<参院選制度協>1票の格差、是正遠く 参院選挙制度協議会(座長・伊達忠一自民党参院幹事長)は28日、「1票の格差」が最大4.77倍だった2013年参院選を「違憲状態」とした26日の最高裁判決を受け、国会内で会合を開いた。しかし、最大会派の自民党は改革案の集約に相変わらず腰が重く、各党の主張は食い違ったまま。16年参院選を新たな選挙制度で実施するには来年の通常国会で法改正する必要があるが、改革の方向性は定まらない。(毎日新聞)【雑感】衆議院で
一票の格差を問題にするのは当然だ。私もそれは反対していない。反対しているのは「
一票の格差是正」と「定数削減」を同時に行うことだ。
同時に行うと、鳥取や島根や我が郷里高知などの過疎県から議員を出せなくなる。だから定数削減ではなく定数増員によって「
一票の格差」を是正する事を強く主張している。
日本の倍以上の人口を持つアメリカ下院は日本よりも50人ほど少ない議員定数で議会をまわしている事を引き合いに出して定数削減を主張する浅はかな輩がいるが、日本と違ってアメリカには独立国なみの権限を持った州政府や州議会がある。日本の都道府県はもともと権限が弱い上に、上に倣えと地方議会も定数削減を実施してきた。
だから馬鹿の一つ覚えみたいに「定数削減」と「
一票の格差是正」を連呼しては国政を危うくする。定数削減したところで、財政赤字の補填にはならんし、むしろますます組織力と資金力と国家権力を握る与党議員ばかり当選して、社会的弱者や社会的少数者の声を代弁する議員が締め出される。
大企業優遇と貧富の格差や福祉削減の政策を行う自民党にブレーキをかけてきた勢力を失う事は、風向きが変わればたちまち貧困層になる今や死語となった日本の大多数を占める「中流層」に不利益だ。
さて話を
参院に戻そう。
百歩・・、いや万歩譲って、衆院の定数削減と
一票の格差是正は仕方が無いとしても、その理屈を参院選に持ち込むのは不可思議奇怪である。
参議院は欧米諸国の上院をモデルに設置された。前身の貴族院は、民衆から選ぶ衆議院に対して皇族や華族や多額納税者で構成する特権階級の代表という性格だったが、戦後は貴族院を廃止して代わりに置かれた参議院はアメリカ諸州の代表によって構成される上院に倣って各都道府県から選出された代表によって構成される議会だった。
だからこそ、「大阪1区」や「大阪5区」といった小選挙区制の衆議院と違って、都道府県単位で最低でも2名議員を選出する方式をとっている。(3年毎半数ずつ改選)
当然、人口過密地域の東京や大阪があれば、過疎地域の鳥取や島根や高知もある。人口の多い都市部の発言が幅を利かせる風潮がある中でも、人口が少ない地方も議員を出して影響力を確保できるのが参議院の良さだ。仮に高知から衆院議員を出せなくなったとしても、参議院の議席はある。
私はむしろ「上院」としての任務を考えれば、現在10議席が割り当てられている東京も2議席とし、高知と対等の人数にするべきだとさえ思っている。一票の格差はあって当たり前、参議院とは一票に格差をつけることで過疎地と都市部の発言権を対等にし、比例区によって少数者の声をすくい上げる事を目的にした議会である。一票の格差を問題にすること自体が笑止。筋違いのイチャモン甚だしい! 同じ国会でも衆議院と参議院とでは役割が違う。違うからこそ選挙制度も違うし任期も違うし権限も違うのだ。解散のある衆議院では景気不景気でコロコロ意識が変わる短兵急な世論に左右されて目先の法案に走りがちになる事しばしばあるが、参議院は解散が無く任期もたっぷり6年、地域の代表として長期的展望で法案を審議できるはずではないか。
それを衆議院と同じように「一票の格差」などを問題にされたら、都道府県の代表という性格がある限り解消は物理的不可能であるし、それを変えろというのなら都道府県制度も変えなくてはならない。
昔の貴族院の方がマシかな、と最近は思うようになった。政党で割拠する衆議院は時の国民世論やマスコミに煽られて軍国に流れていった。軍部主導に苦言を呈していたのは皇族や華族で構成されていた貴族院だった。軍部も相手が皇族や公家では迂闊に恫喝できない。良い悪いは別にして、現在の参議院のような衆議院のカーボンコピーとか無用論は無かった。
それにしても、法曹界も放送界も馬鹿の一つ覚えのごとく「一票の格差是正」「定数削減」の大合唱。現行制度のままそれを実現したら地方は切り捨てられる。それを知った上での暴論だろうか? それともどんな魂胆を抱えているのか?
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