方平定に乗り出す。恭順の意を一応示している奥羽諸藩の筆頭格である伊達家の仙台藩に乗り込んで会津を討てという命じるのだが、最高司令官たるお公家の総督は何も言わず、横で酒を喰らいながら軍服の襟をだらしなくはだけた世良修蔵は、裃姿で正座する従四位下伊達中将慶邦に向かって上から目線の乱暴な言葉遣いで「中将!」と呼び捨てにして命令する。伊達中将の傍に控えていた家老らしき家臣は怒りに震える手で膝を握り締める。(余談1)

 伊達中将の家格は諸大名より二段ほど上である。北陸加賀藩の前田家・九州薩摩藩の島津家・周防長門長州藩の毛利家と並ぶ大大名で、諸大名がおおむね従五位下あたりなのに対し伊達家は四位クラスの家格、それを庄屋の出身(つまり士分ではない)から成り上がった世良修蔵が官軍の参謀というだけでパワハラをするのだ。
 世が世であれば、世良は伊達家棟梁にお目見えすら適わない。また、時代劇に見慣れている人なら解ろうが、たとえ自分が上座に立つ人間でも相手が歳上であったり叔父であれば謙る。つまり作中の世良は極めて非常識で礼を失した人格異常者に描かれているのである。因みに演じてる俳優はけっこういい歳なのでピンと来ないだろうが、当時の世良はまだ30代前半、伊達中将は40代半ばである。

 では世良ほんとうにゴロツキだったのだろうか? 彼の経歴は作中のキャラからは想像できないほど優秀である。17歳で藩校明倫館で学び、以降は有名学問所を渡り歩いてキャリアを積み上げ、長州藩の重臣浦元襄が設立した私塾で兵学講師をするまでになっている。このころに長州藩士となり浦氏から世良姓を賜った。
 長州藩の身分制度がどういうものか詳しくは知らないが、17歳当時は士分ではなく大百姓、同時代の土佐の坂本龍馬や中岡慎太郎とあまり変わりは無い。藩校で学んだり江戸へ留学したりと学問三昧できるわけだから相当に秀才だったはずだ。
 彼の青年時代は学問三昧だったが、高杉晋作の奇兵隊設立に招聘され隊の書記に就任、数々の戦いで部隊を指揮して軍功を上げ、特に戊辰戦争での世良の働きはめざましい。その流れで、新政府軍の東北方面軍を指揮する事実上の司令官になった。

 少なくとも、彼は強硬派路線であったのは確かで、寛大な処分で旧幕府勢力の力を潰さずにおくと将来の禍根となるから抹殺するべき、よって会津は武力で滅ぼさなければならない、そんな意思だったようだ。穏便に平和裏に終わらせたい伊達ら奥羽諸藩にとって世良は目障りな存在になっていたのも確かだ。

 「八重の桜」は会津視点で物語が進行するので、世良は憎たらしいほど徹底した悪役に描かれた。それこそ暗殺されても仕方がないくらいの悪だ。世良の直系子孫はいないが、縁者が見たらどう思うだろうか?

(余談1)当時の官軍は、最高司令官である総督とそれを補佐する副総督と参謀の三役はお公家さんが就任する。軍略の「ぐ」の字の無い人物が就くので、錦の御旗を掲げる朝廷の「正規軍」の建前を守るための飾りであることは言うまでも無い。実質の司令官は三役の下に設けられた下参謀と呼ばれる役職が務める。これは薩長同盟を反映して長州と薩摩からそれぞれ1人ずつ就任する。世良の同僚参謀は後に鹿児島県令になる大山格之助が就いた。


 
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