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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ファイブ・デイズ・ウォー」 感動からエナジーを得よう〔17〕 

ファイブ・デイズ・ウォー」 
「チャンプ」の子役が少佐になってる。



 
【英題】THE LOST BATTALION
【公開年】2001年  【制作国】亜米利加  【時間】93分  
【監督】ラッセル・マルケイ
【原作】
【音楽】リチャード・マーヴィン
【脚本】ジム・カラバトソス
【言語】イングランド語 ドイツ語 一部中国語
【出演】リッキー・シュローダー(ホイットルシー少佐)  フィル・マッキー(-)  ジェイミー・ハリス(-)  ジェイ・ロダン(-)  アダム・ジェームズ(-)  アンソニー・アジジ(-)  ジョージ・カリル(-)
  
【成分】スペクタクル 勇敢 絶望的 第一次大戦 1918年 フランス・アルゴンヌ
     
【特徴】70年代を代表するヒューマン映画「チャンプ」で名子役と讃えられたリッキー・シュローダー氏が主演、文民出身の白面の少佐を演じる。
 原題は「THE LOST BATTALION」、直訳すると「消えた大隊」で映画ファンや戦争映画マニアの間ではこの直訳邦題が通っている。 カタカナ語邦題「ファイブ・デイズ・ウォー」は主人公たちが体験した5日間の激戦を前面に強調した結果で、日本の配給元とアメリカの制作陣の感性の違いが判る。

 第一次大戦中に実際にあったエピソードの映画化。大戦後すぐに作戦に参加した実際の将兵たちを出演させて再現映画が制作されたようだが、たぶんに英雄ぶりを宣伝する目的が鼻に突く内容で反戦色は皆無だったようだ。
 本作の場合は第一次大戦のリアルな戦闘場面に米独両陣営の丁寧かつ公平な描写、ハリウッド映画にありがちな英語しか話さないドイツ兵は登場せず、ドイツ兵はドイツ語を話している。
 TVドラマとして制作されたとは思えない本格的な映像、93分とは思えない充実した構成である。
 
【効能】迫力ある映像に軍事マニアはストレス解消。肉弾戦のグロさに反戦意識を養える。
 
【副作用】軍隊不信になる。組織不信になる。古臭い映画に見える。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
物語自体は米軍讃歌の定番戦争ドラマ。

 70年代の名作「チャンプ」で主人公である零落れた元世界チャンピオンのプロボクサーを健気に慕う子役の愛らしい姿に涙した映画ファンもいるだろう。当時、まだ10歳にも満たない男の子だ。その彼が本作では兵士500人を束ねる30歳前後の若い少佐の役をやっている。(余談1)
 
 本作を観た動機は、その子役だったリッキー・シュローダー氏が主演だったからだ。作品内容自体は、第一次大戦中のフランス戦線であった史実を元に展開しているとはいえ、スタンダードの定番戦争映画である。

 主人公は弁護士が本職なのに軍の法務部ではなく何故か最前線で野戦の指揮を執るアメリカ陸軍少佐、眼鏡をかけた白面の若い指揮官、教養があり上品な物腰なので硝煙と血糊の前線には不似合いなキャラだ。
 上官である師団司令官は無謀な作戦を立てて主人公に命じ、主人公が意見すると「文民あがり」であることを見くびりパワハラする。部下の兵卒たちは少佐の生真面目で几帳面な性格が鼻につき陰口をたたく。ベテランの下士官や将校たちは少佐の存在を奇異に感じている。
 そんな不安材料多々の状況で強力な兵力を固めているドイツ軍の陣営に、援軍があるという司令官の嘘を「信用」して突撃を敢行しなんと奇跡的に戦術目標の重要拠点を占領してしまうのだ。
 
 少佐は努めて冷静で表情の起伏は無い知的キャラだが、行動そのものは大胆でスーパーマン的活躍をする。戦闘中に小銃の扱いで手間取る新兵を見かけると傍に駆け寄り丁寧に優しく銃の操作を指示する。瀕死の兵士から末期の聖書朗読を頼まれると暗記している聖書の一文を唱えてやる。戦闘は常に最前線で自らも戦力の1人となり指揮を執る。
 森の中で部隊は孤立、電話線は断線で不通、通信用伝書鳩も殆どがドイツ軍の狙撃で落とされる。おまけに味方砲台の誤射付き。最悪の状態でも少佐の真摯な姿にベテランの大尉も下士官も兵卒も心から少佐に従うようになり、対峙するドイツ軍の指揮官も敬意を抱く。最後の一戦では少佐自ら先頭きって突撃を行い、ベテランの大尉たちが後に続く。
 ラストは連合軍がドイツを圧倒し始め、師団司令官自ら部隊を率いて救援に駆けつけ、少佐を見くびっていたことを改め敬意を込めて敬礼する。
 
 本作はTVドラマとして制作され、映画なみの描写で第一次大戦の戦闘を再現していた。まだ小銃中心で短機銃や自動小銃の無い時代、鬱蒼とした森林を挟んで双方塹壕で睨み合い、頃合いを見て指揮官がホイッスルを吹いて突撃、着剣した小銃を槍がわりに肉弾戦を行う前近代的な戦争だ。泥や硝煙の雰囲気がよく出ていた。
 時代考証も誤りはなく、ドイツ兵たちはドイツ語を話すという凝った造りは好感が持てる。(余談2)

 物語自体はアメリカ賛歌の定番戦争ドラマだが、観て損は無い迫力ある戦争映画である。人によっては古臭く見えるかもしれないが、制作陣は敢えてスタンダードな構成に徹したためだろうと思う。

(余談1)カルキン君やファーロング君、古くはジュディ・ガーランド氏など、ハリウッドのスター子役には身を持ち崩す者は少なくない。
 その中で、リッキー・シュローダー氏は着実にキャリアを積み重ね、今では映画監督も手掛ける映画人だ。

(余談2)第一次大戦は現代戦の始まりとも言われている。航空機・戦車・潜水艦が本格的に実戦配備され、ドイツは世界に先駆けて航空兵力を中心とした空軍を創設した。さらにドイツは機関銃の大量投入に毒ガスの使用でも先手を取った。が、その一方で戦術自体はまだナポレオン時代を引きずっている部分もある。
 本作でもそういった部分を強調して、強大な敵に米軍はジリ貧でも勝った、という風景を描写する意図は当然あるだろう。米軍は主に小銃で対応しているのに対し、ドイツ軍は火炎放射器まで繰り出す。

 私は銃器マニアではないので画像からは判別が苦しいが、主人公たちはボルトアクションのスプリングフィールドM1903を使用しドイツ軍はGew88と思うが、監督の臨場感ある戦闘描写方法をとっているため画面がよくぶれ判らない。
 当時の小銃は撃つ度にいちいち引き金の上にある金具(「ト」の字型部品)を引っ張って薬莢を排出する動作をしなければならなかった。

 よくある考証の誤りは、ドイツ軍の象徴たる独特のひさしが付いたシュタールヘルム(フリッツヘルメット)を第一次大戦を通じて被っていたり、第二次大戦で使われた小型軽量化された1935年型を第一次大戦で使っていたり、またはその逆だったり。
 実際は大戦前半は19世紀風のデザインであるピッケルハウベを被っていた。頭頂部に角のような飾りをつけ耳の部分が空いたヘルメットである。
 ところが第一次大戦はナポレオン型の戦争から機械化された兵器を使用する現代戦へ移行していく時期でもあり、角の飾りは標的になりやすく、砲弾の破片から頭部や耳を守るに不都合という事で、シュタールヘルムが1916年に採用された。
 このシュターヘルムは16年型と18年型があり、最初の頃は第二次大戦の35年型に比べかなり大きなヘルメットだった。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作


【注目】ラスト、将軍は自分の作戦ミスであることは認めず軍全体にとって必要な損害である事、自分は戦況をトータルで考えなければならない立場である事、そして言葉には出さないが暗に知識人で文民出身の少佐には俺の立場は解るはず、と言いたげの言い訳がどこの職場にも有りそうな詭弁でリアル。
 そんな将軍に強く抗弁する少佐の姿を見て部下たちが激戦でボロボロになった身体に鞭打ち姿勢や襟を正していく。作品冒頭では生真面目几帳面に服装の乱れを注意する少佐を鬱陶しく思っていた部下たちが、このラストでは崇拝に近い信頼を寄せるようになった、一種の「ハッピーエンド」に相応しい場面である。




 
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