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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ゾンビ大陸 アフリカン」 孤独を楽しむ時に〔54〕

ゾンビ大陸 アフリカン」 
ゾンビ映画史上初のアフリカ舞台?

 
 

【原題】THE DEAD
【公開年】2010年  【制作国】英吉利  【時間】105分  
【監督】ハワード・J・フォード ジョン・フォード
【原作】
【音楽】イムラン・アーマド
【脚本】ハワード・J・フォード ジョン・フォード
【言語】イングランド語 一部現地語(ニジェール・コンゴ語族系?)       
【出演】ロブ・フリーマン(ブライアン・マーフィー中尉)  プリンス・デヴィッド・オシーア(デンベレ)  デヴィッド・ドントー(-)
    
【成分】悲しい 不思議 パニック 不気味 恐怖 勇敢 絶望的 切ない 西アフリカ
 
【特徴】ゾンビ映画史上初のアフリカ舞台という前評判。アフリカでも低予算でゾンビ映画が作られている可能性はあるが、少なくとも世界中で公開される「メジャー作品」としては初。
 広大なサバンナの平原にポツリポツリとゾンビらしき人影が映る構図は、忍び寄る死の影のようでジワジワ恐怖が襲う。
 
 ラストの場面は、感動的な絶望だ。
      
【効能】真夏の熱帯夜で見ると涼がとれる。孤独な夜を楽しみたい時に最適。
 
【副作用】救いようのないラストにテンション下がる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。   
そういえば、アフリカは初めてだな。 
あれ? 
サバンナの肉食獣はゾンビを襲わないのか?
 

 アフリカを舞台にした初のゾンビ映画、という前宣伝。たしかに言われてみれば、欧米や日本はゾンビ映画が大量生産されるので舞台も欧州・北米・アジアが多い。またアメリカのB級映画などでは中南米を舞台にするモノもある。オーストラリアのゾンビ映画も観た事がある。アフリカ大陸だけ無い。(余談1)
 ただ、世界中の映画を四六時中映画を観ている訳ではないので、単に私が知らないだけでアフリカにもゾンビ映画はあるだろうと思っていた。何しろ、ゾンビ映画は低予算映画の題材として優れているからだ。本当のところはどうなんだろう? 南アフリカあたりは制作していそうな気がするのだが。

 さて本作のデキだが、素晴らしい内容だった。イギリスの監督がメガホンを取り、エキストラはロケ地での現地採用だろうか? みんな見事なゾンビぶりだった。
 私としては、アフリカ人を単独主人公にして欲しかったのだが、それでは欧米市場でのセールスに不利だろう。主役は世界中に軍隊を派遣しているアメリカ軍に所属する少し老けた白人の技術将校ブライアンと現地のアフリカ人兵士デンベレの二人だ。ブライアンはアメリカらしく家族の元へ帰るための脱出、デンベレは息子を探すため。
 ブライアンがゾンビに襲われているところを偶然見かけたデンベレが助ける。デンベレにとってブライアンは侵略者、だが二人の利害は一致、家族に会うため助け合いながらゾンビ地帯から脱出行を展開する。

 近年は超人的な運動神経を発揮するゾンビが流行りだが、本作はロメロ系正統派の緩慢ゾンビである。またそうでないと説得力が無い。超人的ゾンビでは、人間側は態勢を立て直せずあっという間に全滅、主人公たちが生き延びることに説得性が出ない。緩慢ゾンビなら、生存者は十分対応できるし、油断するとワラワラ集られてやられる場面に説得力が出てくる。
 本作でも、広大なサバンナ平原に人影がポツリポツリ、これがジワジワ忍び寄る死の影を印象付けて格調高い恐怖を演出している。(余談2)

 ラストは感動的でもあり悲しくもあり、希望が見えそうでもあり絶望そのものでもある場面で終わる。私は思わず主人公たちに感情移入して涙が滲んだ。(余談3)
 
(余談1)ゾンビといえば主にカリブ海一帯に定着しているブードゥー教が生みの親、そのブードゥー教のルーツは西アフリカなので、逆に今までアフリカ大陸を舞台にしなかったのが不思議かもしれない。いわば本作は正統派ネイティブ・ゾンビ映画だ。もちろん、舞台も西アフリカだ。途中、呪術師の姿が効果的に現れムードを高める。
 
 一説によれば、白人らキリスト教勢力がブードゥー教を弾圧するために、ゾンビをホラーで扱い貶める意図があったとか。一方、ブードゥー教も弾圧を逃れるためにキリスト教と融合土着化を謀った。
 
(余談2)しかし、緩慢な動きでサバンナの平原を闊歩していたら、肉食獣の格好の標的になるはずだが。腐りかけの肉を好む獣も多い。噛まれただけでゾンビ化するのであれば、アフリカに生息する動物もゾンビを喰らって一斉にゾンビ化するはずだ。しかし、作中には人間しかゾンビにならないし、ゾンビを襲う動物もいない。
 本作最大の突っ込み箇所だろう。低予算作品だから野暮を言ってはいけないのだが。しかし、イタリア産ゾンビ映画「サンゲリア」では鮫に襲われるゾンビがあった。美女が全裸のままアクアラングを着けてスキューバーダイビングしてたらゾンビが襲ってきて、そこへ鮫が腐った肉の臭いに釣られてゾンビを襲う有名なシーン。だから、やはり野暮を言わざるを得ないか。

(余談3)主人公ブライアンは道中、ゾンビに追われている母子と出会う。子供はまだ乳飲み子で母親はゾンビに脚を噛まれて負傷していた。ブライアンに子供を託し、自分を銃で撃ってくれと懇願する母親に扮した現地俳優は良い表情をしていた。素人のエキストラなら名優だ。
 鑑賞当時、私も乳幼児を抱えているので、あの厳しいアフリカの自然で子供を抱えての逃避行には少し胸が痛む。乳をやらないとすぐに脱水症状になって命の危険があるが、都合良く難民トラックと擦れ違い、ブライアンはすかさずトラックの人に赤ん坊を押し付けた。観る私も若干ホッとした。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔
 


 
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