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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「灰とダイヤモンド」 自分に喝を入れたい時に〔14〕 

灰とダイヤモンド」 
終戦時のポーランド

 

 
【原題】POPIOL I DIAMENT
【公開年】1957年  【制作国】波蘭  【時間】102分  
【監督】アンジェイ・ワイダ
【原作】イエジー・アンジェウスキー アンジェイ・ワイダ
【音楽】フィリッパ・ビエンクスキー
【脚本】イエジー・アンジェウスキー アンジェイ・ワイダ
【言語】ポーランド語
【出演】ズビグニエフ・チブルスキー(マチェク・ヘウミツキ)  エヴァ・クジジェフスカ(クリスティーナ)  バクラフ・ザストルジンスキー(ステファン・シチューカ)
    
【成分】泣ける 楽しい 悲しい パニック 恐怖 勇敢 絶望的 切ない かっこいい コミカル テロリスト ポーランド 1945年 白黒映画
        
【特徴】第二次大戦終結間際、ドイツ軍の占領から解放されたばかりのポーランドにソ連派の共産党政権が誕生。共産党幹部を暗殺すべく反ソ派の将校に従ってテロを行う主人公の束の間の恋愛と惨めな最期。
 若きアンジェイ・ワイダ監督と東欧のジェームズ・ディーンと讃えられたズビグニエフ・チブルスキー氏のコンビが放つポーランド映画の名作である。
 個人的にはチブルスキー氏は若い頃の加藤茶氏に感じが良く似ている。作中のキャラも飄々として楽天的なイメージで加藤茶氏を連想してしまうだけに、ラストシーンは悲しくなる。
 
 原作では暗殺される共産党幹部が主人公だが、映画では暗殺者マチュクが主人公であるかのように描かれており、当時の共産党政権はクレームをつけたが、ラストシーンでマチュクが惨めな最期を迎えることで納得した。
 当局を騙しながら自分の主張を入れるワイダ監督の微妙な立場を考えながら観るとより作品世界に引き込まれるだろう。
  
【効能】悲劇的最期が似合わないマチュクに涙する。当時のポーランドを取り巻く微妙な立場を感じる。体制権力に踏み躙られる命の存在を学べる。
 
【副作用】暗く陰鬱な気分になる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ワイダとチブルスキーの結晶

 主人公マチュク役のズビグニエフ・チブルスキー氏30歳。(余談1)そして監督を務めたアンジェイ・ワイダ氏もまだ31歳。この作品は2人の映画青年の結晶である。ドイツとソ連に翻弄されワルシャワ蜂起で死線を彷徨ったポーランドの若者と世代を同じくする2人である。

 「地下水道」の翌年に発表されたこの映画、物語の舞台も「ワルシャワ蜂起」の翌年である。ドイツ軍の猛攻に晒され、暗くジメジメした地下水道に逃げ込んで彷徨いながら殺されていったワルシャワ市民の生き残りが「灰とダイヤモンド」の主人公である。
 ドイツ軍が撤退したあと、ソ連軍の後援でポーランド共産党が政権を握る。ワルシャワ蜂起の生き残りは、ソ連の息がかかった共産党の要人を暗殺していく。

 初めて観たとき、ワルシャワ蜂起の悲劇は知らなかったが、多少の違和感を抱いた。主人公マチュクが狙う共産党の要人は、当然のことながら社会主義政権下のポーランドで制作した映画なので、正義感が強く混迷の祖国に苦悩する善人に描かれていて、マチュクの上官は些か冷たく狡猾な人物に描かれていた。にも関わらず、マチュクに感情移入してしまうのだ。
 当時のポーランド青年なら尚更(余談2)であり、ポーランド当局やソ連に至れば逆に感情を逆撫でする内容だったのではないかと思う。

 映像は白黒映画でありながら、生々しく視覚的に訴えてくる。初夏の東欧の陽射し、教会前で情け容赦なく機関銃で共産党系の人間を殺すマチュク、恋人と一緒に忍び込んだ廃墟の教会、恋人と将来について語り合う上には逆さ釣りのキリスト像、そして自分が殺した遺体が座っている下に安置されている事に気付き恐怖に顔を引きつらせる2人、ドイツ降伏で沸くポーランド市民と要人暗殺に成功するマチュク、官憲に見つかり白いシーツを干した洗濯場に隠れながら逃げるマチュク、銃創から流れる鮮血で「黒く」染まる白い布、夏の陽射しが降り注ぐゴミ捨て場で悶えながら息絶えるマチュク。

 せっかくワルシャワ蜂起地下水道から生き延び、所帯を持ち子供を作るという平凡な幸せへ少し心を動かされながら、結局は指令通り要人暗殺を決行し、最後はポーランド兵によって銃で撃たれてゴミの中で死ぬ主人公は、時代に揉みくちゃにされ灰となった多くのポーランド青年の象徴である。それを「同世代」の青年監督が撮ったのだ。(余談3)

(余談1)後で知ったことだが、チブルスキー氏は「東欧のジェームズ・ディーン」と呼ばれていたそうだ。マチュクはサングラスがトレードマークのニヒルでとぼけた感じの青年であり、初めて観たとき若い頃の加藤茶氏がサングラスをかけた顔に似ていると思った。
 この作品の10年後に列車に轢かれて死亡、享年40歳。ワイダ監督は悲しんだ。

(余談2)だから「ジェームズ・ディーン」なのか。しかし戦争の無い「エデンの東」と違い、マチュクの反抗は死と隣合せであり、ソ連とポーランドが相手だった。
 煙草の吸い方やウォッカの呑み方がスタイリッシュだった。

(余談3)以後もワイダ監督は当局の厳しい「指導」の元でも描きたいことを描き続けた。80年代に入って、ポーランド政府は戒厳令をしき、有名な連帯労組ワレサ委員長が監禁状態になる。そのとき、ワイダ監督もポーランド映画界から追放される。この事件に触発されてアイルランドのロックバンドU2が「ニューイヤーズディ」を発表、ヒットする。
 ポーランド民主化後、ワレサ氏は大統領になり、ワイダ監督も地位回復した。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔


【受賞】ヴェネチア国際映画祭(国際映画評論家連盟賞)(1959年)


 
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