ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

男優評 高倉健 「ゴルゴ13」(1973) 

銀幕の大スターが漫画の主人公を演じる 
当時としては異例中の異例!



 
【雑感】初めて観た時は、正直あまり良い印象は持てなかった。
 まず高倉健氏がゴルゴ13のイメージと違う。もともと、原作者さいとうたかを氏は高倉健のイメージから膨らませ、当時人気が沸騰していたイギリス映画の「007」のイメージや世界観も絡めて ゴルゴ13というキャラを作ったらしい。
 しかしである。そのような経緯を知らなかった当時の私は、ゴルゴに比べて線が細くて弱弱しく見えた。原作では抜かりなく仕事をするのに高倉ゴルゴはドン臭くてヘマばかりしている、と悪い印象を持った。

 何より、せっかく海外ロケしていながら、全編日本語とはなんだ? ゴルゴの魅力の一つに世界各国の言語に精通していることであり、海外ロケで現地の俳優を使いながら日本語吹替で日本語だらけとは何事か、実写映画化の意味はこれだけでも激減だ、と些か憤慨しながら観ていた。

 ところである。「ゴルゴ13」の映画はその後も制作され続けたが、私の目にはこの高倉ゴルゴを超える作品は無かったように見えた。
 高倉健版から数年後に制作された「ゴルゴ13 九竜の首」では、たしかに主演の千葉真一氏は原作のゴルゴと体格はよく似ているし、アクションも良かったし、所作も悪くは無かった。が、メイクや演技をあまりにも原作に近づけようとしたためにかえってギャグに見えてしまう。漫画表現だから馴染むのであって、それをそのまま実写にしてしまうと違和感になる典型例だろう。
 アニメ映画やTVアニメも制作されていったが、残念ながら声優に不満があったり、脚本に違和感があったり、実写では気にならなかったかもしれない所作や設定の変更がアニメでは逆に不快感になる。

 結局、今にしてみれば本作高倉健版の「ゴルゴ13」が私にとって最も「マシな映画」となった。さらに後になって撮影の経緯を知るにつれ価値が高まっていく。
 当時はまだまだ漫画の地位は低く漫画の主人公を演じる俳優も若手の駆け出しばかりだった。横山光輝原作の実写化「仮面の忍者 赤影」で主演を務めた坂口祐三郎氏が赤影後は冷遇された事は有名である。現代であれば、あれほど人気のある俳優をむざむざ蔑ろにはしない。今や大スターへの登竜門であると同時に人気アイドルが俳優業へ進出する入り口でもある。
 加えて、当時の映画界はテレビに圧されて斜陽になりつつあるとはいえまだまだ「格上」だった。高倉健氏はその映画界のスーパースターだ。

 実写映画化のオファーがきた当時、さいとうたかを氏は難色を示したそうである。そして体よく断るために次の条件を出した。

 「オール海外ロケ」「主演俳優は高倉健

 この条件なら実写映画化を断念するだろうと思ったそうである。ところが、映画会社側は引き受け、なんと高倉健氏もゴルゴ役を了解された。今でこそ漫画のヒーローを有名大物俳優が演じる事が当たり前になっているが、当時は考えられない異例の中の異例である。だからこそ、さいとうたかを氏もこの条件を突きつけた。
 また、ロケ地に選ばれた場所は当時パーレビー国王統治下のイラン。ロケが組まれ高倉健氏以外は全員イランの俳優たちでかためる。今となっては政治的事情で実現は不可能に近い。ゆえに本作は貴重映像である。

 子供のころは不快感に近い違和感だった高倉健演じるゴルゴ13も、後の映画作品をみる度に価値を再確認してしまう。また「俳優・高倉健」の魅力を伝える逸話がバラエティ番組や共演者へのインタビューなどで紹介されるたびに、他の俳優とは一線を画した孤高の魅力が増していく。それとともに、なんとなく原作のゴルゴ13の魅力ともダブってくるのである。
 もちろん、架空とはいえ大量殺人を無表情で行う犯罪者と生真面目で律儀な俳優を同列に比べている訳ではないのだが、「寡黙」と「律儀」というキーワードが共通しているように思える。

 今では本作がゴルゴ13映画の最高峰と思えるようになってきた。それでも、私はどうしても不満が拭えない。ペルシャ語を流暢に操る高倉健氏を観たかった。ゴルゴ13の魅力は各国の言語に精通している事、せっかく高倉健氏以外はイラン人俳優なのだから、ペルシャ語台詞に挑戦してもらいたかった。
 後に「ブラック・レイン」や「ミスター・ベースボール」では英語で演技していた事を思うと、やはりこの「ゴルゴ13」の時にペルシャ語にも挑戦してほしかった。


 
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[ 2014/12/15 11:09 ] 映画・・男優評 | TB(0) | CM(0)
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