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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

自分に喝を入れたい時に 12 「狼たちの午後」 

狼たちの午後」 アル・パチーノ、一人舞台
 
 
 
【原題】DOG DAY AFTERNOON
【公開年】1975年  【制作国】米  【時間】125分  【監督】シドニー・ルメット
【原作】P・F・クルージ トマス・ムーア
【音楽】
【脚本】フランク・ピアソン
【出演】アル・パチーノ(ソニー)  ジョン・カザール(サル)  チャールズ・ダーニング(モレッティ刑事)  ジェームズ・ブロデリック(シェリダン)  クリス・サランドン(-)  ペニー・アレン(シルビア)  キャロル・ケイン(ジェニー)  サリー・ボイヤー(-)  ランス・ヘンリクセン(-)  
  
【成分】笑える 悲しい パニック 勇敢 絶望的 切ない 蒸し暑い コミカル 1970年代 アメリカ
    
【特徴】実際に起こった銀行強盗事件を実写映画化。友人と2人で無計画に銀行強盗をするものの、段取りが悪くて逃走に失敗、そのまま篭城する。人質たちと奇妙な連帯感と信頼関係に結ばれ、さらに周囲の野次馬からも声援をおくられる。「ストックホルム症候群」の典型と評価されている事件だ。
 アル・パチーノ氏が要領が悪く根は小心で優しい主犯を演じる。仕方なく共犯になる友人には、私生活でも長年の親友で「ゴッド・ファーザー」では次兄役を演じたジョン・カザール氏が担当。
 アル・パチーノ一人芝居といってもよい熱演は見て損は無い。
 
【効能】ストックホルム症候群の状況がよく判る。主人公の姿に、自分にも銀行強盗犯になってしまう可能性を垣間見る。
 
【副作用】見ていると暑苦しくなる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。

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タイトル通り、暑苦しい映画
 
 見どころは4つある。第1にあげられるのは、ヤフー解説では「実話を元に」とあるが、実際の事件をほぼ忠実に再現している点にある。(余談1)
 
 第2に、「ゴッドファーザー」で一躍世界的に有名になった2人の俳優が再び手を組んで銀行強盗役を演じる。マフィア一家の心優しい次男役のジョン・カザール氏と冷酷なドンに豹変していく三男役のアル・パチーノ氏である。奇しくも、この作品でも同じようなキャラと相関関係で物語が進む。(余談2)
 
 第3に、事実上のアル・パチーノ氏の一人芝居である。とにかく登場人物の中で一番のオーバーアクションで動き回る。画面占有率がダントツで大きい。舞台でアル・パチーノ氏が1人芝居でやり、他の登場人物やエキストラは音声のみにしても、劇として成立するのではないかと思うくらいだ。実際の犯人も劇場のようなシチュエーションに酔ってアジ演説ぶっていたが、A・パチーノ氏は実際の犯人以上に気合が入りノリにノッていた。
 
 しかし、エキストラや脇役たちも決して手を抜いていない。登場人物全員が額に汗する熱演を披露している。このあたりの気合の入れようがハリウッドの良さかもしれない。(余談3)
 
 第4に、「ゴッドファーザー」では堅気になろうとしていた主人公の理解者であり心優しい次兄だったのに殺されてしまう役、「狼たちの午後」では無謀な親友の犯罪に不本意ながら最後まで付き合ったために殺されてしまう役のジョン・カザール氏に注目してほしい。この撮影の数年後だったか、癌で短い一生を終える。まだ40代に入ったばかりだ。この撮影時は既に癌細胞が牙をむき始めていたかも知れない。本人は知ってか知らずか、この作品にもそれを象徴する場面がある。
  
 実際の事件はたびたび犯罪特集番組などで取り上げられる歴史的事件で、「ストックホルム症候群」の見本ともいわれている。犯人と人質との間に連帯感が生まれ、中には人質が犯人に恋愛感情を抱いてしまう場合がある。
 この映画でモチーフとなった事件では、犯人と銀行職員と警察と野次馬の4者との奇妙な連帯感と信頼関係と緊張感が、うだるような暑い午後の大都会(余談4)で全米に実況中継されたことにある。今でこそ「劇場型政治」「劇場型犯罪」という表現が多用されているが、この事件はそのハシリかもしれない。今や庶民もメディアを気軽に利用する時代になってきた。
 
 最後に、この映画には「悪人」は一人も出てこない。残酷描写も暴力描写も一切無い。全員、犯人も人質も警官も気の毒で平凡な小市民たちである。映画は銀行強盗という事件だけを切り取って描写しているが、当時のアメリカ人の世相や生活臭をよく現している。(余談5)
 
(余談1)映画会社ワーナーは、服役中の犯人から約200万円で原案料を買ったらしい。安く買い叩かれた感がする。さすが資本主義だ。
 
(余談2)2人は同じイタリア系アメリカ人であり大学時代からの友人である。
 
(余談3)日本のTVドラマや邦画にありがちなのが、騎馬軍団で突撃する場面で演技しているのはカメラ中央の主役だけ、周囲の乗馬エキストラは馬に乗っているだけだった。私が監督だったら「演技せぇーよ!お前ら映画に出演しとんのやぞ!わかってんのか!」と怒鳴る。
 昔、加藤剛氏がジンギスカンを演じたとき、側近役の田中邦夫氏が「テムジン、負け戦なのに我々の軍は士気が高い」という場面がある。しかし、無表情で俯き加減で馬を駆るエキストラたちは、どう観ても意気消沈の敗残兵だ。笑えよ! 雄叫び上げろよ!
 
(余談4)原題は「DOG DAY AFTERNOON」。最初、私は意味としては「犬たちの午後」だと思っていた。社会の底辺で這うように生きる野良犬のような登場人物たちの群衆劇と思っていた。邦題で「犬」ではインパクト薄いから「狼」にしたのかな、と。
 ところが、英語好きの友人から「ちゃうで、それは『暑い日の午後』やで」と言われた。
 
(余談5)主人公の犯人は性同一障害の「女」と結婚していたことからゲイたちの支持を得る。作中でもゲイたちのデモ隊がやってきて犯人たちを讃えていた。
 因みに、ジュディ・ガーランド氏は当時の俳優の中では同性愛や性同一障害に理解がある数少ない存在であり、ゲイたちの間ではアイドル以上に崇拝されていた。作中の事件があった3年前に逝去している。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(脚本賞)(1975年) LA批評家協会賞(作品賞)(1975年)
 
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狼たちの午後 (1976年) (Hayakawa novels) パトリック・マン
 

 
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