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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

曾野綾子君には「名誉白人」と「名誉男子」の称号を贈ろう。 近頃の現象[一〇七七] 追記・・「名誉男子」という単語を使うのを止めた。理由は本文「追記」参照。

曽野氏コラム、南ア大使も抗議文 
人種隔離許容


 産経新聞が掲載した作家の曽野綾子氏のコラムにアパルトヘイト(人種隔離)を許容する内容が含まれているとして、南アフリカのモハウ・ペコ駐日大使が同紙に抗議文を送っていたことが14日分かった。同紙によると抗議文は13日付。(毎日新聞)

【雑感】アパルトヘイト撤廃にため苦難の歴史を味わってきた南アにとっては、曾野綾子氏の主張はトンデモ暴論にしか聞こえない。また旧南アでは経済的関係からアジアの日本を「名誉白人」という称号を与えて白人に準ずる待遇をしてきた。日本人にとって名誉どころか屈辱である。

 曾野綾子氏の言動は昔から似非保守で一貫している。原発推進・親米・男尊女卑などなど。あのお歳だから、もはや改心する事は無いだろうし、似非保守の幻想を観ながら天寿を全うしていくのだろう。

 前途ある我々は曾野綾子氏に抗議するだけでなく、彼女がどうして似非保守の幻想を見続けていられるのか、その背景を把握して惑わされないようにする必要がある。
 何故なら、言葉の肌触りだけで判断しては思想的に弱いのだ。私の同級生でネトウヨになってしまった者は、子供の頃は護憲派の主張を鵜呑みにして、大人になってから転向した。転向した理由は、大人になる過程で護憲派の「矛盾」に気が付き「現実」が護憲派の主張とは程遠い事を目の当たりにしたため、護憲派に対して不信感を抱くようになったからだ。
 鵜呑みや請売りの主張には本人の主体性も体験のベースも無いので脆い。私の身近な例としてネトウヨを挙げたが、これは対立する立場のニワカ左翼も同じだ。

 昔から「泥棒も三分の理」と言われている。トンデモ論と思ってもそこには一定の正当な主義主張や現実が含まれているもので、だからこそ第二次大戦前夜のドイツ市民はヒトラーの演説を正論と錯覚し、ナチスを支持してユダヤ人迫害に協力した。

 曾野綾子氏の「三分の理」は、私が住んでいる周辺にある。大阪府は福祉と国際貢献を理由に外国人移住者を受け入れている。その少なくない外国人世帯は低所得者を対象とした府営団地が受け入れているのだが、以前からの住民とのトラブルを耳にする。
 単に言葉の問題ではない。価値観や習慣の摩擦だけの問題ではない。閉鎖的日本人の差別意識だけの問題ではない。以前からの住民が守ってきた日本社会のルール、府営団地のルールを理解しない外国人、これらルールを受け入れ守ることを拒否する外国人に不信感を抱き、やがて敵意に変わっていくのだ。外国人側も日本人に対して不信感と敵意を募らせていく。その結果、住民自治会の運営に支障をきたした場面に私自身が遭遇した事がある。
 実際問題、関係が上手くいっているところは、外国人側が「郷に入ったら郷に従う」事を実践している。これは外国人タレントが支持される理由に通じるものがあるだろう。
 とはいえ、多くは「郷に入ったら郷に従う」姿勢はしんどいし、受け入れる側もルールを無視された事で態度を硬化させるので、曾野綾子氏が主張する「分けて住む方がいい」に説得性が生まれるのだ。(余談1)

 曾野綾子氏の主張の欠陥は、これらを「人種」で括ってしまった事だ。肌の色だけが問題なら、見た目は西洋人とまったく変わり無いユダヤ人はなぜ差別されてきたのか? 西洋人から見れば区別できない日本人と韓国人はなぜ反目してしまうのか?
 曾野綾子氏の論理は乱暴で稚拙なのである。現場体験が致命的に乏し過ぎるから、現場を目の当たりにしている私にはトンデモ幻想にしか見えない。(余談2)しかし同じように保守系市民で現場体験を知らず又聞き知識しかない人間は共鳴してしまうだろう。

 古(いにしえ)の叡智は素晴らしい。「郷に入ったら郷に従え」「泥棒にも三分の理」だ。

(余談1)ヤマザキマリ氏「テルマエ・ロマエ」に、公衆浴場のルールを守らないゲルマン系の元兵士との摩擦を、現代のロシア人観光客が日本の銭湯で行う迷惑行為とをリンクさせているエピソードがある。

(余談2)曾野綾子氏は「社会進出」をする女性を批判し家庭に入る事を日本女性の伝統的かつ正しい見識であるかのように主張したが、実は専業主婦が定着したのは日本の高度経済成長期である。長い日本の歴史から見ればほんの最近だ。
 多くの国がそうであるように、日本もかつては人口の殆どが農民で家族総出で農作業をやってきた。専業主婦なんぞ存在しなかった。

 また日本型封建制では女性は家事だけを担っていた訳ではない。家長の夫に代わって、家計の管理権と地域社会での渉外権を行使するという実務権限があった。
 現代でも、夫が給料を妻に全額渡し、妻はその中から酒代を夫に渡す風習。仕事で家を留守にする夫に代わって、地域の集まりや住民自治会に参加する風習。これらはまさに日本型封建制である。
 会社経営になると、老舗旅館の実務を女将が掌握したり、町工場の会長を夫が担い社長を妻が務めるといった例はよくある。

 だから曾野綾子氏の主張は一見すると保守のようだが、実は似非保守で、日本文化を理解していないのである。

【追記】2019年12月31日
 現在の私は「名誉男子」の称号を使わない。というのも、SNS上で「フェミニスト」や「リベラル」「反安倍」などを自称する方々が乱用するようになったのだ。
 少しでも自論に反論や懸念を述べる女性をみかけると「名誉男性」と「ネトウヨ」のレッテルを貼って誹謗する様が散見されるようになった。言葉もモノの価値と同じだ。大量生産で単価を安くする、供給過多になると暴落するのと同じように、乱用が過ぎると言葉の説得力も低下する。
 安倍政権に少しでも懸念を表明すると「パヨク」になったり、フェミニストに懸念を述べれば「ネトウヨ」になったりと、他人様に対して安易に蔑称を貼り付けて否定することが横行されると、当初は痛烈な意味があった単語もただの悪口に成り下がる。

 もはや「名誉男子」は使えない。ただの悪口にしか世間は認識しなくなったのだ。

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