ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

セクハラ・パワハラのグレーゾーン 晴雨堂の晴耕雨読な日常[百四十九] 

人権啓発の社内研修に参加して 
セクハラ・パワハラのグレーゾーン


【雑感】毎年12月4日から12月10日が人権週間に定められている。これは1948年12月10日第三回国際連合総会にて世界人権宣言が採択され、それを受けて日本は翌年に人権週間を定めたのが始まりだ。
 この時期になると、自治体や学校、そこそこの規模の事業所などは人権啓発の教材ビデオによる学習会を行う。私の職場でもラインを止めて食堂に集合し企業用に制作された啓発ビデオを小一時間ほど見せられた。

 人権啓発というと、私の世代では小中学生時代に部落差別反対をテーマにした映画を鑑賞させられたものだ。その多くはステレオタイプに演出された、少なくとも私の身の回りの日常からはかけ離れた内容ばかりだ。総じて「偏見と差別はいけませんよ」というだけのものだった。だから説得力がない。

 ところが近頃の啓発ビデオはよくできている。テーマが部落差別や人種差別といった大掛かりなものではなく、日常茶飯事のセクハラ・パワハラ・ジェンダーというのもあるが、題材とされるエピソードは聴講者が受け入れやすいよう普段の職場の風景でよくある内容に絞られていた。上司が新人の若い男性部下を叱責(拳や平手は振るわない)する場面や、中堅の男性社員が派遣の女性社員に仕事の打合せと称して食事に誘う(ちっくと誘い方がしつこいかな)場面などだ。いや、私自身が体験したパワハラ(旧日本軍なみ)や目にしたセクハラ(あからさまな猥談と執拗なスキンシップ)よりも遥かに軽めだある。
 しかも被害者側の言い分だけでなく加害者側の言い分も描写されていて、一方的に「こんな行為は差別だからいけません」と説教するのではなく、聴講者に考えてもらうよう工夫されていた。

 出演者たちはプロの俳優で監督と脚本に従って演技をしているのだが、ドキュメント形式をとっており、エピソード毎に出演者が姿なきインタビュアーに「言われてどう思ったのか?」「なぜあんな事を言ったのか?」という問いに答える。そしてその都度、実際にハラスメントの問題に関わっているカウンセラーや弁護士が解説する場面に切り替わる。あくまで現状の解説であって最終的な結論は敢えて述べない。

 このビデオで問題にしたのはグレーゾーンである。あからさまなハラスメントではなく、相手に対する好感度によって変化するレベルの言動だ。相手への好感度が高ければ肩を触られただけではセクハラにはならないし逆に嬉しくなる。ところが嫌悪感が高ければ隣の席に座っているだけでもセクハラを受けたような緊張感が生じる。

 もっと極端に言えば、今年は大阪のスポーツ強豪校で生徒が自殺、体罰を巡ってマスコミ等で論議になり問題の教諭には有罪判決が出たが、もし自殺者の親御さんが「巨人の星」の星一徹のような人間だったら教諭を糾弾するどころか「我が愚息が愚かな事をしでかし誠に申し訳ありません。どうか先生、自分を責めずこれからも・・」と体罰もハラスメントも認識しないかもしれない。
 また昨今のモンスターペアレントであれば、体罰以前に教諭が抑えて丁寧な言い回しで注意しても語調がきついだけで「パワハラや! 土下座して謝れ!」となるかもしれない。

 教材ビデオでは、一つの目安として自分の家族が同じような目にあったときにどう思うかを提示していた。一見すると妙案だが、前述したように星一徹やモンスターペアレントの感覚であればこの目安は役に立たない。
 私自身は「自分がやられて嫌な事は他人にはやらない」を厳守しているが、教材ビデオで上司が部下を叱責している場面の上司の言い分は「自分も若い頃は同じように叱られたが、それが現在の仕事に活き、良かったと思っている」なので、この目安は役に立たない。実際に私も嫌な事は他人にはやらないが、良かったと思ったことは他人にも積極的にやってしまう人間なのである。
 私が晩飯を作るとき、自分が食べて「美味い!」と思ったものは是非とも他の方にも食べてほしいと思ってしまうので、連れ合いからは「辛い!」と批難される。

 ただ、目安にはならないが確実に心の隅に留意すべき事が一つある。それは「相見互い」だ。グレーゾーンというだけあって、実は被害者加害者関わらず誰でもやってしまう事なのだ。作中では描写されていなかったが、上司から叱責された新人も学校の後輩にはパワハラをやってしまっているかもしれない。セクハラを受けた派遣の女性社員も新人の男性に「男のくせに情けない」などと立派なセクハラ発言をしているかもしれない。
 相手に厳しくすれば自分自身も厳しくしなければ信用を失うものなのだが、考える余裕のない人間は得てして脊髄反射できつく出てしまう。他人に厳しく自分に甘い格好になると顰蹙の的だ。

 私は少々の事は「嫌な事は相見互い」と相手を赦す。連れ合いが私への憤懣を並べ始めた時、ここぞとばかりに連れ合いが過去にしでかした失点を詳細に列挙して、「しかし私は赦しているんだよ」「君は私を批難する資格はとうの昔に失ってるんだよ」と諭す。
 ちっくと私は陰険かな。 


 
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『連れ合いが私への憤懣を並べ始めた時、ここぞとばかりに連れ合いが過去にしでかした失点を詳細に列挙して、「しかし私は赦しているんだよ」「君は私を批難する資格はとうの昔に失ってるんだよ」と諭す。』て、言えるって、かっこいいですよね。私は、なかなか、その時言えず、後で腹が立ってきたりします。
[ 2013/12/28 21:47 ] [ 編集 ]
木下翔平氏へ

 いやいや、キメの発言をする前段階が長い忍耐の日々ですから。


> 『連れ合いが私への憤懣を並べ始めた時、ここぞとばかりに連れ合いが過去にしでかした失点を詳細に列挙して、「しかし私は赦しているんだよ」「君は私を批難する資格はとうの昔に失ってるんだよ」と諭す。』て、言えるって、かっこいいですよね。私は、なかなか、その時言えず、後で腹が立ってきたりします。
[ 2013/12/29 23:34 ] [ 編集 ]
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