ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ウォーム・ボディーズ」 カップルで愉快になろう〔12〕 

ウォーム・ボディーズ」 
ゾンビが生者になる新機軸。




【原題】WARM BODIES  
【公開年】2013年  【制作国】亜米利加  【時間】97分  
【監督】ジョナサン・レヴィン
【制作】
【原作】アイザック・マリオン
【音楽】マルコ・ベルトラミ バック・サンダース
【脚本】ジョナサン・レヴィン
【言語】イングランド語
【出演】ニコラス・ホルト(R)  テリーサ・パーマ(ジュリー・グリジオ)  ロブ・コードリー(М)  ディヴ・フランコ(ペリー・ケルヴィン)  アナリー・ティプトン(ノラ)  コリー・ハードリクト(ケヴィン)  ジョン・マルコヴィッチ(グリジオ大佐)   

【成分】かわいい コミカル ファンタジー ロマンチック ゾンビ

【特徴】生きている人間がゾンビに噛まれて徐々にゾンビへと変化するパターンは無数にあるが、本作はなんと逆、元若者だったゾンビが生きている人間の少女に恋をしてから、次第に動く屍から命ある生者へと変化していく。
 物語の展開自体は手垢のついたパターンだが、ゾンビが血の通った生きた人間に戻るのは新機軸といっていいだろう。絶望的な展開が殆どのゾンビ映画の中では明るい未来を感じられる内容。

 主人公のゾンビRを演じるのは子役から注目されてきたニコラス・ホルト。ヒロインのテリーサ・パーマはホルトより歳上なのだが、それを感じさせない少女的美しさ。

【効能】明るい未来を感じる事ができ、すがすがしい気分になる。何らかの障害で自己表現ができない人への偏見が改まる。

【副作用】御都合主義の結末に不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
心優しいゾンビたち。

 タイトルを意訳すれば「心優しいゾンビたち」になるだろうか。イングランド語をそのままカタカナ表記にして邦題にするのはどうも不快だ。

 さて、ゾンビ映画は今やホラーというジャンルでは括れない独立したカテゴリーだ。しかも低予算映画の定番素材。なにしろ特別な演技力はいらないのでエキストラを集めやすいし、衣装はエキストラ各自の自宅にある古着をボロにすればOKだ。メイクもゾンビになりたてなら白粉程度で良い。資金不足に悩む多くの映画人にとって有難い分野となった。
 その結果、世界中で無数のゾンビ映画が制作される。それらゾンビ映画の中に、ホラーもあれば文藝作もあれば恋愛モノやコメディもある。本作もホラー映画ではなくラブコメに該当するだろう。

 この作品、一応はB級映画なのだろうが、けっこうメジャーだ。子役時代から注目されている若手スターのニコラス・ホルト氏が主演を担当しヒロインに恋する優しいゾンビに扮する。ヒロインの父親役でゾンビ掃討に執念を燃やす指揮官には名優ジョン・マルコビッチ氏。B級のわりに人件費をかけている。

 ゾンビ映画は各々微妙に設定が異なっている。本作の場合ではゾンビになっても暫くは人間の感情や思考力は生前を引き継いで残っている。
 ただ記憶力と運動能力が劣化しており感情表現や言語表現ができないので、見た目は感情のない動く死体だ。次第に感情や思考力を減退させ、やがて人間らしい感情を失い自分の顔などの皮膚や肉を剥いで食べ骸骨と化し、脈うつモノは何でも食べる餓鬼となる。
 
 主人公R(余談1)はまだ記憶喪失のような状態で名前は頭文字のRしか覚えていない。同様の状態のゾンビ大勢が空港を徘徊している。なぜか空港のライフラインは生きていて電気が通っている。
 Rは空腹を感じると友人Mらと街に繰り出し生きている人間を襲う。生前は何かのオタクだったのか、滑走路に放置された旅客機をお気に入りの自宅にして昔のレコードなどを収集している。

 そんなRがいつものように生きている人間たちを襲った時、人間たちの中にいる若い女性ジュリーに一目惚れをするところから物語が展開していく。Rはジュリーを食わず自分の自宅にしている旅客機に匿う。
 ジュリーは自分の恋人を喰ったRに次第に打ち解け愛するようになるのだが、この過程は賛否あるだろう。恋人を殺したゾンビに憎しみを持たないのは不自然とみる者もいれば、恐怖に包囲されている中で唯一の「味方」に親近感を持つようになるのはむしろあり得るとみる者、私は後者だ。

 このRとジュリーの心の交流をきっかけに、Rをはじめまだ人間の意識が残っているゾンビたちは徐々に生きている人間へと変化していく過程が思ったより丁寧だった。
 完全に命を取り戻したRを演じるホルト氏の歓喜の驚嘆や、それを目撃するマルコビッチの口を半開きにして仰天する顔が感動的演技である。

 吸血鬼を主人公にした「トワイライト」や恋愛劇の定番「ロミオとジュリエット」を合版してゾンビ映画に置き換えたハッピーエンドのラブコメディだ。ホラー嫌いには安心して観られるのでカップルで鑑賞するのに向いている。(余談2)

(余談1)たぶん、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を意識していると思う。Rはロミオの頭文字と同じ、ヒロインのジュリーはジュリエットの短縮形とも読める。またRの親友にМというゾンビがいるが、ロミオにもマキューシオという友人がいる。

(余談2)Rは首筋に青い腐敗網が浮き出ている。血液や血管などが腐敗する事によっておきる化学変化なのだが、そうなる頃には眼が白濁して瞳孔の輪郭がぼやけてしまうはず、だからゾンビ映画では開ききった瞳孔を表すために黒いアイコンタクトや白濁した瞳を表すために白いアイコンタクトを使用する。
 だが、Rの瞳は綺麗だ。おそらく意図的な考証無視かもしれない。この適度なリアリティ無視でホラー嫌いには安心して鑑賞できる作品に仕上がっている。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作





 
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