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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「八重の桜」(8) TVドラマ評[六十三] 

いよいよ八重の出陣か。
 
【雑感】とうとう会津領の国境防衛線が突破され官軍は領内に侵攻、猪苗代湖を挟んでの攻防戦も敗退し、鶴ヶ城城下に迫る勢い、というのが今回の回だ。
 
 作中で容保が重臣たちの前で「会津は会津の手で守る」と檄を飛ばしたことでも判るように、もはや奥羽越列藩同盟は事実上崩壊し、会津は孤立状態になっている。猪苗代城で戦っていた新選組も北海道へ転進する土方と会津に残る斉藤に分かれる。

 ここで時代劇に詳しい人は「あれ?」と思うだろう。前回の激戦攻防の舞台となった白河城は会津領の隣の旧白河藩での出来事だが、猪苗代城は完全に会津領だ。幕藩体制下では一国一城と定められており、城は軍事目的の「要塞」ではなく執政のための藩庁となっていた。現在の地方自治体の県庁所在地は幕藩体制下で発達した城下町であったため、県庁は城郭や城跡の近く又は敷地内に置かれたのはその名残といってもいい。ところが会津では藩庁の鶴ヶ城(若松城)以外に猪苗代城も持っているのである。
 
 実は例外的に大藩は城を複数持つ事がある。伊達氏の仙台藩も藩庁の仙台城以外に白石城を持ち、重臣片倉氏が代々城主となっている。城代ではなく城主であるのが味噌で、知行も一万数千石、仙台藩の中に白石藩があるようなものだ。「八重の桜」では奥羽諸藩の重臣が会津救済の会議を行ったところとして紹介されている。
 同じように第一の重臣を支城の城主にして万石以上の領地を与えた例は熊本藩の八代城がある。また親藩では紀州藩の新宮城などがあり、家老職の家臣が城代となっている。会津藩の猪苗代城も有力家臣を城代として置いていた。

 とはいえ、あくまで幕府の例外的処置。大名の中には城を持たない家も少なくなく、見栄から屋敷を無理に城っぽく見せようとした例もある。そういう幕藩体制下で、大藩とはいえ城を複数持つ事を幕府から正式に許可された藩は特別待遇といえる。
 会津藩の松平家は藩祖が二代将軍秀忠の御落胤、つまり徳川御三家に次ぐ血筋といっても良く知行も23万石(実質の石高は御三家の水戸藩より多いといわれる。逆に水戸藩は御三家の体面から内実よりも高めに申告している)、戊辰戦争直前の容保の官位は正四位下左近衛権中将、親藩の中でも家格は上、これに京都守護職時代の尊皇攘夷派弾圧の責任も加わると、薩長の怨嗟は激しいものだったに違いない。
 
 この猪苗代城で土方歳三と斉藤一が袂を分かつ。短い場面だが土方と斉藤の会話は双方の志が出て良い。史実の土方もこの頃になると剣客の新選組副長から卒業し旧幕府軍の一部隊を指揮する陸軍司令官になっている。後の箱館戦争では陸軍奉行並として大量の銃弾を浴びせる大規模な銃撃戦を展開し官軍を何度も撃破している。
 作中では会津に残る斉藤に向かって「どうやって戦う気だ? 銃も弾も尽きかけているぞ」と説得する土方に向かって、腰にさした太刀を掴んで「まだ、刀がある」と迷わず言い切る。「会津に惚れた女でもできたか」と訊ねる土方に「女ではない。愚かなほどに真っ直ぐな会津という国です」と答える。後世の歴史家や歴史ファンから幕末最強の剣士と讃えられた斉藤一、今後の数々の激戦を刀で切り抜け、戦争終結後は会津人として生きていく。
 「まだ、刀がある」と言い放つ斉藤一の無精髭の顔が格好いい。私の個人的希望としては、もっと斉藤が活躍する場面を入れて欲しいのだが、八重が主役だから無理だろう。

 今回のエピソード終盤でついに悲劇の白虎隊が出陣してしまう。官軍からの攻撃に驚き、あたふたと銃口に棒を突っ込んで弾込めをする場面で終わるのだが、これが有名なヤーゲル銃だ。
 八重が愛用する最新のスペンサー銃や薩長が使っているスナイドルは元込め式で現代の銃に近い方式なのだが、白虎隊ヤーゲル銃は火縄銃と同じく銃口から火薬と弾を入れて備え付けの棒で押し固めてから撃つ。しかも作中で何度も紹介されたゲベール銃よりも弾込めに時間がかかる。

 というのも、命中精度を上げるためにパチンコ玉のような弾丸から釣鐘状に改良してライフルマークを入れたのは良いが、弾込め時に筒の途中で弾が引っかかるのだ。山本家の角場で八重がパチンコ玉状よりも釣鐘状の方が射程が伸びると少年たちに指導していたが、物語上ではそれが仇となった。この作品はそんな伏線が多いような気がする。
 ヤーゲル銃をさらに改良して扱いやすくしたのがミニエー銃なのだが、日光口を完璧に防いでいる山川大蔵ら主力部隊が使用し、元々後詰の予備軍だった白虎隊には回らなかったのだ。
 
 次回はいよいよ会津戦争の悲劇が始まる。
 

 
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