ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

ウクライナ・クリミア情勢一考。左派市民が描くコスモポリタンは幻想だ。 近頃の現象[九百九十七] 

ウクライナ>露国境「有事」の緊張 
軍事介入に高まる不安


 ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の編入手続き完了を受け、ロシアと国境を接するウクライナ東部地域では、新たな軍事介入に対する不安が高まっている。東部の要衝ドネツクからロシアに通じる国境検問所では、ロシア軍車両の侵入を阻止するため、路上に幅約3メートルの護岸用コンクリートブロックが配置され「有事」の緊張が増していた。(毎日新聞)

【雑感】ウクライナの政変がここまで拗れるとは思っていなかった。政権が変わっても、クリミア自治共和国は現状のままウクライナの主権下に留まりロシアの黒海艦隊基地も維持する。ふつう、それが落としどころだろう。
 仮にロシア寄りの条件に傾いたとしても、キプロスの東部の例(余談1)があるように分離独立してロシア一国がこれを承認する状態が膠着するのではと思っていた。いくら住民投票の手続きを踏んでも、いきなりの編入は刺激が強すぎる。

 プーチンがこれほどまで強気でいるのは、3つ理由がある。1つは国内事情だ。どこの国でも領土縮小させた政治家は支持率が急落し悪くすると殺されるが、ロシアは取り分けその傾向が強い。ロシア革命の遠因の1つにアラスカをアメリカに売ったロマノフ王朝の例がある。ゴルバチョフ失脚の1つにはバルト三国独立を招いた事。
 プーチンにとってクリミア半島は譲れない問題で、妥協すると国民世論は反プーチンに傾いてしまうだろう。黒海艦隊はロシアの主力艦隊でありヨーロッパや中東を牽制する駒、セバストポリは北国ロシアにとって冬でも凍結しない軍港施設だ。アメリカに例えればハワイ州が独立して太平洋艦隊の母港が政治的不安定に陥るのと同じである。

 もう1つは国際法の問題。泥棒にも三分の理というが、プーチンの言い分は一応筋が通っている。欧米がユーゴスラビア問題に介入し、セルビアの主権下にあったコソボ自治州を独立させた経緯がある。
 評論家の中には「いや、セルビアはコソボに対して弾圧や虐殺などを繰り返したから人道的にやったのであって、クリミアとは状況が違う」と反論するだろうが、私がプーチンならば「コソボを教訓に、ウクライナがロシア人を虐待させないためスピーディに事を運んだ」と言い張る。
 それに今回のウクライナの政権交代は選挙ではなくクーデターのようなもので行われたので合法性に問題がある。クリミアの住民投票が非合法であるなら、ロシアを批難する現ウクライナ政権も非合法となる。

 3つ目、経済的利害関係。プーチンは諸外国の足下を見ている。ヨーロッパ諸国はロシアに対してそれぞれ大きな貸借関係があってあまり強く動けない。アメリカも中東問題で手一杯でかつてのように軍事力を振り分ける事はできない。日本は北方領土問題があって、せいぜい欧米と歩調を合わせる振りをするだけ。中国も国内の分離独立派を抱えているためあまり関与はしたがらない。
 ただ、これによってウクライナはEUに取り込まれ親露政権は生まれなくなるので、常にウクライナとの国境地帯に強力な軍隊を張り付かせていかなければならない。それは最初から織り込み済みで、それ以上にクリミアの価値が大きいという事なのだろう。


 ところで、今回のクリミア問題は決して他人事ではない。プーチンはコソボを例にとったが、200年近く前に実はアメリカにも同様の事件が起こっている。映画「アダモ」の舞台であるテキサスだ。
 「アダモ」のエピソードはアメリカでは美談になっているが、メキシコにしてみればアメリカの侵略である。メキシコが宗主国スペインから独立したときテキサスはメキシコの領土だった。経済の立て直しを急ぐメキシコは北隣のアメリカから移民を歓迎しテキサスの開発を奨励した。
 「アダモ」でもチラリと紹介されているが、メキシコは奴隷制を廃止させているのでアメリカ系移民と対立、やがて移民たちはメキシコからの分離独立を宣言しテキサス共和国を樹立、その後アメリカへ「州」として編入した。

 クリミアをはじめウクライナ東半分もロシア系市民が多いが、実は移民である。ロシアや旧ソ連の政策で、民族国家としての根拠を薄めるためにロシア人の移住を奨励したためだ。したがって大昔からクリミアにロシア人が大勢住んでいたわけではない。先住民的立場はイスラム圏のタタール人だろう。(その前はローマ人やギリシア人も住んでいた)
 中国でも分離独立の動きがあるチベットやウイグルへ漢族(中国人)の移住を推進させている。これも民族国家だった根拠を薄めるためだ。

 そして驚くべき事に、ここまで領土問題や国境紛争が世界中で頻発しているにも関わらず、日本は移民奨励を検討しているという。少子化による労働力不足を手っ取り早く解決するためなのだが、民主党政権ならいざ知らず安倍内閣は保守政権、なんでこんな話が出てくるのかな? 近視眼にもほどがあるぞ。

 20世紀末、長らくインドネシアが実効支配していた東ティモールが国連主導の住民投票で独立した事から、知人の左派市民が住民投票で主権や領土を平和的に決定できるモデルだと絶賛した。
 だがそんな呑気な時代にはならない。なぜ民族というものが存在するのか、なぜ分離独立したいのか、その理由を考えれば住民投票が万能でない、逆に新たな戦争への火種にもなりかねない事は明白だ。

 宇宙人がやってきて、我々は一律「地球人」として支配されるようになったら話は別だが。

(余談1)キプロスは西のギリシア系国民と東のトルコ系国民の連合共和国みたいなものだった。トルコ系の東が独立を宣言したが、承認しているのは隣国トルコだけ。


 
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[ 2014/03/22 23:19 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(0)
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