ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

カレーライスは和食か否か 近頃の現象[九百七十] 

カレーライス和食か否か

 先日「ユネスコ無形文化遺産」に登録された「和食」。これをきっかけに和食が注目を集めている。それでは日本の食生活に深く浸透する独自の料理、カレーライスや焼きそば、ラーメンなどは和食と呼べるのだろうか?(不破雷蔵)
 
【雑感】本論に入る前に、少し生臭い話をしよう。
 
 私は20歳代前半の頃にチャリンコで日本一周をした。残念ながら、沖縄だけは路銀が底を尽きかけていた事と実家が私の将来を心配して何度も帰るよう催促してきたため、いずれ行く機会があるだろうと諦めた。残念ながらそれから20年以上が経過したが未だ行く機会が無い。
 とはいえ、北海道の稚内から鹿児島の佐多岬まで走破した。また沖縄については大阪の大正区に沖縄出身者が多くリトル沖縄的街になっているので沖縄文化に触れる機会は比較的多かった。
 
 日本を旅して思った。基本的に青森から鹿児島までほぼ同じ風景なのだ。日本的建築があり、同じ水田があり、神社があり、白壁のお城があり、桜があり、ようするにありふれた日本の風景が青森から鹿児島まで続いている。
 気候にしても、雪が多いとか夏が厳しいといった多少の差異はあっても、四季豊かな日本の気候だ。郷土料理も基本は味噌汁と御飯の和食

 ところが北海道と沖縄だけは明らかに毛色が違う。北海道は亜寒帯で水田より酪農が盛ん、家も日本建築より屋根の角度が急な北ヨーロッパ風が多いという気候風土は勿論のことだが、松前藩が治めた渡島地方を除けば、概ね札幌市や帯広市のような碁盤目状の町が点在する。私が北海道を旅した頃は道民の多くは青森以南を「内地」と呼んでいたし、先住民であるアイヌ民族の存在も強い印象として残った。

 沖縄へは未だ一度も足を踏み入れていないが、大阪では沖縄の文化に触れる機会が多い。やはり青森から鹿児島までの日本文化とは異質なものを感じた。音楽や衣装や食事なにもかもである。蛇の革を張った三線で奏でる音色は日本のどの民謡とも違う、伝統的衣装は和服とは微妙に違うし髪型は中国みたい、食事は豚肉を用い和食ではあまりやらない油炒めがある。
 そしてこの沖縄料理は、和食の一つとして紹介される事は少ない。和食とは別系統の独立した沖縄料理あるいは琉球料理と紹介される事が多い。
 
 なぜ、北海道と沖縄だけ「異国情緒」であるか、理由は簡単である。二つの地方とも明治に入ってから完全に日本国に併合されたからである。日本国としての歴史が本格的に回るようになってまだ百数十年、長い日本の歴史からみて日が浅い。だからこの二つの地方に対して日本人の意識はまだどこかに異国意識がある。現地の人間も、本州・四国・九州の人間を北海道では「内地」と呼び、沖縄では「ヤマト」と呼ぶ。


 さて、話を戻そう。料理の世界もよく似ている。
 カレーライスやラーメンが庶民に定着したのは明治後半から大正にかけてだ。欧米では完全に「日本料理」として認識されているが、当の日本人は明治以前に伝わったり考案された料理は和食に入れ、明治以降のモノは「国民食」になっている事までは認められても「和食」とは思えないのである。「内地」や「ヤマト」の人間が北海道や沖縄に「異国情緒」のようなものを感じるのと同じだ。

 ではこのままカレーライスやラーメンなどは「和食」に組み込まれないかといえば、そうでもない。
 日本の長い歴史から考えたら、実は丼物や天麩羅や江戸前寿司といった料理は最近のモノである。ほぼ現在の形となったのは18世紀末から19世紀の初め、時代劇の舞台によく使われる文化文政期である。しかし立派に和食あつかいだ。
 天麩羅などは16世紀の戦国時代にポルトガルやスペインなどから伝わった調理法といわれているが、今や寿司と並んで外人があげる和食となっている。長崎の卓袱料理も江戸時代に流行った中国料理の形を真似たもので見ためも中華風なのだが日本の郷土料理の一つに数えられている。
 カステラも見ためは西洋のパンケーキであり、いわゆる伝統的な和菓子とは製法が異なっているのだが、これも日本の菓子のカテゴリーだ。
 これらの料理が定着した江戸時代の頃は、明らかに伝統の和食ではない。卓袱料理やカステラは小金持ちが異国情緒を楽しむための料理や菓子であり、天丼・鰻丼・握り寿司は庶民が気楽に食べる流行りのファーストフードだった。それらが「和食」に組み込まれ、仰々しく和装の女将が運んでくるような高級料理になっていったのは時間の経過が成せる業だ。

 もし日本がこの先、第二次大戦や明治維新のような激変を体験しながら後百年たてば、そのときカレーライスやラーメンなどの料理が残っていれば「和食」と分類されるだろう。


 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト
[ 2014/01/05 00:47 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
164位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
72位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク