ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「春婦伝」 社会を冷笑したい時に〔14〕 

春婦伝」 「従軍慰安婦」の物語
 
春婦伝
春婦伝 [VHS]

【公開年】1965年  【制作国】日本国  【時間】98分  【監督】鈴木清順
【原作】田村泰次郎
【音楽】山本直純
【脚本】高岩肇
【言語】日本語
【出演】川地民夫(三上真吉上等兵)  野川由美子(春美)  石川富子(百合子)  玉川伊佐男(成田中尉)  今井和子(さち子)  若葉めぐみ(さかえ)  松尾嘉代(みどり)  森みどり(高子)  初井言栄(つゆ子)  江角英明(町田日出吉)  小沢昭一(秋山憲兵軍曹)  藤岡重慶(木村軍曹)  加地健太郎(宇野一等兵)  久松洪介(江見大佐)  長弘(柴田中佐)  高品格(牧田補助憲兵)  河野弘(倉持曹長)  平田大三郎(堤見習士官)  木下雅弘(青山上等兵)  三井秀顕(酒井一等兵)  野呂圭介(村木上等兵)  立川博(佐々木一等兵)  澄川透(当番一)  千代田弘(当番二)  島村謙次(大尉)  高橋明(衛兵司令)  荒井岩衛(榊原曹長)  柴田新三(安田上等兵)  高緒弘志(兵隊A)  戸波志朗(兵隊B)
    
【成分】泣ける 悲しい スペクタクル パニック 勇敢 絶望的 切ない セクシー 風俗モノ 日中戦争 1930年代 白黒映画
       
【特徴】一途に男を愛する従軍慰安婦と融通の利かない生真面目従卒の悲劇。  女性の情念を表現しつつ反戦と軍隊批判を込めた作品であるのは間違いないが、制作当時はまだ従軍慰安婦が政治問題化されておらず、監督ら制作陣が慰安婦を持ち出したのは単に社会の底辺で生きる女性の情念と生命力を表したかったのだろう。
 野川由美子氏は当時20歳そこそこだったが大胆にフルヌードを披露。
  
【効能】野川由美子氏の迫力に圧倒される。軍隊組織の虐め体質を実感、反戦意識が向上。
 
【副作用】生真面目は愚かであるとの認識が刷り込まれる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
野川由美子、オールヌード大熱演
 
 「従軍慰安婦」の問題が大きく取り上げられるようになったのは80年代以降だが、これはその20年近く前の映画である。慰安婦問題云々がテーマというよりも、社会の暗部で生きる男女の恋愛と破滅を描いたR指定的映画だ。(余談1)監督は鈴木清順氏、主役の春美役に若き野川由美子氏、もう一人の主役生真面目な三上上等兵役に川地民夫氏が扮している。
 
 野川由美子氏は時代劇やNHKドラマで元気の良いオバサン役が定着しているが、ここでは情熱的で破滅型女性を演じている。慰安婦役なので大胆な全裸シーンにも挑戦しているし、戦争映画なので砲弾が炸裂する中を駆ける場面も熱演していた。
 川地民夫氏は時代劇で狡猾な悪代官役が板についてしまっているが、この頃は純情多感な少年役が多く、生真面目で頑固な若い兵卒を演じている。生真面目な性格ゆえに人生が狂うと悲劇へと突進してしまう。
  
 舞台は中国、春美は中尉のお気に入り慰安婦になるが、中尉の従卒三上上等兵を好きになり関係をもつ。そのことが上官に知れ、春美は折檻され三上は営倉に入れられる。さらに八路軍(余談2)の急襲にあい、三上と春美は捕虜になる。八路軍兵士が倒れた三上に銃を向け、春美が必死に三上に覆い被さって守ろうとする様が迫真である。
 捕虜になった三上の狼狽と叫び、人間的な扱いをする八路軍に留まろうと説得する春美、生真面目に虜囚の辱めを苦痛に感じる三上は春美とともに脱走し、原隊に戻るが待っていたのは軍法会議であった。
 襟の階級章を剥ぎ取られ絶望した三上は自決しようと春美に用意させた手榴弾のピンを抜き「天皇陛下万歳!」と叫ぶ、春美は「あんただけ死なせない!」と抱きつき2人は爆死する。
 
 春美の死を悼む慰安婦仲間たち、慰安婦のまとめ役を初井言栄氏(余談3)が演じていた。市毛良枝氏をいびる姑役で有名だが、この作品ではチマチョゴリを着ていた。彼女の悲しみと恨が入り混じった表情とチマチョゴリ姿が恐ろしく似合っていた。
 
(余談1)「従軍慰安婦」問題は、80年代に入って元旧日本軍軍人だった吉田清治氏が強制連行をやったとの証言をしてから、国内外で政治的紛糾状態になり一応の政治的結論は出ているものの、未だ解決していない。最近では、アメリカ下院議会で民主党のマイク・ホンダ議員がこの問題を取り上げ日米の外交問題に発展している。
 私は高校時代まで、慰安婦の手配は女衒がするものと思っていたので、下請けの女衒を通さず直接軍人が手を汚して女性を強制連行したという吉田証言は衝撃だった。
 慰安婦の扱いについては、各部隊の指揮官や任地によって待遇が異なるらしく、兵士たちの証言はまちまちだ。ひと財産つくった慰安婦がいたという者もいれば、大勢の兵士の相手を無償で行い下腹部が腫上がった痛々しい女性もいた。
 当然のことながら兵士たちの証言と慰安婦たちの証言は食い違う。兵士側は恋愛感情があったという者がいるが、慰安婦側は求めに応じないと虐待されるためやむを得ずとの主張。
 
(余談2)異論はあると思うが、八路軍の描写はほぼ正確だった。当時の八路は毛沢東の三大規律八項注意が行き届いた軍隊だったので、略奪・暴行・捕虜虐待はしなかった。日本軍から投降者が参加することもあった。
 
(余談3)「ラピュタ」の空賊ドーラの声もやっていた。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
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☆☆☆☆ 名作

 
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