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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

反戦映画「Die Brücke(橋)」に見る戦争記憶の風化とファンタジー化 近頃の現象[九百三十四]

ドイツの反戦映画「Die Brücke(橋)」に見る 
戦争記憶の風化とファンタジー化。

 

↑左がヴィッキ監督の反戦映画、
右は半世紀後に発表されたリメイクである。

 
【雑感】8月15日の「終戦記念日」を控えたこの時期、各テレビ局は反戦を題材にしたドラマを放送し、平和団体などは反戦反核と現保守政権批難を意図した映画などを各地で上映する。そんな季節柄ゆえ、ふと思ったことを述べてみよう。
 
 ドイツの有名な反戦映画にベルンハルト・ヴィッキ監督の「橋」(1959年公開)ある。第二次世界大戦終結間近の1945年、地方都市に疎開していた少年たちに召集令状が届き、ある橋を守るよう命令される。もはやドイツの敗戦は明白で少年たちが戦う必要はないのだが、大人たちの思惑に振り回され、戦車を擁する連合軍の先鋒と生真面目に戦い、主人公を除く全員が戦死してしまう悲劇を描写した。
 
 ヴィッキ監督の反戦映画から半世紀ほど経った2008年にウォルフガング・パンツァー監督がTVドラマ用にリメイクした。日本でのDVDリリースは「1945戦場への橋─ナチス武装戦線」と些かB級娯楽戦争映画のようなタイトルを付けられてしまっているが、おおよその展開は同じである。

 橋を守る主人公たちを演じているのは、2つとも10代後半から20歳前後の若い俳優たちだ。物語は大よそ同じ、最初に倒れるのはやや小太りのドン臭い少年、米軍を辛くも「撃退」して2人生き残るが、そのうちの1人は橋を爆破しようとする狡猾な大人の自軍に殺される。生き残った主人公は虚しさに打ちひしがれて放心状態でエンディングとなるところは共通している。
 
 この2つの作品、決定的な違いがある。ヴィッキ監督作は白黒でパンツァー監督はカラーというのも確かに違いではあるが、象徴的な違いを紹介しよう。

 ヴィッキ版では橋を守るドイツ兵が少年ばかりだと連合軍が知るのは、少年の1人が携帯式対戦車ロケットランチャーを持って民家に侵入し、民家の親父が怒って説教するのを構わず窓から発射、その噴射炎を親父が浴び瀕死の大火傷を負う、そこへ米軍兵士が踏み込み狼狽する少年の顔を見る。兵士は橋を守る少年たちに向かって「子供たち、家へ帰れ!」と叫ぶが主人公たちが放った銃弾に倒れる。
 
 パンツァー版では、主人公のガールフレンドが市街戦の中を果敢に横断し、連合軍先鋒の指揮を執る軍曹の元へへ迷わず駆け込み「彼らは子供です! 私の同級生です! 撃たないで!」と訴えるのだ。

 どちらがファンタジーか、一目瞭然ではないか。ヴィッキ版では殆ど男性しか登場しないのに対し、パンツァー版ではガールフレンドや不倫の女教師などが登場して色恋沙汰が多い。
 ヴィッキ版では粗末な橋の付近に塹壕を掘って作った急ごしらえの陣地で少年たちは迎撃するが、パンツァー版では赤レンガが美しい大きくて立派な橋の付近に土嚢を積んで作った陣地で応戦する。少年たちの装備もパンツァー版の方が充実している。

 それから少年たちを死地へ追いやった大人たちだが、ヴィッキ版では工兵隊下士官で眼光鋭いシャープなイメージだが、パンツァー版では狡猾な大人たちと純粋真っ直ぐな少年たちの対比を引き立たせたいのか酔いどれの出っぷり太った老将校たちだ。

 名作をリメイクするとき、全くそのままの形で作品化するとリメイクの意味がない。ある程度は独自の解釈による改編も必要だと思うが、往々にして陥るのは味付け過多だ。音楽に例えれば、ポール・マッカートニーのシンプルなギターだけの「yesterday」をキーボードや管弦楽の伴奏で荘厳にし、歌い方も変にコブシを付けてカバーするようなものだ。
 
 もう一つ、言わなければならない要素がある。ヴィッキ監督が描く戦闘シーンは臨場感があって息が詰まるような少年たちの演技も素晴らしかった。本当に死と紙一重の切迫感である。ところがパンツァー版では戦闘シーンは良い出来の方だが演じている俳優たちにどこか余裕が感じられる。
 一番大きな理由は、ヴィッキ版の少年兵を演じる俳優たちは幼児期に戦争体験がある。大人たちに至っては全員戦争を知っている。ところがパンツァー版では少年兵を演じる俳優だけでなく出演者もスタッフも殆どが戦後生まれ、戦争は遠い過去の話だ。
 そして甘ったるい脚色は、戦争の風化とファンタジー化をより一層促進させてしまう。この傾向は邦画にも当然の事ながら顕著にある。
  

 
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コメント

戦闘シーンも気合が入っている

リメイク版も戦闘シーンは気合が入った撮影で、日本の映画やドラマも見習って欲しいです。

Re: 戦闘シーンも気合が入っている

うろぱす氏へ
 
 TVドラマとしてはかなり力を入れていましたね。それから、少年兵たちは当時のドイツ兵と同じように頭髪を短く刈り上げていました。
 日本では何故かアイドル俳優に配慮して長髪を許す、これが気に入りません。髪の長い(普段の芸能活動よりは短くしているが)日本陸軍の兵士なんかあり得ません。
 「真夏のオリオン」なんかも、せめて艦長役の玉木宏氏は陸に上がって酒を飲む場面ぐらいでも刈り上げオールバックにしてほしかったですね。

 うろぱす氏もそうだと思いますが、アイドルに「配慮」する詰めの甘さがまかり通ってしまう邦画やドラマが気に入りません。

> リメイク版も戦闘シーンは気合が入った撮影で、日本の映画やドラマも見習って欲しいです。

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