ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「酒鬼薔薇」手記には強い不快感を抱くが、販売中止を求める声には賛成しない。 近頃の現象[一一二六] 

酒鬼薔薇」手記、一部書店で販売せず 
「啓文堂書店」遺族感情に配慮で賛同の声


 京王線沿線を中心に東京都、神奈川県で38店舗を展開する啓文堂書店(東京都多摩市)が、神戸市で1997年に起きた連続児童殺傷事件の加害男性による手記「絶歌」(太田出版、1620円)を販売していないことが15日までに分かった。遺族感情に配慮して決めたという。同書店には、客から賛同の声が寄せられているという。(スポーツ報知)

【雑感】前の記事でも述べたが、私は「言論と表現の自由」真理教の信徒なので、誰でも公に発言する権利があると考えているし、現行法もそれを規定している。
 元少年Aが「著述家」になろうが「小説家」や「漫画家」になろうがそれは自由だ。道義的に問題がある可能性があるからといって、元少年Aの言論活動を妨害する事はあってはならない。

 同時に「絶歌」回収を求める土師守氏を批判するつもりはない。氏の姿勢は至極真っ当であり、強靭な忍耐の持ち主だと思っている。
 私は前の記事で「もし遺族関係者であれば、彼の表現力と発信力に警戒心を抱くとともに、新たな憎しみを抱くかもしれない」と述べた。文章力はなかなかのモノだし、さらに前半は14歳当時の酒鬼薔薇を彷彿させる内容を書いたかと思えば、後半は更生後の道のりを大人になった現在の言葉で詳細に書き記す演出技術は玄人肌の技術、それだけに恐ろしく思うのだ。

 犯行当時からも、彼が書いた声明文やイラストを見て「表現力」を評価する文化人がいた。その彼が大人になり能力を充実させて手記を執筆し、サブカルチャーに理解がある太田出版社から刊行するという戦術。
 「絶歌」の内容をトータルで見れば公益に適うと思う。「絶歌」の存在価値は認める。14歳当時の心情風景と、社会復帰後の青年時代での更生の日々、よくできた著作なのだ。
 
 問題なのは「自分の過去と対峙し、切り結び、それを書くことが、僕に残された唯一の自己救済であり、たったひとつの『生きる道』でした」という一文だ。
 私が遺族関係者なら「自己救済をするなとは言わん、なぜ被害者と被害者遺族への贖罪を自己救済にできないのか? なぜ書く事が唯一の自己救済になるのか? 被害者側の俺が書く事を救済にするのなら話は解るがなんでお前が?」と思う。彼のこの一文のおかげで、肝心なところで更生し切れていないのではないか? もし書く事で自己救済できなかったら、また人を殺して「自己救済」する魂胆か? と警戒心を抱く。

 土師守氏は毎年届く元少年Aの反省文に目を通していたようである。加害者の手紙を好意的に解釈して更生の過程を見守ろうと努めた姿勢は強靭な忍耐で立派であるし、今回の刊行で「自分の犯罪を誇示している」「踏みにじられた」と思うのは当然だし、かなり抑えた言動だと思う。私は先ほどストレートに「書く事で自己救済できなかったら、また人を殺して自己救済か」と物騒で恐ろしい事を述べたが、土師氏も今回の事で彼にかなりの警戒心を抱いたと思う。

 だが、私はそれでも刊行中止に賛成できない。多くのコメンテーターや芸能人たちは今回の事で彼の真似をして犯罪を犯そうとするのではないかとメディアで意見するが、明らかに内容を確認しないまま安易に反対意見を吐きまくっている。新聞の見出しだけを見て短兵急に見当違い批判をする大馬鹿者と同じだ。
 私は逆に犯罪の抑止になると思っている。つまり同じ病を抱える者としての忠告、という意味合いが強いのだ。同じ病理を抱えている者から忠告されるのと、病を抱えた事の無い人間から忠告されるのと、人はどちらの忠告を聞くか? 
 しかも「酒鬼薔薇」は同様犯罪を犯そうとする者の間では伝説的ヒーローになっているそうではないか。元少年Aが犯罪者となり苦難の更生への道を具体的に描く事が、犯罪に手を染めようとしている酒鬼薔薇の「後輩」たちにとってどれほど説得力ある忠告になるか。

 残念ながら、遺族がいくら命の大切さを訴えても酒鬼薔薇の「後輩」たちの心を動かす事はできない。「後輩」たちを思いとどまらせることができるのは酒鬼薔薇なのだ。
 そういう意味で「絶歌」は価値があり公益に適う。だから刊行中止論には反対する。この手の出版について印税の行方を規制する法律をつくる方が建設的だ。


 
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[ 2015/06/16 18:04 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(0)
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