ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ゾンビ革命 -フアン・オブ・ザ・デッド-」 絶望から脱出しよう〔36〕 

ゾンビ革命 -フアン・オブ・ザ・デッド-」 
社会主義国キューバのノー天気ゾンビ映画

 

 
【原題】JUAN DE LOS MUERTOS
【英題】JUAN OF THE DEAD
【公開年】2011年  【制作国】西班牙 玖馬  【時間】96分  
【制作】
【監督】アレハンドロ・ブルゲス
【原作】
【音楽】フリオ・デ・ラ・ロサ
【脚本】アレハンドロ・ブルゲス
【言語】スペイン語 一部イングランド語       
【出演】アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス(フアン)  ホルヘ・モリーナ(ラサロ)  アンドレア・ドゥーロ(カミーラ)  アンドロス・ペルゴリーア(ブラディ・カリフォルニア)  ハス・ビラ(チナ)  エリエセル・ラミレス(プリモ)  アントニオ・デチェント(-)
      
【成分】笑える 楽しい パニック 不気味 勇敢 絶望的 セクシー コミカル ホラー ゾンビ キューバ ハバナ
  
【特徴】社会主義国キューバが制作したゾンビ映画。

 社会主義国というと言論が厳しく統制されユーモアを解さない暗くてお堅いイメージがあるが、本作にはそんな要素は微塵もない。明るくてユーモアがあって下ネタ満載のコメディである。
 革命広場のゲバラのネオンサイン前で群がるゾンビに感動、旧ソ連に例えれば赤の広場の聖ワシリイ大聖堂前にゾンビ、中国に例えれば天安門広場の毛沢東の肖像前にゾンビ、北朝鮮に例えれば万寿台の金日成銅像前にゾンビが集まっているようなものである。
 主人公たちとゾンビとの決戦は、ハバナの観光名所である海岸通り(マレコン)だ。

 全編にわたって、悲壮感の無いノー天気の下ネタ満載の内容、制作者たちはきっと絶望する事を知らない。
      
【効能】絶望した時に観ると生きる力が湧き起る。
 
【副作用】恐怖を期待して観ると拍子抜け。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。   
絶望しないノー天気な主人公たち。

 これは素晴らしいソンビ映画だ。全編通じて悲壮感は殆ど無い、ノー天気でマイペースで緊張感のかけらも無く、ダラダラしたテンポでブラックなギャグや下ネタを連発させながら物語が進む。(余談1)
 
 主人公ファンは松重豊氏に雰囲気が似た四十過ぎの中年男性、一応は漁師をやっているようだが、漁をしてる様子は無く筏のようなボートで海に出るも日向ぼっこ三昧、関心は銭儲けと昼下がりの情事、背が高くスマートなので女にはもてるようだ。20歳前後になる娘カミーラがいるが怠け者の父に似ずしっかり者で常識をわきまえた美女、父子関係は険悪。
 主人公の相棒ラサロは主人公と同年輩で、同じように怠け者だが若干は仕事をしている。関心事はファンと同じだが背が低く肥えて、もてない君。20歳前後の息子ブラディがいるが、長身でイケメン、容姿は父に似なかったが怠け者でいい加減な性格は受け継ぎ、父とは腐れ縁のように行動を共にする。
 以上、4人に加えて、オネェ系の若者チナ(余談2)にレスラーのような巨漢のプリモが加わり、彼ら変わり者たちが物語を引っ張っていく。
 
 冒頭からゾンビ騒動の臭いがする。ファンが水死体を釣り上げたり、テレビでは変な伝染病の流行を伝えている。やがて、ファンたちの周辺で狂犬のように噛み付きたがる人が現れはじめ、気が付いたら街はゾンビだらけになっていた。(余談3)
 
 ところがこの作品は他のゾンビ映画と違ってバイタリティに溢れている。ファンはなんとゾンビ退治のビジネスを思いつき、娘を巻き込んで仲間らと始めるのだ。幸いゾンビの多くはロメロ系の緩慢ゾンビ、たまに生きている人間と同じくらいの運動神経のあるゾンビに気をつけさえすれば、ヌンチャクや櫂や鉈で簡単に倒せる。またファンは兵役の経験があるのか格闘術には長けていた。

 しかしドジも多い。銛の狙いが外れて善良な近所のお婆さんを殺してしまったり、ゾンビに追われている車椅子のお爺さんを助けるかと思いきや、車椅子を強奪してお爺さんはゾンビの餌食に、依頼を受けたゾンビ退治に夢中になって気が付いたら善良な依頼主まで殺してしまったり、車で逃げようとしたらエンジンがかからずカミーラはドン臭い父にムカついて車から降りてゾンビを倒しながら前進する。娘は父親譲りの運動神経で強い。
 
 節目節目の事件には、社会主義国ならよくある街の革命スローガンの看板などが対比するように画面に映ったり、せっかく窮地を一人のアメリカ人に助けてもらったのに、これまた手が滑って銛がアメリカ人の心臓へ発射。なんと脱力感のあるブラックなギャクばかり、これでもかと連発。
 
 そしてラストは意表を突くセンスに爆笑を通り越して感動してしまった。詳しくは書かないが、並みの社会主義国映画なら革命スローガンを入れるはず、キューバならBGMに「祖国か死か」の言葉が連呼するのが普通だが、なんと英語の「マイウェイ」、こんな映画を撮れるヤツは絶望を知らない。

(余談1)キューバのユーモア感覚は以前に観たアニメ「フィルミヌート」で知っている。他の社会主義国では考えられない自由で明るくて伸び伸びとしたギャグの連発が魅力だ。

(余談2)キューバでは社会主義国として異例にも性同一性障害に理解がある。フィデル・カストロの医療立国政策もあって、性同一性障害と診断されたら無料で性転換手術を受けられる。

(余談3)ゾンビ現象を「反体制」や「米軍」の仕業と言う場面が頻繁に出てくる。実際、カストロ政権誕生まもない頃にアメリカの支援を受けた亡命キューバ人からなる部隊が侵攻するビッグス湾事件が起こっている。またカストロの前の政権からキューバにある米軍基地を追い出すことができなかったため、常に領内に米軍の杭を抱えている状態が続いている。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 名作
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔


【受賞】ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭銀カラス賞
 

 
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