「ゼロ・グラビティ」
死に攻囲された孤立感を体感。【原題】GRAVITY
【公開年】2013年年
【制作国】亜米利加 英吉利
【時間】91分
【監督】アルフォンソ・キュアロン【制作】アルフォンソ・キュアロン デヴィッド・ハイマン
【原作】 【音楽】スティーヴン・プライス
【脚本】アルフォンソ・キュアロン ホナス・キュアロン
【言語】イングランド語
【出演】サンドラ・ブロック(ライアン・ストーン)
ジョージ・クルーニー(マット・コワルスキー) ミッション・コントロール(エド・ハリス 声のみ)
【成分】パニック 不気味 恐怖 知的 絶望的 宇宙 無重力
【特徴】実際に起こり得るスペースデブリ(地球の衛星軌道上を回るゴミや機械の破片)の衝突事故をリアルに描いている。
正確な無重力描写と周回軌道上の空間描写はまるで本当に宇宙でロケをやっているかのようである。
主役の
サンドラ・ブロックは博士号をもった宇宙飛行士でハッブル宇宙望遠鏡を修理するミッション・スペシャリストを好演。女優として新境地を開いている。事実上、サンドラの一人芝居。
死に包まれた静寂の無重力空間と生命に満ち溢れた地球の重力空間の対比が見事。
【効能】地球のありがたさを思い知る。スペースデブリの危険性と社会問題を知る機会になる。
【副作用】宇宙が嫌いになる。高高度が恐ろしくなる。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
たくましく大地を踏みしめる
サンドラの美脚に萌え。 これは映画館の巨大スクリーンと充実した音響設備で鑑賞した方が良い。DVDで自宅TV鑑賞では魅力が半減する。
60年代の「2001年宇宙の旅」以来のリアルな特撮と映像美に衝撃を感じた。(余談1)もっとも、潤沢な予算と現在のCG技術を贅沢に使えば表現できない描写は無い。ただ、他作品の宇宙空間描写とは決定的に違う、「2001年・・」を彷彿させるモノを感じてしまうのは効果音である。
本作にはエド・ハリス氏が地上の管制官役で声のみの出演をする。彼は90年代に「アポロ13」でも主席管制官役を務めた。この「アポロ13」も当時最高水準のCGで打ち上げから宇宙空間までをリアルに描写したが、本作を観た後で「アポロ13」を観たらCGの粗が目立ってしまうだろう。さらに決定的なのは効果音である。
「スターウォーズ」や「スタートレック」などでも宇宙空間に爆音などの効果音は付き物で、逆に宇宙空間をリアルに音無しでやったらメリハリが無くなるのは理解しているが、史実に沿ってリアルに描写しているはずの「アポロ13」にまで宇宙空間に噴射音や爆音というのは首を傾げた。
本作ではこのワザとらしい効果音を最小限に留めている。宇宙空間に無いはずの効果音を出す代わりに、鑑賞者に不安感を与えるようなBGMを多用し、爆音や衝撃音のような効果をあげている。加えて、演じる俳優たちの息遣いや台詞の発声で宇宙での孤独感と絶望感を巧く表現していた。
またシンプルな物語構成にも好感が持てる。出演俳優は最小限、
サンドラ・ブロック氏と
ジョージ・クルーニー氏の二人芝居、後半はサンドラのみの独り芝居だ。他は声だけの出演。死体役はもしかしたら造型かCGかもしれない。このシンプルな構成のおかげで、よりサンドラ演じるライアン・ストーン飛行士の孤立感を観客も体感できる。(余談2)
ラストは一応ハッピーエンドだ。またこのラストでなければ、原題「Gravity(重力)」の意味が無い。(余談3)サンドラは無事に帰還し、宇宙服を脱ぎ捨て、Tシャツと短パン姿で泥の湖畔に辿り着く。無重力に慣れた身体に鞭打ってよろめきながらも二本の美脚でしっかり立ち上がる逞しい姿がGravityの有難さを実感させる。
ううむ、私と同世代の女性とは思えぬ若々しいプロポーション・・美しい。
(余談1)主人公ボーマン船長が船外活動中にコンピューターの反乱で宇宙船から締め出され、ヘルメット無しで小型作業艇から本船のハッチに強行乗船する場面には思わず「凄い!」と思った。
作業艇のエアロックが爆破で吹き飛ぶ場面は音無し、ボーマンが爆風で宇宙空間に放り出されディスカバリー号に侵入、内部の壁に衝突して再び宇宙空間に飛び出そうになるところを入口にしがみつきエアハッチを閉める。閉めると隔壁内に空気が満たされ爆音が響きだす。
たぶん、無重力訓練用の飛行機の中で撮影したと思うが、素晴らしいデキだった。科学考証にも適っている。現在ではCG無しで創り上げた描写として特筆されるべき名場面だろう。
(余談2)「ライアン」は男の名前なのだが、何故かヒロインが名乗っている。何故だかは作中の台詞に登場する。他愛ない理由だったが。
当初予定のキャスティングでは、ロバート・ダウニーJrとナタリー・ポートマンだったらしいが、本作の形に落ち着いて良かったと思う。ロバートでは線が細いし、ナタリーでは若すぎる。
(余談3)原題は「重力」、邦題は何故か無重力のカタカナ英語。映画制作者と日本の配給元との感性と思想の違いが判る。たしかに殆どの場面が無重力の宇宙なのでこの邦題だ。無重力描写にかなり予算をつぎ込んだはず。一見、フワフワで面白そうな無重力も、周囲を漆黒の死の闇に囲まれた空間では動きにくくて生命の危険を感じさせる。これがラストの仁王立ちにつながる。
ハリウッド製の映画につけられる邦題は手抜きのカタカナ語が多いが、これもその一つだ。本作の場合は原題のほうが心に響く余韻がある。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔【受賞】第86回アカデミー賞監督賞・作曲賞・視覚効果賞 第71回ゴールデングローブ賞監督賞
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たくましく大地を踏みしめる
サンドラの美脚に萌え。 これは映画館の巨大スクリーンと充実した音響設備で鑑賞した方が良い。DVDで自宅TV鑑賞では魅力が半減する。
60年代の「2001年宇宙の旅」以来のリアルな特撮と映像美に衝撃を感じた。(余談1)もっとも、潤沢な予算と現在のCG技術を贅沢に使えば表現できない描写は無い。ただ、他作品の宇宙空間描写とは決定的に違う、「2001年・・」を彷彿させるモノを感じてしまうのは効果音である。
本作にはエド・ハリス氏が地上の管制官役で声のみの出演をする。彼は90年代に「アポロ13」でも主席管制官役を務めた。この「アポロ13」も当時最高水準のCGで打ち上げから宇宙空間までをリアルに描写したが、本作を観た後で「アポロ13」を観たらCGの粗が目立ってしまうだろう。さらに決定的なのは効果音である。
「スターウォーズ」や「スタートレック」などでも宇宙空間に爆音などの効果音は付き物で、逆に宇宙空間をリアルに音無しでやったらメリハリが無くなるのは理解しているが、史実に沿ってリアルに描写しているはずの「アポロ13」にまで宇宙空間に噴射音や爆音というのは首を傾げた。
本作ではこのワザとらしい効果音を最小限に留めている。宇宙空間に無いはずの効果音を出す代わりに、鑑賞者に不安感を与えるようなBGMを多用し、爆音や衝撃音のような効果をあげている。加えて、演じる俳優たちの息遣いや台詞の発声で宇宙での孤独感と絶望感を巧く表現していた。
またシンプルな物語構成にも好感が持てる。出演俳優は最小限、
サンドラ・ブロック氏と
ジョージ・クルーニー氏の二人芝居、後半はサンドラのみの独り芝居だ。他は声だけの出演。死体役はもしかしたら造型かCGかもしれない。このシンプルな構成のおかげで、よりサンドラ演じるライアン・ストーン飛行士の孤立感を観客も体感できる。(余談2)
ラストは一応ハッピーエンドだ。またこのラストでなければ、原題「Gravity(重力)」の意味が無い。(余談3)サンドラは無事に帰還し、宇宙服を脱ぎ捨て、Tシャツと短パン姿で泥の湖畔に辿り着く。無重力に慣れた身体に鞭打ってよろめきながらも二本の美脚でしっかり立ち上がる逞しい姿がGravityの有難さを実感させる。
ううむ、私と同世代の女性とは思えぬ若々しいプロポーション・・美しい。
(余談1)主人公ボーマン船長が船外活動中にコンピューターの反乱で宇宙船から締め出され、ヘルメット無しで小型作業艇から本船のハッチに強行乗船する場面には思わず「凄い!」と思った。
作業艇のエアロックが爆破で吹き飛ぶ場面は音無し、ボーマンが爆風で宇宙空間に放り出されディスカバリー号に侵入、内部の壁に衝突して再び宇宙空間に飛び出そうになるところを入口にしがみつきエアハッチを閉める。閉めると隔壁内に空気が満たされ爆音が響きだす。
たぶん、無重力訓練用の飛行機の中で撮影したと思うが、素晴らしいデキだった。科学考証にも適っている。現在ではCG無しで創り上げた描写として特筆されるべき名場面だろう。
(余談2)「ライアン」は男の名前なのだが、何故かヒロインが名乗っている。何故だかは作中の台詞に登場する。他愛ない理由だったが。
当初予定のキャスティングでは、ロバート・ダウニーJrとナタリー・ポートマンだったらしいが、本作の形に落ち着いて良かったと思う。ロバートでは線が細いし、ナタリーでは若すぎる。
(余談3)原題は「重力」、邦題は何故か無重力のカタカナ英語。映画制作者と日本の配給元との感性と思想の違いが判る。たしかに殆どの場面が無重力の宇宙なのでこの邦題だ。無重力描写にかなり予算をつぎ込んだはず。一見、フワフワで面白そうな無重力も、周囲を漆黒の死の闇に囲まれた空間では動きにくくて生命の危険を感じさせる。これがラストの仁王立ちにつながる。
ハリウッド製の映画につけられる邦題は手抜きのカタカナ語が多いが、これもその一つだ。本作の場合は原題のほうが心に響く余韻がある。
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ミカエルさんがおっしゃるとおり、
主演のサンドラ・ブロックが非常に魅力的な映画でした!
『スピード』なんかに出ていた若い頃はあまり魅力を感じませんでしたけど、
むしろ年を重ねてから魅力が増してきた感じですよね。
短パン姿になったときのあのひきしまった太もも!
あれはボクは観客サービスだと思って観ていました(笑)