ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「Uボート」 ビールのある光景〔1〕 

ベックス(BECK'S) ドイツ・ブレーメン産 
Uボート TVシリーズ完全版」 
潜水艦映画の金字塔!



【紹介】ビール党の私としては、ビールが印象深く登場する映画を紹介したい。特にドイツビールファンなので、当カテゴリーの第1回は「Uボート」を挙げるしかないだろう。

 「Uボート」で登場するビールのシーンは、まずは冒頭の士官クラブで繰り広げられる出撃前のドンチャン騒ぎ。

機関長と艦長
士官クラブのカウンターで話し込む艦長(右)と機関長(左)。

 この写真はカウンターでビールを注文する場面。左側の機関長は出産をひかえた妻からの連絡が無いのでソワソワと煙草をくわえている。その機関長をやや心配そうに話しかける艦長。
 中央の女性は艦長から注文を受けた生ビールをビアグラスに注いで持ってきた。ビアグラスの形状はチューリップとスニフターの中間ぐらい。チューリップ型は文字通りチューリップの花のような形でワイングラスのように脚がついている。スニフターはワイングラスをやや寸胴にしたような形である。
 女性は歳の頃30代前半くらいの豊満ポッチャリタイプ。こんな女性がビールを持ってきてくれると豊かな気分になれる。

機関長とトムセンと艦長
左から、カウンターの艦長とトムセンと機関長。

 上記場面は、本作の主人公で物語の語り部ヴェルナー少尉が便所から出た時に広がる光景。艦長たちがビールを飲んでいるカウンターは便所の横にある事が判る構図だ。
 左端に艦長の後ろ姿、その横に1級鉄十字勲章を叙勲された盟友トムセンの姿、袖口に金の三本線の袖章から彼もUボート艦長であることが判る。少し離れて俯き加減の機関長、妻の事が心配で酒盛りどころではなさそう。トムセンは舞台に上がって叙勲のスピーチをした後、戦友の艦長の隣にやってきたようだ。カウンターには飲みかけのビアグラスがいくつも並んでいる。
 因みにヴェルナー少尉は、ひょうきんで悪戯好きの次席士官に付き合ってしこたま飲まされ泥酔寸前。

醒めた態度の先任士官
乱交を冷静に眺める先任士官(左)
その後ろでは歌手(赤ドレスの女性)を口説く次席士官?


 出撃前の大宴会はますます乱闘乱交の様相を呈してきたが、堅物の若い先任士官(日本風にいうと副長)は相変わらず制服をカッチリ着こなしビアグラス片手に醒めた表情で周囲の状況を客観的に眺めている様子か。
 袖口の袖章に2本の金線がある事から海軍中尉である事が判る。(因みにUボートの艦長は大尉)ただ、ヴェルナーでも第2ボタンに2級鉄十字勲章のリボンを飾っているのに彼に勲章が何も無いことから、出撃経験に乏しい事が判る。出撃直後の潜航テストでも、次席士官がニタニタ笑い航海長は余裕の表情なのに、彼はヴェルナーほどではないが艦が軋む音に驚いている。
 なのに先任になれたのは何故だろう? ヒトラーユーゲントの団長を経験したことが高く評価されたのか? 古参の機関長は次第に先任への不快感を露わにしていく。しかし、魚雷発射の指揮ぶりは艦長の助言があったとはいえ3隻撃沈の戦果、もともと表情に乏しいとはいえ沈没時では冷静さを保ち、負傷した航海長を必死に介護するなど、立派に先任の務めを果たしていた。
 2時間バージョンや3時間バージョンでは割愛されているが、完全バージョンでは先任が抱く信念はヒトラー信者だからではなく、婚約者を連合軍の空襲で失った悲しみが背景にある事が描写されている。
 
 先任士官の後ろで同じ2本線の袖章の若い士官が巨乳の熟女シャンソン歌手に言い寄っている。画面ではよく判らないが、特徴から次席士官かもしれない。歌手の太腿に頬ずりしたりとなかなか親密だ。次席士官はこの後で炭酸水を歌手の股間に吹き付け、怒った彼女が追い掛け回す。

艦長とトムセン

 上記写真はカウンターで些か真面目な話をしているトムセンと艦長。酩酊状態の髭面トムセンは酒のアテにゆで卵を食べ、艦長は辛気臭くビアグラスのビールを一気に飲む。ビアグラスのビールは光の加減かもしれないがやや色が濃いピルスナーに見える。フランスの軍港とはいえドイツ海軍の士官クラブだから本国からビア樽を仕入れているかもしれない。
 艦長はあまり酒がすすんでいないのか、あるいはアルコールに強いのか、まだしらふだ。2人の襟元のネクタイの結び目あたりには1級鉄十字勲章が光っている。
 2級勲章はリボンだけを第2ボタンのホールに引っ掛けて飾るが、1級はネクタイのように襟に飾る事が多い。


 さて次に登場する酒盛りの場面は、物語もラスト近くになっている。物語の大詰めであるジブラルタル海峡を突破しようとして英軍の返り討ちにあい一度は沈没してしまうが乗組員全員の必死の復旧で辛くも浮上し連合軍の攻撃を逃れてイタリアの目的地へ航海する途中の場面。

兵曹長が持つペックス

 浮上する前、艦長は乗組員に対し「浮上に成功したらビールをふるまう」と約束、上記写真では約束のビールを手に深海からの生還を祝う乗組員たちが英軍のティペラリーソングを歌いながら乾杯するところだ。向かって右側の兵曹長が右手で握っているビール瓶、写真では判りづらいが映画ではペックスのラベルがハッキリと確認できる。

  現在、世界で流通しているドイツビールではナンバーワンの出荷を誇るビールがペックスである。産地はドイツ北部のブレーメン。ラベルのトレードマークにはブレーメンを表す「鍵」の紋章が取り入れられている。(ブレーメンの紋章にある鍵は角度が違うが)
 ピルスナータイプのビールで鮮やかな黄金色、抜栓するとホップの芳香が爽やかに広がる。後口にはホップの苦味と麦芽の香りが余韻として残る。ドイツビールの中ではクセが少なく、これがドイツビールでは最も世界で流通している要因かもしれない。初めてドイツビールを飲む友人にはペックスをよく勧める。
 どちらかといえば、よく冷やして飲んだ方が美味い。あるU-boat関連の書籍では、任務を終えて戻ってきたU-boat乗組員は髭を剃り風呂に入って着替えてから「よく冷えたブレーメンのビールを飲む」とあった。このペックスの事だろう。

 何故、ブレーメンのペックスがドイツ海軍御用達のようになっているのか? 私はまだ知らないが、同じ北部には海軍基地として有名なキール港があり、ブレーメンは昔から造船が盛んで軍艦も建造していた事から関係しているのか?
  
機関長とペックス
 
 同じ場面で、復旧作業の陣頭指揮を執りながら壊れた機械や機具を次々と修理し精も根も尽きて機関室の隅で眠りこける機関長に毛布を掛けてやるところ。毛布を持ってきた機関兵の手にはペックスの瓶がはっきり映っている。
  
【原題】DAS BOOT 
【公開年】1981年  【制作国】西独逸  【時間】313分  
【監督】ウォルフガング・ペーターゼン  
【原作】ロータル=ギュンター・ブーフハイム
【音楽】クラウス・ドルディンガー
【脚本】ウォルフガング・ペーターゼン
【言語】ドイツ語 一部イングランド語   
【出演】ユルゲン・プロフノウ(艦長)  ヘルベルト・グリューネマイヤー(ヴェルナー少尉)  クラウス・ヴェンネマン(機関長)  フーベルト・ベンクシュ(先任士官)  ベルント・タウバー(航海士)  マルチン・ゼメルロッゲ(次席士官)   マルティン・マイ(ウルマン見習士官)  アーウィン・レダー(ヨハン機関曹長)  ウーヴェ・オクセンクネヒト(兵曹長)   クロード=オリヴィエ・ルドルフ(アリオ機関兵)   


 
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