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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「鏡の国の戦争」 孤独を楽しむ時に〔23〕

鏡の国の戦争」 
冷戦下のスパイ映画の佳作

 

 
【原題】THE LOOKING GLASS WAR
【公開年】1968年  【制作国】亜米利加  【時間】103分  
【監督】フランク・ピアソン
【原作】ジョン・ル・カレ
【音楽】ウォーリー・ストット
【脚本】フランク・ピアソン
【言語】イングランド語
【出演】クリストファー・ジョーンズ(レイザー)  ピア・デゲルマルク(-)  アンソニー・ホプキンス(エイブリー諜報部員)  ラルフ・リチャードソン(ルクレック諜報部長)  ポール・ロジャース(ホールデン諜報部員)  スーザン・ジョージ(-)  シリル・シャップス(-)  マイケル・ロビンス(-)  アンナ・マッセイ(-)
    
【成分】悲しい パニック 知的 絶望的 切ない スパイ 冷戦 1960年代 東ドイツ
       
【特徴】米ソ冷戦下、西側へ亡命したポーランド青年は市民権獲得と引き換えにスパイに仕立てられ東ドイツに単身潜入させられる。全編にわたるスリルと、官僚組織の不気味な非情さを重厚に表現している。
  
【効能】綱渡りのようなスリルを体感できる。
 
【副作用】スパイアクションを見慣れた人には地味過ぎて拍子抜けする。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
アンソニー・ホプキンスが青い。
 
 「鏡の国の戦争」、漫画家いしいひさいち氏の作品にも同じタイトルの短編漫画集が出ている。20年位前に刊行されたと思うが、この映画はそれよりさらに20年ほど前に公開されている。日本では映画よりも漫画のほうが有名だろうと思うが。
 いしいひさいち氏もこの映画を観ていたのだろう。どちらも戦争の虚しさを描いているものだが、漫画は笑い飛ばすナンセンスギャグ(余談1)であるに対し、映画はスタンダードなスパイ映画の悲劇である。
 
 監督は、最近ではケネス・ブラナー氏主演の「謀議」を担当したことで知られるフランク・ピアソン氏。特に派手なアクションや劇的な台詞回しなどは無いが、「謀議」と同じく全編に緊張感が張り詰めている。
 主人公のスパイは、東側の世界に潜入することに成功したものの、ほどなくヒッチハイクして乗せてもらったトラックの運転手に正体を見破られ、やむを得ず殺害しなければならなくなる。胸を刺された運転手の演技が痛々しい。場末のアクション映画のように簡単には死なず、ハンドルの下でか細くうめき続ける。殺人事件を起こした主人公には警戒網が敷かれ、スパイ活動の失敗は明白だった。
 
 行動は当局に捕捉されてしまう。主人公は現地で知り合った若い女性とともにある古いビルに逃げ込み、そこから最後の通信を送る。しかしその通信は当局が傍受していた。
 主人公を射殺することを決意した当局が、ビルを包囲し、各階の電気を順番に消し始め、主人公がモールス信号を送っている階の電灯が消えたとき、その停電に信号を打つ手が止まり、居場所を特定した当局は自動小銃を持った兵士を突入させ、同衾の女性もろとも殺される哀れな2人。
 
 一方、通信を受け取るイギリス情報部では、主人公の決死の送信を「役に立たない」と一蹴し、賞味期限切れの食品のように切り捨て、次のミッションについて笑顔で歓談し始める。主人公をスパイに勧誘し訓練した情報部員役が若きアンソニー・ホプキンス氏なのだが、歳に似合わず貫禄のある風貌だったので、上司たちの冷酷な態度にまるで純情な青年のように怒り出すところが似合わず、それが微笑ましかった。
  
(余談1)例えば、林の中を斥候中の兵士が敵性兵士と鉢合わせになりそうになる。誤射を防ぐため、兵士は合言葉を言う。「紅白歌合戦はどちらが勝ったか?」相手は「そんなの知るか、では○○交響楽団のコンサートマスターは誰だ?」と逆に「高尚ネタ」でクイズをいってくる。兵士は「あんな奴は敵に決まっている」と手榴弾を投げようとする。
 
 ある国の海軍司令部で、敵輸送船一隻撃沈の戦果を聞いて喜ぶ司令官。司令官はさっそく「輸送船の雷撃した潜水艦の艦長は誰かね」と参謀に尋ねる。参謀は「いえ、撃沈したのは空母です」
司令は「ああ、なるほど。艦載機を繰り出して沈めたのだね」
参謀は「いえ、空母が体当たりで輸送船を道連れに沈めました」
司令はショックで食べた物を嘔吐してしまう。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
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謀議 [DVD] フランク・ピアソン
ナイロビの蜂 [DVD] フェルナンド・メイレレス

晴雨堂関連書籍案内
鏡の国の戦争 (ハヤカワ文庫 NV 226) ジョン・ル・カレ
鏡の国の戦争 いしいひさいち
鏡の国の戦争 2 いしいひさいち
 
 



 
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