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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「誰が為に鐘は鳴る」 カップルで泣きたい時に〔10〕 

誰が為に鐘は鳴る」 戦場ロマンスの金字塔
 

 
【原題】FOR WHOM THE BELL TOLLS
【公開年】1943年  【制作国】亜米利加  【時間】130分  
【監督】サム・ウッド
【原作】アーネスト・ヘミングウェイ
【音楽】ヴィクター・ヤング
【脚本】ダドリー・ニコルズ
【言語】イングランド語
【出演】ゲイリー・クーパー(ロベルト・ジョーダン)  イングリッド・バーグマン(マリア)  エイキム・タミロフ(パブロ)  アルトゥーロ・デ・コルドヴァ(-)  カティーナ・パクシヌー(ピラー)  イヴォンヌ・デ・カーロ(-)
   
【成分】泣ける 悲しい スペクタクル ロマンチック 勇敢 切ない かっこいい 1930年代 スペイン内戦
     
【特徴】ヘミングウェイ原作の映画化。映画史に残る戦場ラブロマンスである。
 スペインで左翼政権誕生、それに対して右翼の青年将軍フランコが叛乱、多くの部隊や教会勢力がフランコに味方、ナチスドイツやファシストイタリアも協力、政府は叛乱を鎮圧できずスペインは内戦状態に。アメリカの大学講師ロベルトは義憤に駆られて人民政府側で戦う。ロベルトはある作戦で人民政府側で戦っている山賊アジトを訪問、そこで短髪の美女と出会う。
 ヒロインのイングリット・バーグマンは当時27歳、彼女にとって初のカラー映画。彼女の髪型はたちまち流行したが、現在のような整髪アイテムが無い時代なのでたちまちただの短髪になって美女たちは難儀した。バーグマン自身も、1シーン毎に髪を直して大変だったようだ。
  
【効能】興奮と感動、主人公たちの悲痛な顔に思わず涙が流れる。
 
【副作用】有名スターを起用した他愛ないラブロマンスにしか見えない。原作ファンは激怒。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
報道写真家ロバート・キャパも関わっていた
誰が為に鐘は鳴る


 出演当時、アメリカを代表する二枚目俳優ゲイリー・クーパー氏は42歳、北欧出身でハリウッドに進出し始めた女優イングリット・バーグマン氏は27歳(余談1)、原作者は世界的著名な文豪アーネスト・ヘミングウェイ氏でこのとき44歳。
  
 撮影当時の写真を見たことがある。おそらく世界で最も有名な報道写真家ロバート・キャパ氏(余談2)が撮影した写真だ。80年代の写真雑誌「フォトジャポン」に掲載されていた。実はロバート・キャパ氏もこの映画の「関係者」だったのだ。
 撮影合間なのか終わった後なのかは判らないが、プライベートな時間のようだ。ヘミングウェイとクーパー両氏は和やかな雰囲気で狩や釣りを楽しんでいる。クーパー氏はプライベートでも長身でスマートで渋い。ヘミングウェイ氏は日本の文庫本表紙にあるような老漁師風の髭面ではなく、でっぷりと肥え脂ぎった流行作家のような風体だ。
 学生の頃、ロバート・キャパ氏の展覧会が大阪梅田で開かれたので行ってみたら、そこでは同時期にキャパ氏が撮影したイングリッド・バーグマン氏の写真が展示されていた。ソファーの背もたれに仰向けに寄りかかっている。彼女の端正な横顔がよく描写されていた。
 
 キャパ氏とバーグマン氏は少しだけ接近したそうである。2人の仲は傍目にはまんざらでもなかったようで、ささやかな熱愛話があったようだが、本当に熱愛だったらキャパ氏はどんな気持ちだったのだろう。「誰が・・」の舞台はスペイン内戦、キャパ氏はスペイン内戦を取材して、有名な「崩れゆく兵士」(余談3)を撮って注目された。報道写真家として評価された舞台であり、写真の仲間であり恋人だったゲルタ・タロー氏が取材中に戦車に轢かれ亡くなった土地でもある。
 
 この作品はスペイン内戦を扱った作品ではあるが、歴史背景を知らなくても話は解るようになっている。戦場のラブロマンスを主軸に置いてあるためだ。理想と義憤に燃える大学講師ロベルトは外国人義勇兵として人民戦線側に参加し、ある作戦のために現場近くで人民戦線側で闘う山賊のような人々の拠点へ行く。そこでフランコ派の弾圧から逃れて身を寄せている周囲から浮いた若い短髪の女性マリアに出会う。
 マリア役バーグマン氏の警戒心露にした鋭い目、やや戸惑うロベルト役クーパー氏の表情。2人はやがて打ち解け、マリアはロベルトの知的で誠実な人柄に、ロベルトは同情から恋愛感情へと変わっていく。
 特にラストは映画史上に残る名場面である。重傷を負ったクーパー氏扮するロベルトは泣き叫ぶマリアの声を背に、1人機関銃を掴んで敵を食い止め時間稼ぎをすることを決意する。「民主主義のためか、いやマリアのため」と、迫りくる敵に対して機銃を構え、最後の場面はカメラ正面にクーパー氏の悲壮感漂う表情が現われ機銃をカメラに向かって乱射し始めるところで物語が終わる尻切れトンボ的終わり方は、その後の映画でも模倣された場面である。
 
 ところで、人民戦線や左派的思想にシンパシーを感じていた原作者のヘミングウェイ氏は映画をラブロマンスにするつもりは無かった。ハリウッドやアメリカ政財界の圧力で恋愛中心にせざるを得なかったそうである。(余談4)
 
(余談1)この作品が彼女にとって初めてのカラー映画である。
 
(余談2)ユダヤ系ハンガリー人。スペイン内戦・日中戦争・第二次大戦に従軍。戦後、来日して日本を取材、その直後インドシナへ渡りベトナム独立戦争を取材中に地雷を踏んで死亡。多くの報道写真家にとって憧れの存在である。
 
(余談3)頭を被弾して倒れる瞬間の共和派兵士の姿。

(余談4)第二次大戦後、晩年のヘミングウェイ氏は国際釣り大会を催し、その参加者にはキューバ革命を成功させたカストロ氏とゲバラ氏もいた。ヘミングウェイ氏は彼らに会えるのを楽しみにしていた。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
【受賞】アカデミー賞(助演女優賞)(1943年) ゴールデン・グローブ(助演男優賞)(1943年)
 
晴雨堂関連作品案内
武器よさらば スタジオ・クラシック・シリーズ [DVD] チャールズ・ヴィダー
 
晴雨堂関連書籍案内
誰がために鐘は鳴る〈上〉 (新潮文庫) アーネスト・ヘミングウェイ
誰がために鐘は鳴る〈下〉 (新潮文庫) アーネスト・ヘミングウェイ
 

 
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いつもながらのお詳しい記事を拝読しました。余談が興味深かったです。
特に余談4についての感想ですが、当時のハリウッド・スタイルの牙城を崩せなかったのは理解できます。
[ 2009/10/06 17:15 ] [ 編集 ]
アスカパパ氏へ
 
 こちらこそ、ご訪問ありがとうございます。
 
 1985年頃だったと思いますが、ロバート・キャパの撮影済カラーフィルムがフランスのとある屋根裏部屋から発見され、これをきっかけに大阪でもキャパ展が開かれました。
 
 その展覧会にヘミングウェイ夫妻とクーパー夫妻が渓流釣りや狩猟を楽しむ風景の写真が展示されていました。同時期に場所は不明ですがバーグマンがソファーで仰向けになり物思いに耽る横顔の写真を見ました。美しかった。

> いつもながらのお詳しい記事を拝読しました。余談が興味深かったです。
> 特に余談4についての感想ですが、当時のハリウッド・スタイルの牙城を崩せなかったのは理解できます。
[ 2009/10/07 03:04 ] [ 編集 ]
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自分を映画狂にしたのは、エンディングで揺れる鐘が鳴るこの映画を見たゆえと言っても過言ではないだろう。それは1952年9月14日のことだった。京都宝塚劇場で初めて逢ったイングリッド・バーグマンに私は参ってしまったのだ。 死を決意したロベルト(ゲイリー・クーパ...
[2009/10/05 18:35] アスカ・スタジオ
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