ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

君は字幕派か?吹替派か?(2) 近頃の現象[一〇九六] 

何故か意見が両極端に分かれる。

【雑感】この字幕派吹替派も実はこないだ記事にした映画館派と自宅TV派の対立に相通じるものがある。

 映画ファンの諸兄達の中には極端を好む人が多すぎる。以下の例はあくまで私の周辺にいた「映画ファン」の考え方である。
 字幕派は俳優の生の演技が声優の声によって殺される事を嫌い吹替を蔑む。さらに字幕は日本の識字率の高さを表しているので誇りに思っている。
 一方、吹替派は原版台詞の3割程度しか反映されない字幕を尊ぶのは真の映画ファンではないと軽蔑し、原版に近い台詞と有能な声優によっては原版以上の名作になると主張。世界の殆どの国は吹替で字幕はやっていない。ろくに英語も解さんくせに字幕を頼って原語を尊ぶのは見栄っ張りと批難している。

 私の考えは両方とも正しいし両方とも正確ではないと思っている。こんな事を言うと「またミカエルの卑怯な逃げの中道主義」と批難する輩がいるが、現実にどちらも長所と短所があるのでどちらか一方に決めろというほうが間違いなのである。

 字幕は俳優の生の声の演技を観ることができる。しかし字幕には表示時間と字数がかなり制限されているので、映画関係の友人に言わせると「原版の3割程度の台詞しか反映されない」らしい。よく宗教や政治などの込み入った社会問題が背景になっている作品になると、チンプンカンや頓珍漢な字幕になる事がある。物語の流れからして違和感のある字幕になったりする事がある。

 吹替の場合は俳優の唇の動きに合わせて声優が日本語台詞を入れるので、字幕よりは余裕がある。前述の友人の話によれば「原版の6割から7割程度が反映される」らしい。確かに劇場で字幕の作品を観て、後に地上波で放映された吹替版を観た時に「あっ、そういう意味か」と得心した事がけっこうある。(余談1)
 しかし、声優の演技がイマイチだと、折角の俳優の演技までダイコンに見えてしまう。特に日本の声優は喧噪が下手糞だ。パニック映画や戦争映画では、原版は臨場感あふれる演技をしているのに吹替になるとスタジオでアフレコ丸出しなんてのが少なくない。
 それから、これは最近顕著になってきた傾向なのだが、以前であれば原版の俳優と顔の骨格が似た(要するに声の感じが似ている)声優を充てていたので、原版のイメージ損なわない吹替を楽しむ事ができたのだが、今は全くイメージが違うのにアイドル俳優を充てたりする場合があるので不快を感じることがある。

 だからホームドラマや日本でもありそうな話は吹替だけでも差し障りない。また、込み入った文化的背景がある作品は字幕と吹替両方みる。臨場感や迫力を楽しみたい場合は字幕を観る。
 こないだの「 映画は迫力のある映画館派?まったり家で見る派? 」の記事と同じく、場合によって選択する。幸いにも80年代頃から二か国語放送が一般的になり、デジタル放送とDVDの誕生で自由に字幕や吹替などの設定を変える事ができるようになった。(ただし、ハリウッド以外の映画は吹替の手配が追いついていない事が多い)

(余談1)しかし吹替はときおり声優の都合なのか原版とは全く違う台詞に差し替えられてしまう事がある。
 例えば「アポロ13」でトム・ハンクス扮する宇宙飛行士が出発前の身支度をしている時にドイツ人技師を見かけて話をする場面がある。
 原版ではドイツ語で2・3会話を交わすのだが、そのたった2・3の会話を声優がドイツ語で話すのが面倒なのか、視聴者が突然ドイツ語になって混乱するのを危惧したのか解らないが、吹替では「ベント先生が弁当を持ってきた」と意味不明のオチャラケ駄洒落台詞にすり替わった。

 「アポロ13」とほぼ同時期に制作された「ブレイブハート」では字幕も吹替も苦慮した場面がある。ラストへ流れる佳境、侵略するイングランドに抵抗し続けたスコットランドの英雄ウォレスがついにイングランドに捕まり処刑される直前で一言「Freedom!」と声を振り絞って叫ぶ。
 字幕では「自由万歳!」、吹替では「我に自由を!」だった。翻訳者は相当に苦慮したと思う。日本人の感性に沿った意訳をすれば「スコットランド万歳!」がシックリくるだろう。しかし原版では正味一言「自由」としか叫んでない。そのまま「自由だ!」にすればたぶん日本人には軽めの意味でしか認識できず、見物の民衆がなぜ息をのむのかつり合いが取れなくなる。
 英語のFreedomは単に自由という意味ではなく、解放の意味も含まれている。字幕は不屈の闘争心を優先し、吹替はウォレスの悲願を優先した苦渋の翻訳台詞だ。

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[ 2015/05/06 21:45 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(0)
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