ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

なぜ「イスラム国」はジャーナリストを拘束し殺そうとするのか? 近頃の現象[一〇六八] 

イスラム国拘束>殺害予告経過、
犯行グループ沈黙


 イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループが日本人2人の殺害を予告し、身代金を要求した事件は、ビデオ声明から72時間後の23日午後を過ぎた。菅義偉官房長官はその後の記者会見で「厳しい状況だが、2人の解放に向け、関係者に協力を要請して全力で取り組んでいる」と述べ、早期解放に努める政府方針は変わらないことを強調した。政府はシリア近隣国や地元関係者らを通じ、2人の安否確認や交渉期限の延長を求めているとみられる。(毎日新聞)

【雑感】かつて共産主義革命勢力はジャーナリストを上手く利用していた。ある程度は開放的に受け入れ寛容に取材を認め、厚遇することで自勢力の正当性と欧米列強など「侵略者」の非道を訴える演出をしてきた。ジャーナリストを取り込むことに成功すれば、自勢力の宣伝工作に一役かってくれる。

 古くはロシア革命を取材したアメリカ人ジャーナリストのジョン・リード氏は、「世界を揺るがした十日間」と題するルポを発表し歴史に名を残した。
 同じくアメリカ人ジャーナリストのエドガー・スノー氏は、延安で革命を指揮していた毛沢東を取材しこれも歴史に残るルポ「中国の赤い星」を発表。
 私の世代では、ベトナム戦争時に南ベトナム解放戦線を取材した本多勝一氏が「戦場の村」を発表し、当時の反戦運動の原動力となった。今でも左派市民の間では超有名である。

 いずれも、当時の革命勢力は未だ政権を掌握しきれていない段階であり、もちろん国際社会の多くは承認していなかった。国際法上で考えれば今の「イスラム国」と同様のポジションに位置する「武装勢力」の段階だ。
 そしていずれもジャーナリスト本人は共産主義へシンパシーを感じ、アメリカを中心とする資本主義列強の手口に反感を持っていた共通点があり、革命勢力も苦しい状況を少しでも打開するべく広く世間に正当性を訴えたい思惑があって利害の一致があった。
 ジャーナリストたちの働きのおかげもあって、これら革命政権には「イスラム国」ほど悪いイメージは無い。(余談1)

 さて「イスラム国」だが、日本に入ってくるニュースを見る限りではジャーナリストを使いこなさない。取り込んで宣伝工作に利用する努力をあまりやっていないように見える。
 これもネット社会の影響なのか?
 

 私が市民運動に参加し始めた1990年代前半、運動の仲間にパソコンの購入とインターネットの利用を訴えた。ケネディのテレビ活用、クリントンのパソコン通信を例に挙げて、言論戦に勝利するには次世代に主流となるメディアを制する事が不可欠と論じ、パソコンとネット契約の初期投資を済ませば後はタダ同然に情報をやり取りできる、自分たちが自前で情報発信できるメディアを獲得できるのだと説得力のありそうな利点をあげた。
 ところが運動の仲間たちからは「パソコン持ってるモンは少ない」「老人から子供まで広く訴える事が出来ない」「パソコンに疎い老人を切り捨てる」「お前の意見は奇異に感じる」と完全否定された。

 読者諸君は私の先覚性の自慢話に聞こえるかもしれないが、実は負け犬の遠吠えである。ネットを使った運動躍進の実例を示せないまま足を洗った訳だから。しかし目の付け所は我ながら良かったと思っている。良かったというよりも的確な分析だった。

 だからこそ「イスラム国」のやり方には余計に怖さを感じる。若い頃の私が主張していた事を効果的に駆使しているのが、7世紀の世界に戻すなどと時代錯誤とも思えるアナログ発言をしている「イスラム国」である。もはやジャーナリストを取り込んで好意的報道をしてもらう手間はかけない態度に見えてしまうからだ。
 自前のメディアで世界に主張を拡散できるし、世界各国から「同志」が集まってくれる。余計な事をするかもしれない外部のジャーナリストは要らんという訳か。

 そして後藤健二氏ら周辺に降り注ぐバッシングも怖い。後藤氏は志を持ってジャーナリストとしての使命から現地入りした。敢えて死地に飛び込む姿勢は称賛されることはあっても批難されるべきものではない。ところがバッシングの論調を見ていると、後藤氏のような人材は要らんようだ。
 内部に入って取り込まれるのも難儀だが、楽屋裏を覗かない姿勢では物事の見方は閉鎖的になってしまう。逆説的に考えれば、世界に冠たる民主主義の国、ジャーナリズムの国であるアメリカだからこそリードやスノーのようなジャーナリストも輩出した。日本が高度経済成長で元気だったからこそ本多勝一氏を輩出した。

 縮み志向で心に余裕を持たなくなった人々が怖い。

(余談1)「世界を揺るがした十日間」も「中国の赤い星」も「戦場の村」も学生時代の愛読書だった。

 いずれも、政権を完全に掌握するまでは開放的だった革命勢力だが、政権をとってからは次第に閉鎖的になる。
 ロシア革命成立後、ジョン・リード氏はソ連政府の一員になるが指導部のやり方に幻滅を感じていく様がウォーレン・ビューティ主演「レッズ」で描写されている。
 またエドガー・スノー氏も政権樹立後の毛沢東のやり方に反感と幻滅を感じていき、後に「無知だった」事を認めた。
 本多勝一氏は「ハズ社会主義」との決別を表明した。社会主義のはずだった国との決別という意味らしい。

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世界をゆるがした十日間〈上〉 (岩波文庫) ジョン・リード
世界をゆるがした十日間〈下〉 (岩波文庫) ジョン・リード
中国の赤い星〈上〉 (ちくま学芸文庫) エドガー・スノー
中国の赤い星〈下〉 (ちくま学芸文庫) エドガー・スノー
戦場の村 (朝日文庫) 本多勝一

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[ 2015/01/24 06:50 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(0)
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