「モーターサイクル・ダイアリーズ」
政治的無垢の頃のチェ・ゲバラ。 【原題】THE MOTORCYCLE DIARIES
【公開年】2003年
【制作国】英吉利 亜米利加
【時間】127分
【監督】ウォルター・サレス【原作】エルネスト・
ゲバラ アルベルト・グラナード
【音楽】グスターボ・サンタオラヤ
【脚本】ホセ・リベーラ
【言語】スペイン語
【出演】ガエル・ガルシア・ベルナル(
エルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナ)
ロドリゴ・デ・ラ・セルナ(アルベルト・グラナード) ミア・マエストロ(チチーナ) メルセデス・モラーン(セリア・デ・ラ・セルナ(エルネストの母)) ジャン・ピエール・ノエル(エルネスト・
ゲバラ・リンチ(エルネストの父))
【成分】泣ける 楽しい ロマンチック 知的 切ない 旅 1950年代前半 南米
【特徴】チェ・ゲバラがまだノンポリ学生だった頃の物語。
ゲバラが革命に身を投じる以前に、友人と2人で南米放浪をやった日記が原作。
南米放浪の旅をリアルの描写しているので、ツーリングやチャリンコ旅行経験者はもろに感情移入できる演出、旅に行った事の無い人でも擬似放浪体験できる。
またゲバラがなぜ革命に身を投じるようになったのか、なぜキューバ革命政権の要職を捨て世界革命を目指しボリビア山中でもがくように戦い死んでいったのかが、この映画で解る。
なお、作中でゲバラの親友に扮している
ロドリゴ・デ・ラ・セルナ氏、お気づきのようにゲバラと同じ名字である。彼は
チェ・ゲバラのハトコだ。
【効能】旅の疑似体験ができる。革命家ゲバラの原点が垣間見える。
【副作用】冒険活劇を期待している人、娯楽映画を期待している人は退屈する。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
「旅」の経験者として言えば・・。 私はこの映画には過度に感情移入してしまう。
ゲバラが体験したことに比べれば遥かにショボイものだが、しかし広義の類似体験ではある。
この映画にある革命家になる前の
ゲバラは、友人と2人でバイクに乗って放浪のたびに出かけた。
ゲバラが旅に出た同じ歳頃に私もチャリンコで日本一周の旅に出た。映画と同じように沢山の荷物をチャリンコに積み、バイクと違ってチャリンコなので汗だくになりながらペダルをこいだ。
一生を喘息に悩まされた
ゲバラと違い、私の喘息は中学生の頃には症状が消えてはいた。しかし
ゲバラが喘息というのは親近感があった。喘息の症状が消えたのは、水泳とチャリンコのおかげだった。だから、苦労して得た人並み以上の肺活量を捨てたくなかったので
ゲバラみたいに葉巻を吸おうとは思わなかったし、バイクに乗るという発想は無くチャリンコ旅行に固執したのだ。
ゲバラの南米の旅と違い、その行程の半分以下の距離しか走っていないし、日本一周なので海外には飛び出していない。(余談1)貧富の差は無い安全な日本なので気楽な旅だった。
ゲバラは旅立つ前にガールフレンドに会うのを楽しみにしていたそうだ。旅先でどんな女性と出会いがあるのか、ワクワクしている様が映画にも出ている。私もそこは全く同じで、当時文通していた女の子に会えるのを楽しみにしていた。映画と同じように文通相手の女の子の家に泊まってご馳走をいただいた。(余談2)
ゲバラは南米社会の矛盾を目の当たりにし、それまでの価値観や信条を劇的に変えてしまい、友人と呑気に語り合い診療所を開く夢を持っていた自分には戻れないことを悟り、革命家へと突き進んだ。
私が旅に出たとき、林野庁の知床森林伐採事件と、石垣島空港建設問題があった。旅先で知り合った自然保護派の学生と少しやりあった。私は市民運動や政治運動というものを半ば軽蔑していたのだが、それがいつの間にか集会を主催したり、仲間を議会へ送り込むために選挙運動をやったり、藝術家になる妄想を忘れて政治に関わるようになった。
ゲバラは革命家として最期を迎えた。私は身体を壊して政治から足を洗った。ここから完全にベクトルの向きが正反対になる。私の貧相な体験とゲバラの偉大な足跡を並べるなど、ゲバラ崇拝者から雷が落ちそうだが、ゲバラが歩んだ道と僅かに舗装状態が似た道を私も歩いたような気がする。
人生というものは面白いものだと改めて実感する。似たような体験をしながら、全く感じ方が違ったり、違う道を歩んだり、変なところで若干似ていたり。 レビュアーの中には、感動できなかった人間もいる。確かに物語にメリハリが乏しい。波乱万丈な劇的なエピソードがあるわけでなく、淡々と話が進む。
しかし、それがかえって私にはリアルで切なかった。ラストのゲバラとアルベルトが別れる場面は、私も泣いてしまった。
もし、変に脚色していたら、むしろ私は吐き気をもよおすほど不快を感じたであろう。そしてレッドフォード氏やサレス監督に「おまんは「旅」やったことあんのか!」と非難したかもしれない。
ロバート・レッドフォード氏とサレス監督に敬意を表する。過度の脚色・演出の誘惑に負けず、よく制作してくれた。台詞がスペイン語なのも素晴らしい。
(余談1)もっとも、南米は概ねスペイン語が公用語なので、国境を越えても会話に不自由は無い。言葉のストレスに限っていえば、日本一周と変わらない。
(余談2)後に、ゲバラに付き合ってボリビアへ渡ったキューバ軍将校たちは、ゲバラが処刑された後も「コマンダンテ・
チェ・ゲバラ」の名の下に結束し、包囲網を突破してボリビアを脱出しキューバに生還した。その勇士達が青年ゲバラが記したこの日記を読んだら、ビックリするだろう。神様のような革命家の若い頃は自分たちと同じように俗なことを考えていたのだから。いや、ゲバラの家は貧農ではなく大学に行けるほどの家庭なので、プチブルの呑気な遊び人時代があったことに驚愕するかもしれない。
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☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔 【受賞】アカデミー賞(歌曲賞)(2005年)
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ゲバラが体験したことに比べれば遥かにショボイものだが、しかし広義の類似体験ではある。
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ゲバラが旅に出た同じ歳頃に私もチャリンコで日本一周の旅に出た。映画と同じように沢山の荷物をチャリンコに積み、バイクと違ってチャリンコなので汗だくになりながらペダルをこいだ。
一生を喘息に悩まされた
ゲバラと違い、私の喘息は中学生の頃には症状が消えてはいた。しかし
ゲバラが喘息というのは親近感があった。喘息の症状が消えたのは、水泳とチャリンコのおかげだった。だから、苦労して得た人並み以上の肺活量を捨てたくなかったので
ゲバラみたいに葉巻を吸おうとは思わなかったし、バイクに乗るという発想は無くチャリンコ旅行に固執したのだ。
ゲバラの南米の旅と違い、その行程の半分以下の距離しか走っていないし、日本一周なので海外には飛び出していない。(余談1)貧富の差は無い安全な日本なので気楽な旅だった。
ゲバラは旅立つ前にガールフレンドに会うのを楽しみにしていたそうだ。旅先でどんな女性と出会いがあるのか、ワクワクしている様が映画にも出ている。私もそこは全く同じで、当時文通していた女の子に会えるのを楽しみにしていた。映画と同じように文通相手の女の子の家に泊まってご馳走をいただいた。(余談2)
ゲバラは南米社会の矛盾を目の当たりにし、それまでの価値観や信条を劇的に変えてしまい、友人と呑気に語り合い診療所を開く夢を持っていた自分には戻れないことを悟り、革命家へと突き進んだ。
私が旅に出たとき、林野庁の知床森林伐採事件と、石垣島空港建設問題があった。旅先で知り合った自然保護派の学生と少しやりあった。私は市民運動や政治運動というものを半ば軽蔑していたのだが、それがいつの間にか集会を主催したり、仲間を議会へ送り込むために選挙運動をやったり、藝術家になる妄想を忘れて政治に関わるようになった。
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人生というものは面白いものだと改めて実感する。似たような体験をしながら、全く感じ方が違ったり、違う道を歩んだり、変なところで若干似ていたり。 レビュアーの中には、感動できなかった人間もいる。確かに物語にメリハリが乏しい。波乱万丈な劇的なエピソードがあるわけでなく、淡々と話が進む。
しかし、それがかえって私にはリアルで切なかった。ラストのゲバラとアルベルトが別れる場面は、私も泣いてしまった。
もし、変に脚色していたら、むしろ私は吐き気をもよおすほど不快を感じたであろう。そしてレッドフォード氏やサレス監督に「おまんは「旅」やったことあんのか!」と非難したかもしれない。
ロバート・レッドフォード氏とサレス監督に敬意を表する。過度の脚色・演出の誘惑に負けず、よく制作してくれた。台詞がスペイン語なのも素晴らしい。
(余談1)もっとも、南米は概ねスペイン語が公用語なので、国境を越えても会話に不自由は無い。言葉のストレスに限っていえば、日本一周と変わらない。
(余談2)後に、ゲバラに付き合ってボリビアへ渡ったキューバ軍将校たちは、ゲバラが処刑された後も「コマンダンテ・
チェ・ゲバラ」の名の下に結束し、包囲網を突破してボリビアを脱出しキューバに生還した。その勇士達が青年ゲバラが記したこの日記を読んだら、ビックリするだろう。神様のような革命家の若い頃は自分たちと同じように俗なことを考えていたのだから。いや、ゲバラの家は貧農ではなく大学に行けるほどの家庭なので、プチブルの呑気な遊び人時代があったことに驚愕するかもしれない。
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