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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

カップルで泣きたい時に 9 「タイムマシン」 

タイムマシン」 
H・G・ウェルズの曾孫が監督

 

 
【原題】THE TIME MACHINE
【公開年】2002年  【制作国】米  【時間】96分  【監督】サイモン・ウェルズ
【原作】H・G・ウェルズ
【音楽】クラウス・バデルト
【脚本】ジョン・ローガン
【出演】ガイ・ピアース(アレクサンダー)  ジェレミー・アイアンズ(ウーバー)  オーランド・ジョーンズ(ボックス)  シエンナ・ギロリー(エマ)  サマンサ・ムンバ(マーラ)  マーク・アディ(-)  フィリーダ・ロウ(-)  オメロ・ムンバ(-)  ローラ・カーク(-)  ヤンシー・アリアス(-)  アラン・ヤング(-)  フィリップ・ボスコ(-)  ミンディ・クリスト(-)  リチャード・セトロン(-)    
  
【成分】ファンタジー ゴージャス ロマンチック 不思議 パニック 勇敢 切ない タイムマシン 1890年代 紀元後80万年 
   
【特徴】原作はSF小説の大家H・G・ウェルズ、監督はなんとウェルズの曾孫が務めている。
 1960年「タイム・マシン/80万年後の世界へ」のリメイクだが、内容は大巾に改編されて前半は19世紀末の切ないラブロマンス、後半は未来のマッチョなサバイバルアクションに仕上げられてしまった。
 最新の特撮で19世紀末の摩天楼がまだ無いニューヨークの街並を再現したり、19世紀から急速に未来へ時間飛行する時の移り変わる景色などを綺麗に表現。
 前半のヒロインを務めたシエンナ・ギロリー氏の美しさは切ない。
 
【効能】前半は、カップルで観ると涙をさそう。
 
【副作用】後半の急展開で興ざめ。科学考証にこだわったり、ウェルズの曾孫が監督という事で期待した人は激怒する。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
恋愛を織り込んだのは成功だが・・。 

 言うまでもなく、SFの大家H・G・ウェルズ(余談1)が19世紀末に発表した小説が原作で、タイムマシン物の始祖であり古典である。彼の作品以降、世界中で時間旅行を素材にした様々なバリエーションの作品がつくられる。
 小説「タイムマシン」の内容は映画と異なり、女性不在といったほうがいいのか、快活な冒険心溢れる男の子の物語というべきか、主人公である科学者がタイムマシンを作った動機は単純に知的探究心と冒険心だけといっても良い。恋人とのラブロマンスは皆無だ。
 そういう意味では、タイムマシンを製作した動機を映画の主人公では時間を遡って殺された恋人を助けたい思いに改編されているので、たぶん多くの観客の共感を得られるものとして歓迎できる。それによって、物語の起承転結のうち起承の説得力が極めて強くなり、摩天楼が建っていない頃の19世紀末ニューヨーク(余談2)の精密かつシックな再現映像を背景に盛り上がる。原作通りではSF好きでない限り多くの人々にとっては味気ないものに見えるだろう。
 
 この映画は1960年ごろにも映画化されている。こちらは原作に沿った構成をとっていて、さらに制作当時の世界を反映して文明の崩壊を核戦争に設定するなど興味深い。ただ、80万年未来の描写になると当時のハリウッドで流行ったSF冒険活劇になってしまった。未来の人類であるエロイは原作では小学生くらいの可愛らしい女の子のような人々で全く違う言語を話すのに、れいによって80万年も時間が経っているのに人類はあまり変化が無いしグラマーな女性が居て20世紀の現代英語を話す。些か想像力が無さ過ぎる。
 
 今回のリメイク映画では、ウェルズの曾孫が監督を担当することもあって、80万年後の世界をどのように描写されるのかに関心があった。結果は「なんじゃこれ!」だ。基本的に前作と変わりないし、原作の社会風刺・文明批判もなりを潜めていた。引き篭もりがちな科学者で傷心の優男に似合わない主人公がマッチョな冒険活劇を繰り広げられるので、前半の重みある雰囲気が台無しになった。
 せめて今回の映画化ではエロイ族を原作どおりの描写にし、エロイ語を主人公が時間かけて解読して話せるようになるといったエピソードを入れてほしかった。前作の1960年代と違い、今は「アフターマン」や「フューチャーイズワイルド」などがあるのに、何故なんだ? 結局、未来に対するハリウッドの想像力の無さを露呈した。(余談3)
 
(余談1)他に「宇宙戦争」「透明人間」「モロー博士の島」など。
 「タイムマシン」は社会風刺がメインテーマで、当時脚光を浴びていたコミュニズムに傾倒していたウェルズは、イギリスの階級社会や資本家と労働者の対立などを盛り込んだ。80万年後の人類を上流階級が進化して可愛らしいエルフのようなエロイ族になり、重労働にあえぐ下層階級がモーロックというゴリラのような化物に進化していた。機械文明が崩壊した世界で支配階級だったはずのエロイ族はモーロックによって間引きされる。
 この設定はあながち絵空事ではない。例えば遺伝病を回避するために遺伝子操作OKとなれば、やがて最初から遺伝的に優れた素養を持った子供しか産まなくなり、遺伝情報や遺伝操作できる裕福な家庭とそれができない階層の家庭で優性人間化と劣性人間化が進み、人類は完全に生物学的に二種に分化する。
 
(余談2)言うまでもないが、ウェルズはイギリスの小説家なので原作舞台はロンドン。シャーロック・ホームズと同時代人だ。
 
(余談3)時間旅行の場面はさすがだ。しかしCGがある現代の作品としては最低限クリアしなければならない場面でもある。でなければ映画化の意味が無い。
「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2 」でも思った。他にも、場末のB級ドラマ的な間抜けな箇所があったり、がっかりさせられる部分が後半に集中して多い。
 「フューチャーイズワイルド」は二億年後の世界をシュミレーションしたディクソン博士らの空想世界。20年以上前に人類滅亡後5000万年の「アフターマン」も有名。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
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前半、かなりイイ感じでしたよね~。
彼女の死がなければタイムマシンは作られることはなかった、という
未来人の言葉もすごく好きなんですが…
やっぱり後半は、う~ん…と言わずにいられないというか…。

原作ではラブロマンスはないんですね。
機会があったら読んでみたいと思います。
[ 2009/09/24 21:15 ] [ 編集 ]
こんばんは、ひめ氏へ。
 
 原作は女性不在のハードSF的世界なので、ラブロマンスはありません。「2001年宇宙の旅」の雰囲気が嫌いでないなら、面白いと感じるでしょう。
 
 原作者の曾孫が監督なので期待したのですが残念です。80万年という時間をナメてかかっているハリウッドのセンスは貧相ですね。8万年未来ならまだ許せますが。日本語でもたった80年で話言葉はかなり変わっているのに。

> 前半、かなりイイ感じでしたよね~。
> 彼女の死がなければタイムマシンは作られることはなかった、という
> 未来人の言葉もすごく好きなんですが…
> やっぱり後半は、う~ん…と言わずにいられないというか…。
>
> 原作ではラブロマンスはないんですね。
> 機会があったら読んでみたいと思います。
[ 2009/09/25 01:10 ] [ 編集 ]
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[2009/09/20 00:26] ひめの映画おぼえがき
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