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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

ふと、思った。シャア大佐、ホンマはかなりアホとちゃうか? 周囲に弄ばれる悲劇。 近頃の現象[一〇四六] 

歳をとればとるほど 
シャアを許せなくなっている。


歳をとればとるほどシャアを許せなくなっている。
ジオン思想を細部から再構成し、いかにシャアが駄目かを力説する『ガンダムから学ぶ社会思想―反動のシャア』を文春新書から出したい。(北田暁大)


【雑感】何気にTwitterを眺めていたら、上記のTweetをみかけた。社会学者の北田暁大氏のTweetのようだ。

 彼と同様の見解なのか、あるいは視点が全く異なるかは上記Tweetだけでは判らないが、私もシャアは駄目というより未熟者と思っている。

 シャアは老成した名言を吐き、戦闘指揮所で余裕の珈琲タイムなんぞ洒落込むから、ついカッコいい大人に見える。また子供子供しているアムロ・レイやガルマ・ザビと比較してしまうから大人びて見えるが、実はまだ二十歳の青少年だ。
 サイド6でシャアとアムロが初めて対面した時、アムロの歳を聞いてシャアは「若いな」と言う。TV放送を観ていた高校生の私(余談1)は「貴様だってまだ二十歳やないか」と突っ込みの呟きを吐いた。

 当時から、シャアはカッコいいけど、ホンマはアホちやう?と思っていた。アムロが主人公のアニメだから仕方がないのだが、ホワイトベース(木馬)やガンダムに絡むようになってからというもの、シャアの作戦はことごとく失敗しているからだ。物語佳境では子飼いのララァから戦闘中に「大佐、邪魔です!」と怒鳴られているし、最終回になると上官キシリア将軍が「赤い彗星も地に墜ちたか」とハッキリ言われてしまう。実はそれ以前から職業軍人として地に墜ちているのだが。

 社会人になり齢を重ねるにつれて、シャアは周囲の期待に弄ばれた可哀想な人に見えるようになった。これはけっこうアニメの世界でもリアルにさり気なく描かれている事に気づく。

 冷静にシャアの経歴を見てみよう。シャアは一年戦争で頭角を現した軍人なのだが、何で頭角を現したのかは言うまでもなく天才的モビルスーツ搭乗員としての軍歴だ。敵味方双方から「赤い彗星」と恐れられているが、それはあくまでパイロットの能力を評価されたのであって、パットンやロンメルのように指揮官としての能力を評価する箇所は皆無、後に「Ζガンダム」でジャーナリストとなったカイ・シデンはこの点を突いて批難している。

 言うまでもなく一年戦争とは、ほぼ一年間に渡って続けられた地球人VSスペースノイドとの戦争だった。この一年程度の期間で、シャアは中尉から大佐へと異例の昇進している。言うまでも無いが、中尉の役割と大佐の役割は全く違う。一介の現場指揮官から司令官までの隔たりがあるのだ。

 軍隊の階級を会社組織にあてはめてみよう。中尉は係長かライン長で大佐は部長か工場長に相当する。係長はまだ現場作業者の一人として動く事が多々あるが、工場長や部長ともなれば現場作業を手伝う暇は無い。言うまでもないが、大佐ともなればゼネラリストとしての能力を問われるのだ。

 シャアは弱冠二十歳にして一年足らずの期間で中尉から大佐になってしまった。モビルスーツ隊の隊長として編隊の僚友に気を配りながら戦闘する身分から一気に戦闘全体を目配りして戦略や戦術を練る立場に変わった。
 普通の人なら勤続20年から30年かけて経験と成果を積み上げ到達する身分に、ただモビルスーツの撃墜王というだけで身分が大袈裟になってしまったのだから、人生経験が乏しい状態のままゼネラリストになるための体験や訓練する機会も与えられず人の上に立たされたのがシャアの悲劇だ。

 ジオン軍の性質を考えたら、ルウム戦役で大戦果をあげたシャア中尉は戦意高揚のため英雄に祭り上げられ二階級特進させられたに違いない。一度はガルマの件で失脚左遷(余談2)されるがキシリア少将の政治的思惑で拾い上げられ、特に戦果をあげていないのまた二階級特進して大佐になる。(余談3)
 二十歳の青少年が大人の事情で振り回されて見かけだけ偉くさせられたのだ。

 このシャアの不幸、実はアニメ上でも放送第1回の冒頭からすでに露呈しているのだ。というのは、アムロたちが住んでいたサイド7にシャアがモビルスーツ3機を斥候として派遣するのだが、新兵が軍規に背いて勝手に戦闘を始めてしまう。愚かな新兵と頼りない古参下士官の罪で済まされるだろうか? 製造業に例えたら、新入社員が上司の指示を無視して勝手に工作機械を動かし死亡事故を起こすようなもの、深刻な異常事態である。
 また、このころのシャアはすでに少佐になりムサイ級巡洋艦の艦長を務めているが、物理的時系列を考えたら艦長業務は殆ど経験がなく新米のはずだ。頻繁に自らモビルスーツで出撃しているところをみると、艦内の船務をはじめとする仕事は副官ドレン中尉に任せっぱなし状態のはずだ。ドレン中尉は明らかにシャアより歳上で叩き上げのベテラン職業軍人である。
 つまりシャアはパイロットとしては畏敬されているが、指揮官としてはけっこうナメられていたのではないか。ドレンがフォローしているので一応は格好がついていただけと思う。またシャアも勇敢なだけで出撃したのではなく、慣れない艦長業務より外で闘ったほうが気分的に楽という思いを抱いていた可能性がある。

 このシャアの弱さは、大佐として戦線復帰したとき完全に露呈する。少佐時代はベテランのドレンが上手く取り繕っていたようだが、2代目の副官マリガン中尉はシャアと歳が変わらない上にシャアほどに場数も踏んでいなさそうだ。規律も乱れ気味で、マリガンが勝手に部下を動かして「木馬」に攻撃を仕掛けたり、シャアからララァの援護を命じられた某少尉は命令を無視した上に艦橋での尋問には開き直って反論している。
 このシャアの欠点は「逆襲のシャア」でも全く克服されておらず、ジオンの元首となっても人間として全く成長が見られない、というより元首としての責務を考えると相変わらずモビルスーツパイロットに執着するのは病気といってもいい。

 スペースノイドの時代だの、ニュータイプの時代だの、ジオニズムだのと、思想的政治的リーダーになる以前に、ゼネラリストとして失格だ。

(余談1)本放送時は中学生で、あの頃は水泳部の練習で観れなかった。初めてガンダムを観たのは高校にあがってから再放送のビデオ録画を鑑賞。

(余談2)シャアを更迭したドズル中将は容姿から単細胞キャラと誤解されるし、実弟ガルマを守らなかった私怨からの処分と解釈されがちだが、ザビ家の私設軍隊的性格のジオン軍にしては公平な処置だ。
 ドズル目線で見れば、シャアがガンダムと遭遇してからというもの何度も戦を仕掛けたが失策続きで徒に部下を失ってばかりいた。「木馬」が北米へと逃れたので北米を管轄するガルマに協力を要請し、ガルマの指揮下に入って参謀役を務めるもことごとく失敗、その挙句にガルマの戦死なのである。ガルマも未熟者だが、そのガルマに戦術面で意見してきたのはシャアである。シャアを解任したドズルの判断はむしろ私怨ではなく司令官として冷静な処置だ。

 ファンは御存知と思うが、ザビ家の中でドズルは最も常識をわきまえた大人なのである。冷酷な面を隠そうとしないギレンやキシリアと違って絶大な人望があった。さらに分をわきまえ職業軍人に徹したため、ギレンやキシリアから敵対視される事もなかった。

(余談3)単に声優が「シャア少佐(しゃあしょうさ)」では発声しづらいから言いやすい「シャア大佐(しゃあたいさ)」に変更になったらしい。
 設定では、マ・クベ軍とレビル軍との激戦が展開されたオデッサ作戦時に中佐になっていた。


 
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[ 2014/09/05 18:30 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(3)
ナチスドイツ空軍の撃墜王ハルトマン大尉は22才でした。シャアが20才ぐらいで少佐なのは考証面からは許容範囲ですね。
さすがに大佐は違和感がありますが。
[ 2014/09/09 10:41 ] [ 編集 ]
アフリカの星はマルセイユ大尉でした。ハルトマン大尉も22ぐらいだったと思います。
[ 2014/09/09 11:38 ] [ 編集 ]
うろぱす氏へ

 ゼロ戦の坂井三郎一飛曹と隼の加藤建夫中佐を間違えるようなもんですよ。

 エーリヒ・ハルトマンは坂井三郎と同じく僚機を失わなかったので、昔からけっこうファンなんですよ。しかも坂井は老け顔ですが、ハルトマンは高校生みたいな容姿で柏葉剣付騎士鉄十字章を襟に飾り飛行隊長を務めるギャップがまた惹かれたものです。


 マルセイユとハルトマン、2人とも22歳の若さで大尉になった事は共通していますが、容姿も活躍時期も場所も全く違います。
 マルセイユは姓が示すように祖先はフランス人(ルイ十四世に迫害されドイツに亡命した新教徒)です。髪の毛は黒。大戦前期にアフリカ戦線で活躍しエジプトで戦死。
 ハルトマンは典型的なゲルマン系で髪はブロンド。マルセイユより2つ歳下、大戦中盤から敗戦まで東部戦線で活躍。ジリ貧の独ソ戦下で300以上も撃墜。戦後はソ連軍の捕虜となり10年以上を苦役、釈放後はドイツ連邦軍空軍へ入隊。

 20年ほど前に黄泉の客となられ、ミリタリー関係の雑誌で特集が組まれていました。ソ連軍の捕虜にならなかったら、今も御健在だったかもしれないのに。
 ソ連から釈放されたとき、まだ30代前半のはずなのに50過ぎのような老け顔になっていました。

> アフリカの星はマルセイユ大尉でした。ハルトマン大尉も22ぐらいだったと思います。
[ 2014/09/10 22:53 ] [ 編集 ]
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